「うっ!」

重樹は発作が始まり、倒れてしまった。

「お義父さん!」

琴子はゆっくりと発作の時に楽と言われている体制に重樹を動かした。

「直樹、お義父さん達の寝室にある薬と紙袋持ってきて!」

「あ、ああ!」

琴子は直樹から受け取ると、急いで重樹に吸入させ、救急車を呼んだ。

紀子は震え、立ち尽くしている。

救急車が到着し、重樹をのせると、紀子と琴子が乗った。

「これが薬です。家での処置はこの薬を吸入しただけです。発作が起きてからは12分で、脈拍は……」

琴子は的確に説明していく。

 

後ろの車には直樹と琴美と重雄と裕樹が乗っている。

「お兄ちゃん、パパ大丈夫かな……?」

「琴子もいるし、大丈夫だよ。」

「琴子お姉ちゃん、かっこよかったね!」

「ああ。本当、凄かったよ。裕樹、琴美寝たか?」

「うん。」

救急車のサイレンで目を覚ました琴美はようやく、車に揺られながら眠りについた。

「直樹君、医者になりたいって言うのは本当かね?」

「ええ。やっぱり、長男である以上、無理なんですかね。」

「イリちゃんは直樹君が後継いでくれると思っとったからね。」

 

救急車から降り、重樹が運ばれた後、救急車に乗ってた先生が顔を出した。

「入江さん、重樹さんの容態は安定してきました、今は大丈夫です。ところで、君、的確な支持、ありがとうございました。」

「いえ、医学部なんです、私。」

「なるほど。君はとても優秀みたいだな。」

「ありがとうございます。」

直樹達が病院に着くと、琴子達は診察室の前の椅子に座っていた。

「琴子ちゃん、パパはどうなの!?さっきの人が言ってた、今はってどういうことなの!?大丈夫なの!?」

紀子は興奮状態だ。

「お義母さん、落ち着いてください。今の医療なら大丈夫です!」

紀子は琴子に泣き崩れた。抱きついてただ泣きながら重樹の無事を願った。直樹達が到着した。

「琴子!親父は?」

「今は処置を受けてるわよ。」

「琴美、寝たけどどうする?」

「取り敢えず、起きないのを願うしかないわね。」

「そろそろ授乳の時間だからぐずると思うけど。」

「その時はその時よ。」

ガラーッ

ドアが空き、重樹が出てきた。

「パパ!」

紀子が駆け寄る。

「入江さん、向こうでお話します。……あれ?相原さん?なんでいるの?」

「私の主人のお父さんなんです。」

「あら…そうだったの…じゃあその赤ちゃんって…」

「はい。私の子です。」

「後で抱かせてね。」

紀子と先生は個室に入っていった。

「琴子、あの女医、知り合いか?」

「うん。北河乙葉先生よ。実習の時、1番お世話になった先生なの。私が妊娠して、悪阻で実習受けなれなかった時、補講を付けてくれたの。あの先生も、私と同じ頃にデキ婚なんだよ。だから、凄く親身になってくれたの。」