「身柄の引き渡しは、京都・鹿苑寺にて」
去る、8月22日(金)
IRAS夫婦は、ド平日なのに朝から京都にいた
(京都駅・新幹線ホームの舞妓さんマネキンは歓迎ムードゼロ・・・)
というのも・・・
金沢疎開していたうちの坊主もいよいよ夏休みが終わりに近づき
お義姉さんが、「京都まで迎えに来てくれるなら、ちょうど行きたいとこあるし・・・」 と
わざわざ身柄を移送してくれたのだ
約束の合流場所は、前日に観光本を熟読した坊主本人の意向により 鹿苑寺・舎利殿金閣
さすが、宿題を紛失くしても全く動じなかった大物ボーイ
本来ならクール宅急便の着払いで送り返されても文句言えないところを
花の京都で身柄の引き渡し場所たぁ、維新志士並みの扱いだ
仕方ないから、身柄を引き取るついでに我々も京都観光してやろう
京都を訪れるのは、奥さんの従妹の結婚式にお呼ばれして以来、実に7,8数年ぶりのこと
さらに観光ともなると、一気に、中学の修学旅行にまで遡り、人生2度目だ
(中学の卒業旅行かぁ・・・自由散策じゃあ班長としてバリバリ引率して、京都中を彷徨ったなぁ・・・)
感慨深げに京都タワーを見上げるおっさんは、危うくいきなりバスに乗り遅れそうになる
39歳目前にして初めて訪れた鹿苑寺は、平日ということもあって、観光客も外国の方がメイン
本来なら、木漏れ日と風の音、鳥の囀りを楽しみながら回りたい雅な空間だが
周囲を、せわしない中韓両国の観光客に囲まれていてはそうもいかない
でも・・・・
彼らは何故、1人で5人分喋るんだろう?
ま、今や世界の観光業は彼らの存在抜きには成立し得ないのだから、致し方ないところだが
ちょうど撮ろうとしたアングルにドヤドヤと割り込まれた坊主は、言語が通じないのをいいことに小さな声でボロクソ言っていた (笑)
おー!これがかの有名な金閣さん
確かに単体を見ればド派手だが、それが手前の蓮池やバックの深みある緑と見事にマッチ
そうか・・・「ギンギラギンにさり気ない」ってのはこういうことだったのか!
(うまい!山田く~ん、座布団1枚あげて!)
こういう場所では、絶対におみくじを欠かさないのが、息子さん
そして、必ず「大吉」を引き当てるのも、息子さん
虚言を弄して不都合な事実を隠蔽するような奴が常に大吉なのだから
やっぱり世の中ってのは、俺のような清廉潔白で純粋な人間にとって不公平にできている
鹿苑寺を一周したあとは、すぐ近隣にある竜安寺へ
成金趣味なわかりやすい派手さがないとダメなのかこちらは欧米系の観光客が多く
せわしない人達の姿は皆無だった
しかも、意外に訪れる人数も少なく
マイナスイオンの満ちた砂利道を行く美人姉妹の後方を行く
落ち着きのないカメラ小僧2人
団地の夏まつりで当てたNikonを勝手にMYカメラとして愛用している坊主は、このあと行く先々で
マイケル や ディラン や クリス や ジェニファー に
「ワオ!見てみてろよ!あのBOY、Nikonで撮ってるぜ!アメージング!」 (※)
と指をさして注目されていた
(※なんて喋ってるのか?ネイティブイングリッシュはほとんど理解できなかったが、深夜のテレショップみたいな表情とジェスチャーから見て、ほぼ間違いないだろう)
竜安寺といえば、言うまでもなく目玉は「枯山水」でも有名なこの石庭
どの角度から見ても、15個全てを一度に視認することはできないと言われる石の配置
遠近法を巧みに利用して広がりを持たせるように造られた外壁
石庭を語る予備知識は広く知られているが、いざここに立てば言葉など無用
ただ静かにそこに腰をおろし、ゆったりと縁側から眺めるその空間の在り様こそが神髄
今回の旅で最も感動したのはこの石庭だった
見た目は小さいが中身はオヤジなうちの坊主も、父と同じく心を揺さぶられたのか
自ら進んで、他の先客の隙間を見つけて縁側へちょこん
え? 坊主とアイコンタクトしている隣の男性は誰かって?
ああ、すいません
このブログ、坊主以外はあんまり露出しないから分からないですよね
これ、僕ですはじめまして
それにしても、ちょうどやかましいアジア系観光客がいないタイミングに行けて本当によかった
もし、鹿苑寺のような喧噪だったら、間違いなく俺は、軽率な地元意識(全く地元じゃないのに・・・)で
国際問題を起こしていただろう
「えてして、アジア人は・・・もちろん日本人も含みますが、海外に出ると現地の伝統や風情を静かに楽しむ余裕がないように感じますね」
そう語るのは、新婚旅行と親族旅行でグアム、サイパンに1回ずつしか行ったことのない、極めて海外経験の乏しい IRAS氏(38)である
石庭の癒しに触れたあとは、再び美人姉妹の後に続くように園内を遊歩
坊主がいなけりゃ、完全に“両手に花” (ン?誰だ?今、両手にラフレシアって言ったのは?)だが・・・
「パパぁ~待ってぇ~サンダルに石が入ったぁ~」
「おお、それはいけないね。どれどれ、私が取ってあげよう」
すっかり、悠久の時が流れる場の雰囲気に呑まれたオッサンは、まるで平安貴族の如く優しい
ちょうど昼時を迎え、園内の食事処で昼食
折角京都に来たのだから少しでもご当地のものを・・・と 「湯葉カレー」 なるものを注文してみる
見るからに良く煮込まれた色合いのルー
ゴロっと見えるのは、京都牛に京野菜か・・・?
