犬の僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべん へいさふぜんしょう) | アイリス動物病院__________犬と猫の病気 & 看護師日記

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大阪府羽曳野市にある『アイリス動物病院』です。
「犬や猫の病気について」と「看護師日記」を掲載していきます。
大切な家族であるわんちゃん、猫ちゃんが健康で長生きしていくためのお役に立てればと考えています。
是非ご覧下さい。

僧帽弁閉鎖不全症とは、中高齢の小型のワンちゃんに多くみられる心臓の病気です。
例)チワワ、シーズー、ヨーキー、トイプー、マルチーズ、キャバリアなど



僧帽弁といってもなかなかピンとこないと思いますので、
まず心臓についてご説明します。

ワンちゃんの心臓は、人と同じように4つの部屋で構成されています。
 ー 左心房、左心室、右心房、右心室

そして心臓の中の血液が一方通行で流れるために、各部屋の間に弁がついています。
 ー 僧帽弁、三尖弁、大動脈弁、肺動脈弁

このうち、左心房と左心室の間にあるのが僧帽弁です。


★正常な血液の流れ 


★僧帽弁の位置
  


左心室が収縮することで、大動脈から全身に血液を送るのですが、
僧帽弁は、左心房に血液が逆流するのを防いでいます。

ところが、僧帽弁閉鎖不全症になると、左心室が収縮する時に血液の一部が
左心房に逆流してしまいます。

★左心室から左心房への逆流


このように僧帽弁に異常がでる、はっきりとした原因は不明ですが、
加齢に伴い「弁」や、弁を支えている「腱索(けんさく)」などが肥厚し、
歪んだり伸びたりすることで、弁が正常に閉じなくなっていきます。



~症状~

血液の逆流が少なければ無症状です。そのためお家で気付かれる事はまずありません。

他の理由で来院された時に、たまたま聴診で心臓の雑音(逆流音)みつかる事があります。

進行すれば、元気が無い、疲れやすい、よく寝ているなどの症状がみられる事がありますが、

「歳をとったからこんなもんかな。」と思われがちです。


また心臓が拡大する事で、近くにある気管や気管支を圧迫することで、をすることがあります。


さらに進行すれば、

肺から左心房に戻る血液がうっ滞して、肺に水が溜まり始めます(肺水腫)


胸を圧迫するような伏せの姿勢が出来ず、ずっとおすわりの姿勢で苦しそうに呼吸をするようになります。

また鼻水が出てくる事があります。

※ 肺水腫は命を落とすこともある、とても危険な状態です。すぐに病院へ走って下さい。



~診断方法~

聴診で心臓の雑音を確認します。

また症状の有無、血液検査、レントゲン検査、心エコー検査などで病気の種類や進行を確認します。

レントゲン検査


エコー検査


エコー検査




~治療方法~

人と同じように、心臓の手術により弁の修復や人工弁を用いる方法が理想的ですが、

今のところ限られた施設でしか実施されていません。また高額な費用がかかります。


そのため、お薬を用いて心臓の負担を減らして病気の進行抑制したり、

症状の緩和を目的とした内科的治療
が一般的に行われています。

(お薬の例)血管拡張薬、強心薬、利尿剤、抗不整脈薬など




一度進行し、変形した心臓は元に戻りません。

無症状である初期に病気を発見し、出来る限り進行を抑制する事が大切です。

また、投薬をしているからといって大丈夫というわけではありません。

定期的に検査を行い、心臓の変化を観察し病期にあった投薬が必要です。





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