閑静な住宅街の一角に塗られた赤。それを取り囲むように数人の影。響くシャッター音と指示の声。野次馬の喧騒。

「えげつない事しやがる…」
地面に掛けられたブルーシートを見下ろして、一人の男性が眉をひそめる。「こんな場所で」
視線を上へ移動させれば、雲に遮られた太陽を背に厳かに建つ十字架。
白い手袋をはめながら、青年が同じように景色を見上げる。
「明日、ですよね…」
心で頷きながら、男性はその場を離れた。「明日…」

複雑な想いを抱きながら携帯電話を開く。数日前に家族で撮った写真を映し出す液晶は、数秒で暗く変わる。チッと舌打ちをし、乱暴に携帯を閉じてポケットに突っ込んだ。