2010年3月期の議決権行使結果の動向 | IR担当者のつぶやき

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上場企業に勤務する公認会計士の、IR担当者として、また、一個人投資家としての私的な「つぶやき」です。

ときどきIR担当者的株式投資の視点も。

かなり前の話になりますが、6月の株主総会シーズンが終わった後に、今年のトピックであった「議決権行使結果」についての集計レポートの類があちこちから出ていました。
ここでは、大和総研のレポートと、企業年金連合会の報告書をご紹介したいと思います。


大和総研のレポート では、TOPIX core30構成銘柄による臨時報告書を集計しています。


■TOPIX core 30についてはこちら

なお、TOPIX core 30は、2010/10/29に入れ替えが生じていまして、上記の大和総研のレポートにあるJFE-HD(5411)が除外され、ソフトバンク(9984)が追加されています。

また、レポートが書かれた時点では、3月決算以外の会社はキヤノン(12月)、7&i-HD(2月)の2社あるので、全部で28社の総会後の議決権行使結果を集計しています。


議案別(役員選任議案も1人1議案とカウント)にみると、会社提案(425議案)はすべて可決されており、株主提案(5社・40議案)はすべて否決という結果になっています。


この結果だけとらえてしまうと、投資ファンドや物言う株主も静まって(?)平和な総会になりつつあるのかしらと思われますが、実は静かに水面下で変化の波が始まっているように思われます。


本レポートによれば、社内/社外の監査役や社内取締役(94.3~95.5%)よりも、社外取締役(90.3%)のほうが賛成率は低くなっており、機関投資家などから、社外取締役の独立性や実効性をより厳しくチェックされているといえます。


とくに、賛成率が低かった社外取締役候補者の例をみますと、ISSの基準にあるような取締役会の出席比率75%とか、3分の2とかの一定割合を超えていないと、途端に賛成率が下がるといえます。例えば、取締役会8回中5回しか出席していない方(出席率63%)の賛成率が65%にとどまる等。


また、独立性を備えた社外取締役がいない場合に、会長や社長に対して反対票を投じる傾向が強まっているフシがあるようです。

このへんは、この2010年春に取引所経由で導入された独立役員制度も、一定の影響を与えているのでしょう。

というのも、独立役員制度は投資家から一定の評価があるものの、社外監査役を独立役員に選定したのでは、取締役会の議決権の問題を解決できないと考えられているようです。やはり、取締役会で一票持って、企業行動に一定の歯止めを期待できる社外取締役のほうが社外監査役よりも望ましい、と考える投資家は多いということです。



次に、企業年金連合会の議決権行使結果を見てみましょう。


■企業年金連合会 2010年6月株主総会 インハウス株主議決権行使結果について

上記の報告で明らかにされていますが、反対・棄権した議案に関する反対等行使比率は18.1%(2009年は12.4%)と上昇しています。
その理由としては、


・定款一部変更議案の数じたいが大きく減少(828件→167件)したため、相対的に反対比率が上昇(1.0%→9.0%)してしまった
剰余金処分(4.4%→11.1%)役員報酬額改定議案(4.9%→11.2%)で反対比率が上昇した

などが挙げられています。


大和総研のレポートと区分が同じではないので何とも言えませんが、一般的に、取締役賞与の形でもらうほうが、役員報酬額の改定や退職慰労金の形でもらうほうが、反対は少なそうです(大和では取締役賞与の賛成比率は95%以上、企業年金連合会では報酬改定の反対比率が11.2%、退職慰労金への反対比率が25.8%)。


また、企業年金連合会では、取締役選任(32.4%→33.0%)、監査役選任(11.7%→13.4%)の議案については、大きな変化はなかったといえそうです。


なお、大和総研のレポートには、投資信託協会や日本証券投資顧問業協会が、自主規制で各会員に対し議決権行使結果を公表するように求めたとのことですから、その集計結果等もアップされていることでしょう。

機会を見て、確認してみたいと思います。



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