株主総会招集通知の発送前Webサイト掲載 | IR担当者のつぶやき

IR担当者のつぶやき

上場企業に勤務する公認会計士の、IR担当者として、また、一個人投資家としての私的な「つぶやき」です。

ときどきIR担当者的株式投資の視点も。

久々の書き込みです。
今年は結構いい調子で招集通知の作成や納品手配等が進み、有価証券報告書の作成もまぁ順調に進んでおりまして、多少余裕が出てきたものですから。

2012年頃からでしょうか、株主総会の招集通知を株主さん宛に発送する前に、自社Webサイトに掲載してしまおう、という会社さんが割と多くなってきています。

もともと3月決算会社が多い日本において、招集通知の早期発送は従来から機関投資家を中心に強く求められていたところです。
法定の2週間では、議決権行使のための検討期間は実質1~2日あるかないかだとか。
IRに積極的で先進的な企業さんでは、3週間前、4週間前は当たり前になりつつあります。

そうはいっても、紙の招集通知を校了して印刷して、株主名簿管理人(信託銀行など)で封入して発送して・・・というリアルの手続を考えると、どうしても限界があるもの。

Webサイトへの掲載なら、信託銀行が運営している議決権行使促進サイトやICJの議決権行使プラットフォームを通じて、機関投資家にほぼリアルタイムに伝達することができ、議決権行使のための検討期間を長めにとることができます。

ましてや、最近は「日本版スチュワードシップ・コード」など、機関投資家に対して、投資先企業との対話や、議決権行使結果の開示が求められるようになってきています。
結果、機関投資家さんのほうも、これまで以上に投資先企業に対するアクションと、委託元の年金基金等に対してアカウンタビリティ(説明義務)を十分に果たすことが必要になってきました。

こうした流れの中で、機関投資家との対話を重視するIR先進企業においては、別に違法でないのなら、株主総会の招集通知を発送前にWebサイトに掲載したっていいよね、ということで、早めにWebサイトに掲載するトレンドができつつあるわけです。

実際に、まだ発送してないとはいっても、信託銀行への納品は終わっており、封入作業の順番待ちで、カタログスペック的に言うと、信託銀行さんも4営業日ほしいとか、5営業日前デナイトダメとかおっしゃいます。
株主数がそんなにいなければ、機械封入で半日で終わる作業なはずなのに、ほぼ単に機械の順番待ちですよね。
その間、機関投資家さんにお預け食らわせておくのは、いかにも時間がもったいない

招集通知の発送前掲載は、極めて合理的な選択だと思います。

仮に、間違いが発見されても、よほど致命的でない限り、Webサイトへの正誤のアップでOKですし、逆に早めに正誤が発見されたほうが、株主総会の当日に株主からの指摘で判明して、役員さんからこっぴどく怒られるより、よほどいいじゃないですか(笑)



そんなわけで、当社も、検討してます。早期掲載。

ところで、取締役さんたちに一応説明しておかないといけないなぁと思い、東証からデータを引っ張ってきて、ちょちょいと加工してみました。
ネタは、東証の株主総会アンケート集計結果です。

■株主総会開催予定日一覧
 http://www.tse.or.jp/listing/sokai/shoshu/index.html

ここには、3月決算会社さんの総会開催日、招集通知の発送日、公表予定日が一覧になって掲載されています(これは東証が各上場会社にアンケート形式で回答を募ったものです)。

Excelですから、ちょいと加工すれば、いろんなデータが得られます。

とりあえず、先日数えたときには、2,090社が対象となっていました。
総平均の招集通知発送日は、18.2日前です。
つまり、法定の2週間前よりは前ですが、3週間前まではいってない、という微妙な感じ。
まぁ、全平均ならそんなもんでしょ。

そこで、発送日と公表日の差、どの程度早期掲載するのかをとってみました。
調査時点では、発送前の掲載企業は194社(全体の9.28%)でした。

どう思いますか、約1割の会社で、発送前のWebサイトへの掲載をしているという事実。
私は、「へぇ~、意外に多いんだ」と思いました。
適時開示などとは違って、招集通知などは、法務部門がかんできたりするので、かなり堅めの運用になるケースが多いと思いますので、もっと少なく5%くらいかなと思ってました。

次に、その早期掲載会社の平均掲載日をとってみると、(発送の)3.4日前となりました。
これも、意外に頑張ってますね。
やはり一番多いのは、発送前日で89社ありました。
2日前: 10社
3日前: 25社
4日前: 11社
5日前: 10社
6日前: 10社
1週間以上前: 39社

となります。
これも納得。当社も、信託銀行への納品は土日もありますから1週間前の予定ですもん。
つまり、このタイミングで、印刷会社(宝印刷やプロネクサス)から、招集通知のPDFファイルも納品されますから、「えぇい、同時にアップしてしまえ 」と。

