呉市立美術館へ「呉の美術 山口牧子 地球の色を奏でる」展を観に行ってきた。事前情報は美術館サイトの概要とチラシのみで、これまで知らなかった作家だった。見た感じ抽象的でぼやけた感じの絵なのであまり惹かれることはなかったのだが、地元出身者の作品には興味があるので行ってみることにした。当初はあまり期待していなかったのだが、実際に観ると印象は変わった。

展示室に入ると青の世界に包まれている。
最初は鳥をモチーフにされている作品群。「鳥かな」と感じられる程度の形で、絵の具のにじみを活かした作風のよう。抽象画のジャンルだなあ~ちょっと理解するのが難しいかな~と何となく観ていると、何だか浮遊感というか、絵に優しく飲み込まれていくような感覚に囚われる。掛け軸のような縦長の作品が並列して展示してあるのもあり、リズム感がある。
続いては大地をモチーフとし、麻の皺を活かしている作品群。青のトーンは同じだが、鳥とは違うような、いや同じなような…皺が大地の表情のようにも感じる。作品の大きさも変化をつけてあり、こちらもリズム感を感じる。
展示の仕切りは最小限で、空間は広々としている。来館者も少なく、端から対面の作品を遠望できる。こうして距離を取ると、近くでは見えなかった構図や色のつながりが見えてくる。よく分からないなと思ったら、一度かなり引いて観るのもお勧めである。作品のトーンが同じなので、青に包まれている雰囲気がその方がよく分かる。
最後は光をモチーフとした作品群で、今までの青から暖かい色合いになる。
子供時代の作品も展示してあり、プロになる方は子供時代から光るものがあるなあと感じる。

どれか一つの作品が中心になっている展示ではなく、全体として一つの作品になっているインスタレーションのように感じる。言葉にするのは難しいが、この空間に浸り続けたくなるような魅力がある。展示室内でぼけ~っ過ごしていたいなと感じる作品である。地球が奏でる色は美しいな。
訪れた時間帯もあると思うが、お客さんが少ないのが勿体ない。
芸術鑑賞が趣味の私でも知らなかった方なので、一般的な知名度がなく、足を運びにくいのかもしれない。印刷物や画像からくる印象と、実際に観た印象は大きく異なる。会期末が近いが、同時開催のコレクション展の内容も良いので、新しい体験をしに行ってみて欲しい。

コレクション展「いきもの色いろ」も簡単に紹介する。
動物を主題とした作品だけでなく、風景の一部として描かれたものなど、多様な表現が並ぶ。
気になる作品は多いのだが、水谷愛子の作品が一番のお気に入りである。老人が主題であるが、傍らに犬や猫が居ることでその人となりが分かる。やはり水谷愛子のデッサン力は秀逸で、画面に主題の存在が凝縮して強く引き付けられる。別室にあったサイの絵も印象的で、神獣かと思わされる幻想的で高貴な雰囲気が漂う。
牛の絵で知られる久保田辰男の作品も良い。牛の絵ではこの方の作品が一番好きである。
今井政之の十二支の置物はかわいらしい。山本常一のフクロウの彫刻も良い。
私は動物好きではないのだが、芸術作品のモチーフとしての動物は好きである。動物好きでなくても十分に楽しめる。他にも良い作品が多いので、山口牧子展と併せて是非ご覧下さい。