直樹と琴子は婚約者に昇格した。紀子は勿論、家族全員が喜んだ。だが、進学に差し支えるからと、学校や友達には内緒。
その後、特に何もなく、日々は過ぎた。
唯一言うならば、同棲が始まったことや、琴子がテストで直樹と並んで1位になった事だ。
後は……F組の殆どが2年でD組になって安心して、勉強をサボって3年はみんながF組に戻るということがあったくらいだ。
高校3年生では、みんなから東大受けるように2人は言われ、2人とも受け、受かったが、結局直樹は斗南大学の理工学部。琴子は斗南大学の医学部に進学した。
大学の入学式も終わり、直樹と琴子は食堂で鉢合わせになった。
「直樹、お昼食べるの?一緒に食べよ。」
「ああ。」
直樹は微笑み、琴子と恋人繋ぎをして、注文しに行った。
直樹も段々と、琴子の前ではよく微笑むようになった。
席に着き、2人で食べていると、女性が声を掛けてきた。
「入江くん、ここいい?」
「ああ。」
(来るなよ。琴子と2人が良いのに。)
直樹は返事をしたものの、嫌だった。
「貴方は?」
琴子が遠慮気味に女性に声を掛ける。
「ああ、私は入江くんと同じ理工学部の松本裕子よ。よろしくね。あなたは?」
「私は…相原琴子です。医学部の。」
(頭はいいのね、この女。)
「へぇー、そうなんだ。ねぇ入江くん、この後、一緒に図書館へ行かない?」
「行かない。琴子、行くぞ。」
「は、はい。」
松本裕子は初めて自分を女として見てくれなかった男、直樹と一緒にいる琴子が気になった。近くにいる、付属高校だった人に聞くと、付き合ってると聞いた。
(ショックだわ……でもあの女、頭がいい以外に何が出来るのかしら?)
直樹と琴子は歩いていると声を掛けられた。
「よお!入江!」
「須藤さん、お久しぶりです。」
「なぁ、分かってんだろ?是非、家のクラブに入ってくれ。頼む!」
「俺はいいですけど、琴子しだいですよ。」
「え?私!?」
「君は?」
「医学部の相原琴子です。」
「医学部……こいつ頭いいな…!?手が…恋人繋ぎ…付き合ってるのか!?」
「そうですよ。琴子は俺の彼女です。」
「え?お前、俺の心の中も読めるのか?」
「声に出てましたよ。」
「え?……琴子ちゃん、入江を説得してくれ!頼む!」
「何の部活なんですか?」
「家はテニス部だ。」
「いいんじゃない?直樹テニス上手だし。」
「でも、部活って面倒なんだよ。」
「頼むよ入江!大会前と、大会だけでいいから!頼む!」
須藤先輩は、土下座を始めた。
「分かりましたよ…土下座はやめてください。」
「ありがとう。琴子ちゃんも一緒にどうだ?」
「私は……医学部なので……勉強が……」
「だな。じゃあ、入江の彼女だし、気が向いたらいつでもこい。待ってるからな。」
「はい!ありがとうございます。」