重樹が家に帰り、琴子と直樹と2人だけの病室。琴子が再び目を覚ました。

「入江君。」

「なんだ?」 

「一つ聞いてもいい?」 

「ん?」

「私の手術中に、私、心肺停止になった?」

直樹は驚いた。

「なんで知ってるんだ!?誰に聞いたんだ?」

琴子はニコッと笑うと言った。

「誰にも聞いてないよ。お母さんと空から見てたの。私の手術の様子。」

「お袋と?」

「違うよ。私の死んじゃったお母さんだよ。」

直樹は半信半疑。

「あのね、気づいたら雲の上にいて、お母さんが居たの。」

「お義母さんが?」

「そう。それでね、私はまだ死んでは行けないから戻りなさいって言って、私が病室で心肺停止になってから、オペ室で心肺停止になって、加地先生が入ってきた所まで見せてくれたの。」

直樹はオペ中に、手が動かなかったことを思い出した。

「俺…かっこ悪いよな…」

「そんなことないよ。入江君があんなに必死になってくれてたなんて嬉しかったもん。」

琴子が微笑む。

「テレビでそういうこともあるって聞いたことがあったけど、ビックリしちゃったよ。私ね、空に登った時、お母さんに会えてすっごく嬉しかったんだ。でもやっぱり入江君の側から離れたくなくて戻ってきちゃった。(´>∀<`)ゝ))エヘヘ。ごめんね。」

「なんで謝るんだ?」

「また入江君の荷物増やしちゃった。」

「荷物なんて思ってないよ。帰ってきてくれてありがとな。」

「入江くん大好き!」

「知ってるよ。十分ね…琴子、愛してる。」

直樹はギュッと琴子を抱きしめた。

ドアが開いた。未知子が入ってきた。

「失礼します。」

直樹はゆっくりと琴子から離れた。

「入江先生、患者さんに無理させないでくださいよ。退院して、傷口か塞がってからにしてください。」

「大門先生、何か用ですか?」

「そうそう。私、この病院、辞めるから。琴子さんの引き継ぎを入江先生にお願いしようと思って。」

「大門先生、辞め…ちゃうんですか?」

「ええ。」

「大門先生、琴子から聞いたんですが…」

直樹は琴子の身に起きたことを説明した。

「へぇ~、そうなんだ。」

「だから、一応報告書にまとめたほうがが…」

「私には関係ないので。じゃあ、引き継ぎよろしくお願いします。」

未知子は出ていった。