『鹿』と目が合ったのは、






よく見るとはく製だった。






とてもよくできていて、暗闇で見ると本物と間違えて驚く感じである。






あらためてこの先は12年も前の話なので時効だと信じて書こう・・・






このはく製が、この時非常に気になった。





お店は事故のあとで何もかもがめちゃめちゃになっていて、その中に転がっている鹿くん(たぶん雄なので)





その鹿くんが寂しそうにこっちを見ている。





助けてと言わんばかりにこちらを見ている。






「ねぇねぇ・・・あの鹿のはく製寂しそうやねぇ。」






「助けてあげたほうがよくない?」






「たしかに・・・ここにあるよりうちらのお店で飾ってあげたほうが喜びそうやねぇ・・・」
(※身勝手な解釈)





「ん~~~~~~持ってく?」






「持ってこ持ってこ♪」






そうと決まれば行動が早い。





すかさずその鹿くんを拾い上げ、JUNが抱きかかえた。





勢いよく抱きかかえたのは良いが、思ったより大きい。





そして何より、





怪しい。





上半身裸の3人組が夜中に鹿のはく製を抱えている。






怪しい。





どう見ても





怪しい。





そこで持っていたタオルを巻いて見えないようにした。





しかし、大きすぎて角が隠れない。





「JUN、が出とうばい!!」





「わかっとうけど大きすぎて全部隠れんちゃ!」





今でも忘れないあの時のドキドキ感と後姿。





なんせ上半身裸のJUNが夜中にタオルを巻いた鹿のはく製を抱え、挙動不審で早歩きしている。





しかもを出したまま(笑)





青と後からついていきながら笑いをこらえるのに必死だったのを覚えている。





途中、道路越しにある2階のお店の店員らしき人物がまじまじとこちらを見ていたが、おかまいなしにひたすら歩いた。




距離にしてわずか300メートルくらいだったと思うが、






とても長く感じた。






そして宿に入る前に車に押し込んでセーフ。





次の日、後部座席に鹿くんとワタクシが並んで座り、





鹿くんと一緒に写真を撮った。





まるで最初から自分たちのモノであるようにピースとかして写っている。






それからお店に帰り、入り口の外に目立つように設置した。






「やっぱかっこいいねぇ♪」





「これでお客さんいっぱい来たりして♪
(来ない来ない・・・ )





しかし、設置して間もなく店内に飾ることになった。






なぜなら、お店の入り口が階段を登りきってすぐにあり、





その入り口までみんな足元を見ながら登ってくるため、





扉の手前に飾ってある鹿くんで頭を打つ人が続出し、



撤去
された・・・





つづく





『今日のひと言』

自分本位は

ほどほどに