その子は後ろ足が痛くて地面に着ける事が出来なくなっていました。
わんちゃんが後ろ足を痛がる病気には様々なものがあります。
その中でも、特に1歳未満の小型犬の子犬によく見られる原因には次のようなものがあります。
①膝蓋骨脱臼
②大腿骨頭壊死症
③外傷
④成長異常
⑤その他
今回はその中で「大腿骨頭壊死症」についてのお話です。

言葉が難しいので、まずはそれぞれの意味からご説明します。
まず、大腿骨とは後ろ足の太ももの骨のことで、大腿骨頭とは骨の頭の部分事を言います。
大腿骨頭と骨盤の関節を、股関節といいます。
次に、壊死とは細胞が死んでしまうことを言います。
壊死をする原因には、感染、物理的な損傷、血流の減少による酸素や栄養不足などがあります。
つまり「大腿骨頭壊死症とは太ももの骨の頭の部分への血流減少により細胞が死滅し、股関節で重度の痛みを伴う病気」ということになります。
☆原因は?
ホルモンの影響、遺伝的因子、関節の構造など様々な原因が考えられていますが、血流減少の明確な原因はまだわかっていません。
☆症状は?
発症は生後3~13ヶ月齢で、特に生後6~7ヶ月齢で多く認められます。
片足でみられることが多いですが、約15%で両足に発症することがあります。
徐々に跛行する場合、急に跛行する場合がありますが、進行すると全く足を着けることが出来なくなってしまう場合もあります。また後ろ足が痛くて動かせないため、筋肉が萎縮し、足が細くなってしまいます。
中には、痛くて動かなくなったり食欲が落ちてしまう子もいます。
レントゲン検査で、大腿骨頭の変形、壊死所見などがみられます。
初期では変化が軽度で診断がつかない事がありますが、病気は進行性ですので再検査で診断がつく事があります。

☆治療方法は?
初期では運動制限や痛み止めである程度痛みを緩和する事が出来るかもしれませんが、進行する病気であるため、最終的には外科手術が必要になります。
外科手術では壊死、変形していく大腿骨頭を切除します。(大腿骨頭切除術)

体重の軽い小型犬では足の筋肉の十分なリハビリで、ほとんどの子が再び歩く事が出来るようになります。
しかし、術前の筋肉の萎縮が重度であれば改善が難しいこともあります。
トイプードル、ヨークシャテリア、ミニチュアピンシャーなどの小型犬種の成長期で多い病気です。この年齢のわんちゃんはとても元気に走り回る、跳び回る子も多いので、外傷や骨折などにも十分に注意してあげて下さい。
アイリス動物病院
中村