以前、椎間板ヘルニアについてのコラムでも書きましたが、
ヘルニアとは、身体の中の臓器などが、本来の位置から脱出した(とびだしている)状態のことをいます。
そして、鼠径(そけい)とは、太ももの付け根のことをいいます。
正常であれば鼠径部は、
雄では「血管、神経、精索(精巣に繋がる管)」
雌では「血管、神経、子宮を支える靭帯」などが通っています
。
鼠径ヘルニアとは、本来お腹の中にある脂肪、大網、腸などの一部が鼠径部から皮膚の下に出てくる病気です。悪化すると、膀胱や子宮などが出てくる事もあります。
通常初期であれば、指先程の小さな膨らみがみられ、指で押すと引っ込みます。進行すると、膨らみが大きくなったり、指で押しても引っ込まなくなります。
~鼠径ヘルニアの原因~
先天性
・雌より雄で多い(特に潜在精巣の場合で多い)
・遺伝は証明されていませんが、関与していると思われます
後天性
・先天的な筋肉の虚弱、鼠径輪の形成不全などの関与
・中年の雌犬に多い
・妊娠、肥満、しぶり、活発な性格など
・外傷
・その他
~鼠径ヘルニアの症状~
ヘルニアにどのような臓器や組織が出ているかによって異なります。
また嵌頓性(かんとんせい)であるかどうかによっても異なります
※ 嵌頓性とは・・・とびだした臓器や組織が元に戻らなくなった状態
脂肪や大網が出ている場合には無症状の事が多いですが、嵌頓性になれば痛みを伴う場合もあります。
腸が突出すれば、元気消失、食欲不振、嘔吐、下腹部痛などがみられます。
膀胱が突出すれば、排尿困難な状態になる事があり、元気消失、食欲低下、嘔吐などの症状がみられます。
~鼠径ヘルニアの治療~
手術で、ヘルニア内容をお腹の中に戻し、再発しないように穴をふさぎます。
手術時期は、ヘルニア内容が何か、嵌頓性かどうかによって異なります。
しかし腸や膀胱などの臓器が出ている場合や嵌頓性である場合、または何らかの症状が出ている場合には早期に手術すべきであると思われます。
鼠径ヘルニアのわんちゃんは当院でもよくみかけます。
小さな嵌頓性でない鼠径ヘルニアであれば、早期に手術が必要であるわけではありませんが、指で押しても引っ込まない、急に大きくなって来たなどの変化が見られた場合にはすぐに手術が必要になる事もあります。
今は何の症状も無いからと安心し過ぎず、普段からよく観察しておいて下さい。
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中村