手術室の扉が開き、裕樹を乗せたベッドが出てきた。

 

「裕樹君、おかえり。お疲れ様!」

 

まだ麻酔が効いており、眠ってる裕樹に話しかけた。

 

「入江さん、手術は上手くいきました。今からしばらく集中治療室で様子を見ます。今夜には一般病棟に戻れます。他にも話があるのでついてきてください。」

「わかりました。裕樹君、また後で来るね。」

 

 

琴子は看護師と先生と一緒に個室に入り、話をした。

一般病棟では、個室が埋まっていて相部屋しかないこと。

食事のこと。

アレルギーのことなどを。

 

「入江さん、集中治療室には、赤ちゃんが入ることは出来ないんです。どうなさいますか?」

「では、一旦主人が来るのを待ちます。主人に付き添いをお願いして、裕樹君の荷物を持ってきます。」

「わかりました。ご主人がお見えになりましたらお声かけください。」

 

 

琴子は紀子達に手術が無事に終わったことを報告した。

しばらくすると、直樹も駆けつけ、交代した。

琴子は家に帰り、琴美のオムツも変えて、もう1度病院に向かった。

 

 

「お義母さん、今から裕樹君の所に行くので、琴美お願いしていいですか?」

「もちろんよ!パパと面倒見とくわ。琴美ちゃん、いらっしゃい♪」

 

紀子は琴美を受け取ると、重樹と頬をつついている。

 

「お義母さん、後で交代に来ますね。」

「はーい♡じゃあその時に私も裕樹の所に行くわね。」

 

 

琴子はICUに入ると裕樹の居る、カーテンの中から人が入ったり出たりするのを見た。

 

(裕樹君、何かあったのかな!?)

 

琴子は急ぎ足で裕樹のベットに向かった。

カーテンを開けると、裕樹は寝ていた。

 

「裕樹君、大丈夫なの?」

 

琴子が直樹に聞くと、不思議な顔をした。

 

「大丈夫って?顔色悪いかな…?」

「じゃなくて、看護師さんがいっぱい出入りしてたから。」

 

直樹の顔が一瞬険しくなった。

 

「ああ、あれか…大丈夫だ。何ともないよ。裕樹、さっき目が覚めたんだけどまだ眠いって寝たよ。」

「そう。それなら良いんだけど…」

 

琴子は安心して、直樹の横に腰掛けた。

 

「失礼しま〜す♪」

 

ICUという場には不釣り合いな、浮かれた声が聞こえた。

 

「はい。どうしましたか?裕樹君は、バイタル安定してますから大丈夫ですよ。」

 

琴子がそう答えると、看護師は琴子を軽く睨んだ。

 

「いえいえ。一般の方にバイタルとか見ても分からないと思うので。裕樹君のお兄さん♪家族以外は入れないんですけど、どういうご関係か教えて頂けますか?」

 

琴子への態度と直樹への態度は誰が見ても分かるくらい違いすぎだ。

 

「彼女は医学生なんで何かあったら呼びますから大丈夫ですよ。後、彼女は俺の妻で裕樹の義理の姉ですが何か?」

 

直樹は看護師をギロりと睨んだ。

 

「え!?…そ、そうでございますか。わかりました。失礼します。」

 

直樹が結婚していると知った看護師は真っ青になり、出ていった。

それから、看護師が来ることは必要最低限になった。