∞天城と伊豆の踊り子∞ | アイリス レイア 徒然なるままに

∞天城と伊豆の踊り子∞

∞今日も紙上で、伊豆の旅をお楽しみ下さい。


∞伊豆の国から《天城》に入ると、山がどんどん深くなり、幾重にも重なっている。


∞この先が《天城峠》。
《伊豆の踊り子》の一節が浮かんで来る。


∞『修善寺に一夜泊まって、下田街道を湯ヶ島に歩く途中、
湯川橋を過ぎたあたりで、三人の娘旅芸人に行き遇った。
修善寺に行くのである。太鼓をさげた踊子が遠くから目立っていた。私は振り返り振り返り眺めて、旅情が身についたと思った。...』




∞20歳の旧制高校生の私と踊り子との出逢い。
私は、このくだりが、一番好きだ。


∞これからどんな展開があるのだろうかと、心ときめく。


∞そこには、私たちが、日々の喧騒の中で、或いは、歳月と共に忘れてしまいがちな《純粋さ、淡さ、みずみずしさ》
がある。


∞《ときめき》を失ってしまうのは悲しい..


∞《川端康成》の27歳の時の作品だが、20歳にして、天涯孤独になってしまった彼自身の《孤独や寂しさ》を20歳の学生に重ね合わせて、叙情の中から払拭しようとしたのではないか?...
と思う。


∞彼自身も
『美しい踊子が彗星で、修善寺から下田までの風物が、その尾のように、私の記憶に光り流れている。』
と述べている。


∞暫く山並みを走ると《浄蓮の滝》に着いた。
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∞私と踊り子の像があった。滝音が聞こえてくる。


∞石段を下りて行くと《天城越え》の石碑があった。


∞ぽつりぽつりと雨が降ってきた。
大雨にならなければいいが...


∞再び一節が浮かぶ...
『道がつづら折りになって
いよいよ天城峠に
近づいたと思ふころ
雨脚が杉の審林を
白く染めながら
すさまじい早さで
麓から私を追って来た。』


∞虚構と現実が重なり、時間感覚が不透明になった。


∞滝音がその感覚を次第に透明にしていく。
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∞この滝には、女郎蜘蛛の伝説がある。

∞滝を眺めていると、身も心も洗い流され、清められる感がある。


∞山の雨水が、滝になるのだから、日本 は水の豊かな国だ。

∞しかし《放射能》で、日本中の川や海が汚染され続けている。


∞魚が食べられなくなる日。水が飲めなくなる日が来ないことを祈りたいものだ。