第1四半期決算短信の開示状況 | IR担当者のつぶやき

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上場企業に勤務する公認会計士の、IR担当者として、また、一個人投資家としての私的な「つぶやき」です。

ときどきIR担当者的株式投資の視点も。

10月の半ばに東証から、第1四半期(1Q)の四半期決算短信の開示状況について、集計結果が公表されていました(10/14)。

公表された当初に書こうと思っていたのですが、連休中でネタも少ないもので、ずいぶん前の話ではありますが、書き留めておこうと思います。


ベースの文書はここにあります。


■東証 四半期開示の状況

 http://www.tse.or.jp/rules/kessan/quarter/q-kaiji/


調査対象は、東証1部・2部・マザーズの3月決算会社1,785社。


Ⅰ 開示所要日数


【全体所要日数】


34.7日


東証では、四半期業績の速報性を重視して、30日以内の開示を要請しています。

前回の第1四半期決算短信の平均的な開示日数は、上記のとおり34.7日でした。

ちなみに前年同期の「平成20年3月期第1四半期」における平均開示日数は33.4日です。


今年は、金融商品取引法に基づく四半期報告書の提出も同時に求められており、四半期会計基準やらEDINETタクソノミの設定やら、同じ四半期とはいえ、何かと新規に注意しておくべきことが多かったことから、若干、開示まで時間がかかる結果となったのではないかと思われます。


今まで、1Qは完全に監査対象外(とはいっても、監査っぽいことはやってくれていましたが)だったのが、四半期についてはレビュー対象となったことから、今まで監査法人とは無関係に公表していたような会社(あるのかな、そんな会社)がレビュー終了を待つことになった結果、数日開示が遅くなったようなケースもあることでしょう(その場合でも、レビュー対象は四半期報告書であって、四半期決算短信はレビュー対象ではないですけどね。そうは言っても、一応、両方見てくれるのが普通かと思っていますが)。


市場別には、こんな感じです。


東証1部: 34.5日 (前年1Q 33.1日)

東証2部: 35.5日 ( 〃 34.8日)

マザーズ: 35.4日 ( 〃 38.1日)


結果として、今年は市場別には大差ない結果となっていますが、マザーズ上場会社については早期化が図られています。

これは、マザーズ上場会社にこれまで求めていた「四半期財務・業績の概況」(去年までの四半期開示の様式です)では、他市場よりも詳細な開示を求めていたものを、今年から他市場と同様の開示レベルとしたためであろう、と解説されています。


業種別平均開示日数が掲載されていますから、自社が属する業種がどの程度で開示しているかの平均値を知りたいときには、ぜひご参照ください。



【決算発表日から四半期報告書提出までの日数】


8.1日


東証1部: 8.3日

東証2部: 7.5日

マザーズ 8.0日


意外に東証2部のあっさり加減が目を引きますねぇ。

ホントは、内容があっさりしているということとは無関係ですが(笑)


別途、日別の集計表がついているのですが、ざっと見渡すと、なんと、決算発表と四半期報告書の日数差がないという会社が200社と1番多くなっています。

1日差: 105社


6日差: 141社

7日差: 100社

8日差: 117社


13日差: 129社

14日差: 156社

15日差: 109社


てな感じで、16日差になると43社と激減します。

当社もそうでしたが、7/30決算発表、8/14四半期報告書提出、というパターンだと上記の156社の中に入るんでしょうね。


しかし、決算発表(決算短信の公表)と四半期報告書の提出が同時というのは、開示実務から言っても、結構ハードですね。

確かに、四半期報告書のEDINET提出は、事前に仮登録を済ませて、提出用ファイルにエラーがないことを確認しておけば、実際には、本登録をポチッとクリックするだけなので、たいしたことないといえばたいしたことない作業ですけど。

では、決算発表はいつやるのか?というと、引け後です、ということになると、EDINET提出まで2時間程度しか余裕がないことになり、その間、EDINETに負荷がかかって登録作業が完了しなかったりするリスクを負うことになり・・・。

心配し始めると、キリがないっす。


東証のコメントでは、決算短信の速報性を重視して、四半期報告書よりも早めに出してほしい旨の記述が見られました。



Ⅱ サマリー情報の開示状況


【配当予想の開示状況】


配当予想については、四半期配当を行っていなくても、欄だけは用意されていて、今年から省略できなくなっています。

従来どおり、特定の金額を記載している会社は、1,572社と全体の88.1%にのぼります。

レンジ方式で記載している会社が8社あったということです(どこだろう・・・)。


【連結業績予想の開示状況】


1Q時点において、2Q累計(従来の中間決算予想)と通期予想を開示している会社は、1,712社と全体の95.9%を占めます。

これに対して、通期の業績予想のみ記載が42社、2Qのみ記載が4社、業績予想を記載しない会社が25社ありました。

業績予想を記載しない会社の場合でも、その合理的理由、開示が可能となった時点で速やかに開示する旨及びその時期の見込みや、業績予想のために有用と思われる基礎データ(販売単価の変動状況、販売量見込み、重要な固定費の金額など)を開示している例があるとのことです。


なお、1Q時点で業績予想の修正の要否について、検討を行っていない場合には、サマリー情報の「業績予想の適切な利用に関する説明、その他特記事項」の欄にその旨を記載せよ、ということになっているらしいのですが(^^; 

記載のない会社が1,769社(99.1%)と、ほとんどといってよい状況だったようです。

かくいう私も、もはや今となっては、そんなこと書いてあったっけ?という状況でございます(笑)



Ⅲ 定性的情報・財務諸表等の開示状況


【定性的情報(経営成績)の開示状況】


定性的情報について、文章説明・数値ともに全社・セグメントごとに記載している会社は1,031社(57.8%)

全社の状況のみ数値を用いて説明している会社が670社(37.5%)と、このあたりでほとんどを占めています。


数値をもちいずに全社やセグメントの状況を説明している会社があわせて11社あります。

ヲイヲイ、そんなアバウトなことで大丈夫かぁ・・・。


【会計処理の原則・手続、表示方法等の変更】


今期は、いろいろと新規適用の会計基準がありますね。

記載された内容としては、次のとおりです。


当期から「四半期会計基準」等を適用: 1,712社(95.9%)

当期から「リース会計基準」を適用: 876社(49.1%)

当期から「棚卸資産の会計基準」を適用: 1,379社(77.3%)

当期から「在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」を適用: 796社(44.6%)

当期から「固定資産の耐用年数」を変更: 408社(22.9%) など


【キャッシュ・フロー計算書、セグメント情報】


キャッシュ・フロー計算書、セグメント情報の記載は任意とされているとのことですが、


キャッシュ・フロー計算書: 1,423社(79.7%)

セグメント情報: 1,147社(69.6%)


の会社が記載しています。


Ⅳ その他の開示状況


その他の有用な情報として、次のような情報が開示されています。


生産、受注及び販売の状況: 419社(23.5%)

四半期説明会資料: 73社(4.1%)

設備投資、減価償却費、研究開発費など: 14社(0.8%)

その他の情報: 285社(16.0%)


具体例としては、他にこんなものが。


売上高明細表(事業分野別、品目別など)

重要な事業の状況、経過に関する説明

従業員の状況

前年同四半期比較資料

損益に関する基礎データ(会員数の推移、為替レート、原料単価など)

事業等のリスクの説明

経営指標


全体としては、その他の開示状況はまだまだ、という感じがしますね。

徐々に、四半期決算短信の作成作業がルーティーン化して、余裕が出てきたら、開示の充実が図られていくのでしょうか。

そうなるといいですね。



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