帰ってる最中、直樹と琴子は親へ話すか迷っていた。

「直樹、産んでいいの?」

「出来れば産んで欲しい。」 

「いいの?まだ学生だよ。」

「でも、俺にも責任あるなら。」

「いいの?産んで。」

「ああ。産んでくれ。俺と琴子の、愛の結晶をさ。」

直樹は琴子のお腹に手を当てた。

 

家に着き、家族全員をリビングに集めた。

「直樹、話って?」

「親父、お袋、おじさん。俺と琴子、結婚したいんだ。」

「まぁ〜!素敵!この日をずっと待ってたのよ♪」

「ママ、落ち着いて。ね?直樹、琴子ちゃん、大学を卒業してからでいいんじゃないか?」

「それが、俺のせいで、琴子が妊娠したんだ。」

「べ、別に直樹のせいじゃ……」

「いいから。おじさん、承知してもらえますか?」

「承知するも何も……直樹君。琴子でいいのか?」

「勿論です。」

「直樹君、琴子を、よろしくな。」

「はい。」

「いや〜とうとうアイちゃんと親戚だな。」

「そうだな!」

抱き合って喜ぶ重雄と重樹。

「もうすぐおばあちゃんよ〜」

一人泣いて喜ぶ紀子。

「琴子ちゃんがお姉さんか…ていうか僕もう叔父さんになるのか!?」

小学5年生になった裕樹が呟く。

 

その夜ご飯から、琴子は悪阻で食べられなかった。

「琴子、何か食べられそうなものあるか?」

琴子の部屋に直樹が様子を見に来ていた。

「ゼリーが食べたい。みかんゼリーが食べたい。」

「分かった。買ってくるから待ってろ。昔も言

ったけど、男って本当に何も出来ないんだな。」

「直樹、この部屋にいると、匂いで気分悪くなるよ。」

「その方が、琴子の辛さ分かるから。頑張れよ。行ってきます。」

「行ってらっしゃい。」

直樹が部屋を出てからも琴子は吐いた。

直樹と琴子の部屋の間は動かせる壁、つまり部屋が仕切りで区切られていただけだった。紀子が将来のためにと琴子の部屋の片隅にトイレとシャワールームが付けられていた。

琴子はそのトイレに駆け込む事が多かった。

「ただいま。琴子?」

「あ、直樹、お帰り。」

琴子の顔はげっそりしている。

「大丈夫か?」

「うん。ゼリーありがとう。」

「当たり前だろ。自分の奥さんが苦しんでるのに何もしないわけ無いだろ。」

「お、奥さん//」

「違うのか?」

「ありがとう。私と結婚してくれて。」

「ほら。」

直樹がゼリーを差し出す。

「ありがとう。直樹が居ると気持ちも悪阻も楽になる。」

「そりゃ良かったよ。今日から一つの部屋にするか?奥さん。」

「一つの部屋?」

「お前知らないのか?この壁、外れるんだぜ。」

「知らなかった…」

「ベットも壁1枚で挟んであるから一緒に寝れるぜ。」

「い、いいよ。恥ずかしいし…」

「なんだよ子供作ることやっといて。」

「……//」

その晩、直樹と琴子は手を繋いで眠りについた。