いや・・・・
湯葉が入った、ククレカレーだった.....
今回の京都市内移動の足は、お義姉さんのボルボV70
余談だが、結婚してからの10年ちょっとで、金沢に寄生(誤変換だが、まあ外れでもないか・・・)する度に乗った車は、ハリアー、ギャラン、ムラーノ、スピアーノ、アルファ147、アルファード、シトロエンC4、ロードスター、レガシーアウトバック、アウディQ5、そして、このボルボV70・・・と、実に11車種
俺が中学の頃からずっと同じ深緑色のコロナ・エクシヴに乗り続けているうちの実家とは対照的だが
その自動車遍歴の差がまさに両家系のバイタリティの差を如実に表わしている
竜安寺の次に訪れたのは、お義姉さんが今回絶対行きたかったという 「蓮華王院・三十三間堂」
あいにく堂内は撮影厳禁ということで写真には残せなかったが、ズラリと並ぶ1001体の黄金の千手観音像と風神・雷神・二十八部衆の迫力は圧巻で、神社仏閣・古代芸術に興味を持つ坊主も、飽きることなく真剣な眼差しでひとつひとつじっくり観察
到底数えきれないほどの国宝ロマンに、勉強中はずっと濁りっぱなしの目もランランと輝いていた
そして、観覧順路の突当りにある売店で
「風神・雷神のストラップもいいけど、観音様のゴールドカードも欲しいなぁ」
とすっかり煩悩に捉われ懊悩
どれだけ悩んでも結論を出せない優柔不断な牛歩戦術で
最後は、焦れた母に全て買ってもらうという作戦を見事に成功させた
この日の宿は、京都駅八条口側にある「サクラテラス」
予約してくれた奥さん情報では、まだ新しいホテルということだったが
とりあえず、対応してくれたフロントのお姉さんは凛とした京美人
うん、いいホテルだ 間違いない
一旦ホテルにチェックインだけ済ませた後
夕食は、お義母さん推薦の、京都駅伊勢丹にあるすき焼き屋「モリタ屋」 にて八海山で乾杯
京都市街を一望する眺めの良い窓際の席で、久々に自費で上質な牛肉を堪能する
さすが、天然だけどセレブなお義母さんおススメの店だけあって
準備は全てお店の人がやってくれて、お客は、ただ食べ頃になるのを座して待つだけ
あいにく、担当の仲居さんは、あと15年もすると爺さんか婆さんか分からなくなりそうな人だったが
もちろん、クラブに来てるわけじゃないので、肉も酒も美味ければ全く文句はない
だが・・・
ただ、ちょっと美味過ぎた
経済的な事情もあり一番安い「梅」コースにしたのだが、肉の量は完全にキャパオーバーで
この晩、俺はスロットル全開で腹を下すことになる・・・
まったく・・・高級な物を食べるとすぐ罰が当たるこの庶民体質・・・どうにかならないものだろうか?
そんなことになるとも知らず、ホテルに戻った一行は、バーに直行してウエルカムカクテル
若いバーテンダーと、ヘミングウェイみたいな外国人観光客が英語で語らう洒落た風景に
とっても感化されやすいおっさんは、つい
「アーリータイムスをロックで頼むよ」(←とってもショボい、俺の中のデキる男のイメージ)
などとほざきそうになるのをグッと堪え、ジュースみたいな 「チャイナブルー」 をオーダー
夜風の気持ちいいオープンテラスで
何も見えない夜空を見上げながら、どっかの誰かになり切ってみる
ふと、仲良く語らう美人姉妹の方に視線を向けると
頭上に、やけに陽気な子供の霊が漂っていた・・・
え?さっきから、いちいち、美人美人って何の自慢だよ!って?
いやこういう小さな努力の積み重ねが、いずれ大きなリターンに結びつくのです
4人でツインルームを2部屋抑えたものの
俺が奥さんと同部屋で、自分とこの子をお義姉さんに丸投げするわけにはいかず
かといって、俺とお義姉さんが同部屋になるわけには断じていかず
結果、女2+男2で分かれて、俺は坊主と2人で父子水入らず
だが・・・・
2人仲良く、TVでエヴァンゲリヲンを観ていたとこまでは良かったのだが
映画を観終わるや、何やら坊主が 「ホテルには霊が出るかもよ・・・」 なんて話をし始め
結果、その5分後・・・
「パパ・・・怖くなって来た・・・ 夜、トイレ行く時付いて来てね」
お前は、一体何がしたいねん誰が徒歩3歩のトイレに付いて行くかい!
怖がりなクセに怖いものが好きで、自分から幽霊話始めといて自分で怯えて
挙句に深夜に俺を巻き込むと言う・・・ある意味これはもう、自爆テロだ
しかし、そんな坊主だったが・・・
早朝に金沢を出発してから蒸し暑い中をあちこち歩き回った疲れですぐに爆睡
寝息を立て始めてからわずか10分足らずで体の向きが90度回転するというエクソシスト級の寝相の悪さで、罪のない俺に殴る蹴るの暴行を加え、哀れな父はソファーに避難
結局、2つあるはずのベッドもご覧の通り終始占領され、ほとんど満足に眠ることもできぬまま
しかも、寝る直前に余計な話をされたおかげで、真っ暗な部屋の鏡に何か映るんじゃないか・・・と怯えたまま、朝を迎えることになった.....
起床後、現行犯で逮捕された坊主は、「よく覚えていない」 などと供述し
「睡眠中は責任能力がないから自分は無罪だ」 と主張
完全に、飲酒運転や薬物中毒者と同じ言い分だが
俺以外に証人もおらず、証拠不十分で不起訴処分となった......
この国の司法は、やっぱり何か間違っている
(「また会おう、京都。」につづく)