結構、みなさん積極的にやり始めてるなぁと思います。

と、これだけじゃつまらないので、私は調べましたよ。
外国人持株比率との関係。

当然の仮説として、外国人持株比率が高い=議決権行使期間にシビア=早期発送、早期掲載を実践しているIR優良企業が多いはず・・・。

では、調査時点での早期掲載ベスト10企業を発表しましょう

1.IJTテクノロジーHD(7315) 総会日6/27、発送日6/10、公表日5/23で、なんと18日前
 すごいです  どうしたら、こんなに早く公表できるのでしょう。校了はもっと前のはずですよね・・・。
 しかし、手元の電子版四季報(2014年3月公表のもの)でみると、外国人持株比率は「-」。
 四季報記者に通知してないのか、0.0%なのか。
 いずれにせよ、いすゞ系の部品3社が統合した会社のようですから、外人比率はそんなに高くなさそうです。

以下、どんどんいきます。

2.川重冷熱工業(6414) 総会日6/27、発送日6/12、公表日5/27→16日前 0.0%
3.イクヨ(7273) 6/25、6/9、5/27→13日前 0.5%


このへんまでは、外国人持株比率は全然です・・・。

4.資生堂(4911) 6/25、6/2、5/20→13日前 31.4%
 はやっ
 5/20なんて、ウチは決算発表してまだバタバタしてましたよ・・・
 外国人持株比率も、さすがの30%超え。

5.LIXILグループ(5938) 6/20、6/3、5/23→11日前 35.9%
6.日本アジア投資(8518) 6/25、6/6、5/27→10日前 10.4%
7.サンリオ(8136)      6/26、6/9、5/30→10日前 16.8%
8.ローランド(7944)     6/27、6/5、5/26→10日前 31.1%
9.日揮(1963)         6/27、6/5、5/27→9日前 44.5%
10.マキヤ(9890)       6/27、6/10、6/2→8日前 0.0%
10.平和(6412)        6/27、6/10、6/2→8日前 11.2%
10.ヤフー(4689)      6/19、6/4、5/27→8日前 47.4%
10.ケンコーマヨネーズ(2915) 6/24、6/9、6/1→8日前、3.6%

以下、同一日ごとに主な企業をご紹介しましょう。

7日前掲載
ミスミG(9962) 60.2%、第一生命(8750) 36.6%、ライフネット生命(7157) 27.9%、
オムロン(6645) 43.9%、JVCケンウッド(6632) 20.4%、三菱電機(6503) 34.4%、
千代田加工建設(6366) 24.8%、プロトコーポレーション(4298) 22.3%、
帝人(3401) 26.9%、双日(2768) 35.4%、西松建設(1820) 24.7% など。
意外だったのが、ホンダ(7267)が7日前なのですが、四季報で外国人持株比率が確認できませんでした。相当高そうですけどね。
また、九州発のホームセンターのナフコ(2790)が21.1%

やっぱり、IR優良企業賞を獲得しているような会社さんが、数多く見られます。
例えば、資生堂は2回受賞、ホンダもそうですし、オムロンは確か4回、帝人だって2回、「カーと言えばGoo」とともちんが言ったプロトコーポレーションだって特別賞等計2回受賞してます。
また、千代田加工建設さんだって、IR協議会で活躍されたりとIRに積極的な会社です。

もう1つの特徴は、外国人持株比率が高いような会社は、その業界のトップあるいは世界的なシェアトップか高い企業であるケースが多いことでしょう。

LIXIL、ローランド、日揮やサンリオは言うに及ばず、ヤフー、オムロン、双日などなど・・・。

6日前掲載
アシックス(7936) 40.5%、トプコン(7732) 22.4%、野村不動産HD(3231) 31.3%、
ツクイ(2398) 25.9% など。

5日前掲載
イオンフィナンシャル(8570) 28.2%、HOYA(7741) 58.4%、大東建託(1878) 55.7% など。

次点の4日前掲載のなかには、日本電産(6594)27.4%や、オートバックスセブン(9832)30.3%といった企業名も(オートバックスは2013年IR優良企業特別賞受賞)。


一方で、知名度の高い会社さんばかりでなく、知名度が低い、または外国人持株比率が0.0%などの会社さんも結構あり、持株比率10%未満という会社も上位中24社ほどありました(5日前掲載までの上位グループの外国人持株比率の平均は19.6%)。

こうした会社さんは(ウチもそうですが)、知名度が低く、時価総額も低いままでとどまっているため、何とかして時価総額をあげよう、注目度を上げようと頑張っているIR担当者がいるものと推測されます。
でなければ、わざわざ社内を説得して回って、スケジュール厳しいなか、早期掲載なんてしませんよ。

個人投資家のスタンスでいえば、そうした会社をこそ拾っておくと、良い意味での割安株投資になるかもしれません。

上記に挙げた有名企業でない会社を、ぜひExcelを使ったスクリーニングによって浮き上がらせてください。
時価総額までは調べてませんでしたが、時価総額や予想PERなどと合わせて、早期掲載というコーポレート・アクション(それも、企業の意図・努力が色濃く出ている)とをリンクさせてみるのは、おそらく有意な結果を導くものと思います。