「嘘だ…嘘だ…う、そ…だ…」
譫言のようにそう繰り返した浅間の身体は、意識という支えをなくして倒れる「う…そ…」


「浅間さん…大丈夫ですかね…」
現場で倒れた浅間を介抱していた部下が、水を張った桶を抱えたまま耕介に尋ねる。耕介はただ「あぁ…」と返す事しか出来なかった。
診た医師の話では『急激な精神的ストレス』らしい。
精神的ストレス…あの遺体を見た事が原因だろうな…
耕介は1つ息を吐き、浅間の眠る仮眠室へ向かった。
キィと哀しげな声を上げて扉は開く。暗い室内に入口から一筋の光。浅間の瞼は優しく、時折苦しそうに閉じられている。
耕介は浅間を起こさないように近くの椅子に腰掛けた「浅間…」
「どうしたんだ…被害者と何があったんだ…」
返答を望まない問いかけだったが、浅間はゆっくりと瞼を開いた。
「気がついたか?」
「や、八坂さん…俺…」
「現場で倒れたんだよ」
ほっと優しく微笑んだのも束の間、耕介は表情を真剣なものへと切り替える。
「浅間…話せるか?」
耕介の少ない問いに、視線を天井へ向けた浅間はそっと目を閉じ、辛い過去を思い出すように眉を曇らせた。