JALと減増資と上場維持 | IR担当者のつぶやき

IR担当者のつぶやき

上場企業に勤務する公認会計士の、IR担当者として、また、一個人投資家としての私的な「つぶやき」です。

ときどきIR担当者的株式投資の視点も。

巷ではJALの経営再建問題が喧しいですが、10/23(金)の後場途中から株価が急落してましたね。
債権放棄を求められている銀行団の一部からJALの減資を要求したと伝えられたのが要因のようです。


日経夕刊にも記事が載っていました。
株式上場は維持したうえで、いったん99%程度の減資を行い、その後、公的資金を注入して財務基盤を強化する可能性があると伝えられています。


いわゆる株主責任を問うというやつですね。
債権者(銀行)は債権放棄、公的資金注入で税金投入(国民)と、多くの利害関係者に痛みを伴うだけに、JALの株主だけ安穏としていることは許されない、ということです。


ただし、減資には株主総会の特別決議(出席株主の3分の2の賛成)が必要です(会社法会社法309条2項9号、447条)。
日経は、「多数の株主が反対すれば実現しない可能性もある」としています。


(この臨時株主総会は、またまた非難と怒号が飛び交う株主総会になりそうですね。行ってみたい気がしますが、基準日がいつになるのかわからないなぁ。)


また、経営不振企業の減資の例として、ダイエーが99%超減資をした後、産業再生機構が第三者割当増資に応じる形で経営権を握り、減資&増資を組み合わせて支援を行なったことも紹介されています。


ここで気になったのは、JALの上場を維持しながら大幅な減増資を行なう予定だとしていること。



先日(7/30)、東証からお知らせが届いていますが、「2008年度上場制度整備の対応について」という実行計画に基づいて、上場制度整備懇談会の検討結果も踏まえて有価証券上場規程が改正され、8/24から施行されています。


ここでは、第三者割当てに関する規制が定められていまして、第三者割当増資において希薄化率が300%を超える場合は上場廃止とするということになっています(施行規則第601条第13項第6号)。


■東証 有価証券上場規程施行規則(条文が膨大ですが、PDFで見た場合P.93です)
 http://www.tse.or.jp/rules/regulations/2-6-1.pdf



というわけで、上記の記事を読んだとき、


おいおい~、東証はどう判断するんだろ??


と素朴に思ったわけです。


今回、改めて条文を見てみますと、


「ただし、株主及び投資者の利益を侵害するおそれが少ないと当取引所が認める場合は、この限りでない。」


と一応、例外規定が設けられていはいますが・・・。


するってぇと、減資した後から考えて、公的資金を注入(第三者割当により企業再生支援機構が再建に乗り出す?)することは株主及び投資家の利益にかなっている、というように判断するんでしょうか。


一般に、東証さんはいろんな不祥事が起きたときに、一連の流れで判断・解釈して改善報告書等の徴求をしているように思うんですが。

だとすると、減増資という一連のスキームは、JALを破綻させないためにとっているものであって、株主及び投資家の利益に合致するんだ、という説明をするんでしょうか。


うぅむ。

どう考えても、いったん減資を行なうとした時点で、株主責任を問われた現株主にとっては、利益を侵害しないとはいえないように思われます。


どちらにしても、ここまでくると、民主党政権のメンツやら国民感情やら、いろんなものが混ざり合って超法規的説明がなされそうな気もしてきますから、怖いものです(^^;


しかし、何らか論拠をつけないと、東証が8/24から導入したこの規制が、いきなり尻抜けになってしまいます。

どうするんだろ・・・。


メディアではいろいろ年金債務のことが説明されているので、ここでは触れませんが、あらためてJALの連結貸借対照表を見てみても、株主優待引当金やマイレージ引当金らしきものは計上されていません。


クレディセゾンでは、永久不滅ポイントを導入しており、2009/3月期には535億円のポイント引当金 を計上しています。
また、Tカードでおなじみのカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)では89百万円のポイント引当金 を計上しています(意外に少ないんですね~!)

この辺のJALの会計処理も気になるところです。
マイレージなんて、言ってみれば、簿外負債といってよい性格のものですからね。


興味を持って、今後の動向を見守りたいと思います。



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