先日、USENの臨時株主総会が行われました。
日時: 8/28(木)
場所: 文京区 JCBホール(東京ドームシティ内、JR線・都営三田線 水道橋駅)
臨時株主総会の議題は、USEN(4842)と子会社のインテリジェンス(4757)の株式交換契約の承認の件がメインで、ほか、これに伴う定款変更および取締役2名選任の件です。
今回のUSENとインテリジェンスの株式交換は、去る7/1に発表されています。
■株式会社USEN と株式会社インテリジェンスの株式交換の基本合意書締結に関するお知らせ
http://www.usen.com/admin/corp/news/pdf/2008/080701_1.pdf
2006年7月にUSENはインテリジェンスを連結子会社化しています(持株比率37.64%)。
株式交換しようとした目的は、7/1のニュースリリースでは次のように説明されています。
・取引関係のなかで、妥当な取引価格の決定等、利害関係が衝突する場面が増え、事業シナジーの最大化のうえで問題が生じてきていたこと。
・次年度よりJ-SOX、内部統制監査が導入され、上場管理コストの増大が予想されること。
こうしたことから、親子上場関係を回避するために、株式交換を行ってインテリジェンスをUSENの完全子会社にすることとした模様です。
これにより、インテリジェンスは9/24をもってJASDAQを上場廃止になる見込みだとされました。
■株式会社USENと株式会社インテリジェンスの株式交換契約締結に関するお知らせ
http://www.usen.com/admin/corp/news/pdf/2008/080710_1.pdf
上記のリリースでは、株式交換契約締結により、株式交換比率が示されました。
USEN 1 : インテリジェンス 238
つまり、インテリジェンス株1株につきUSEN株238株が交付されるということになります。
なお、USENが保有するインテリジェンス株157,541株に対しては、割当交付しないこととされています。
また、インテリジェンスの発行済み株式総数(5/31現在)は418,502株ですが、自己株式が49,322株あり、これを除いた369,180株を基礎として計算すると、USENの新株発行数は50,370,082株(※)とされました。
(※) (発行済株式数 418,502 - 自己株式数49,322) - USEN保有株 157,541 = 211,639株
211,639株 × 238株 = 50,370,082株
USENの単元株式数は10株なので、10株未満の単元未満株式数が交付されるインテリジェンス株主に対しては、株主名簿管理人である三菱UFJ信託銀行が代行して、単元未満株式の買取制度が用意される予定と発表されています。
USENの臨時株主総会の招集通知は、USENのIRホームページに掲載されていませんので、全貌を入手することはできません(招集通知の訂正文は掲載されているのにネ)。
断片的な素材は入手できます。
招集通知(株主総会参考書類)は、概ね以下の構成です。
第1号議案 インテリジェンスとの株式交換契約承認の件
1.株式交換を行う理由・・・7/1のリリースとほぼ同じです。
2.株式交換契約書の内容・・・USENのHPからは分かりません。EDINETで、7/1の株式交換リリースと同時に提出されている臨時報告書や7/11の訂正臨時報告書を見ると、ほぼ株式交換契約書を見ることができます。
3.会社法施行規則第193条各号(第5号および第6号を除く)に掲げる事項の内容の概要
(1) 会社法第768条第1項第2号および第3号に掲げる事項についての定めの相当性に関する事項
具体的には、完全親株式会社が株式交換に際して、完全子会社の株主に対して、その株式に代わる金銭等を交付するときは、その金銭等について、次に掲げる事項を定めなければならないとし、その金銭等が完全親株式会社の株式であるときは、当該株式の数またはその数の算定方法、ならびにその完全親株式会社の資本金および準備金の額に関する事項
このあたりの長々とした説明は、株式交換契約締結リリース(7/10)において、どの証券会社に株価算定を依頼して云々・・・という説明の部分に該当します。
(2) 会社法第768条第1項第4号および第5号に掲げる事項についての定めの相当性に関する事項
具体的には、新株予約権についての処理やその相当性についての説明です。
(3) 株式交換完全子会社の最終事業年度に係る計算書類等の内容
具体的には、インテリジェンスの2008年2月期の計算書類が添付されています。
(4) 臨時計算書類関係・・・該当なし
(5) 株式交換完全子会社の最終事業年度の末日後に重要な財産の処分、重大な債務の負担その他の会社財産の状況に重要な影響を与える事象の内容
招集通知では、インテリジェンスにおける①自己株式の取得(2008/4月~)、②グローバル・アソシエイトHDの取得、③本件株式交換 について記載されていました。
(6) 当社における最終事業年度の末日後に重要な財産の処分、重大な債務の負担その他の会社財産の状況に重要な影響を与える事象の内容
けっこう、いろいろ書いてあります。
・BMB社の株式交換による完全子会社化
・UCOM社とメディア社との合併
・インテリジェンスによる固定資産の譲渡と特別利益の発生
・シンジケートローン契約
・ギャガコミュニケーションズに対するのれんの減損
・コンテンツの償却方法変更および一時償却費の計上
・映像関連事業の一部撤退に係る損失計上およびのれんの減損
→これは映画の新規買付、制作、出資等の事業から撤退することとしたため、事業撤退損失や保有コンテンツに対する損失計上をしたものです。
・インテリジェンスに対するのれん償却費の計上
→既存株主さんはいろいろ言いたいことがある部分かもしれません。インテリジェンスの株価が著しく下落したことに伴うインテリジェンス株の関係会社株式評価損の計上です。
第2号議案 定款一部変更の件
第3号議案 取締役2名選任の件
これは7/29のリリースに書いてあります。
■臨時株主総会の日程、付議議案決定に関するお知らせ
http://www.usen.com/admin/corp/news/pdf/2008/080729.pdf
で、結果としては下記のリリースにあるように、この株式交換は臨時株主総会で承認されました。
■USEN 株式交換契約に関する臨時株主総会の承認可決についてのお知らせ
http://www.usen.com/admin/corp/news/pdf/2008/080828.pdf
が、例年のUSENの株主総会のように、相変わらず、株価の低迷について、ビジネスモデルについて等、USEN既存株主の不満はまだまだくすぶっている、という雰囲気でした。
定時株主総会のように、ビデオを使った事業報告はなく、株式交換の目的や、インテリジェンスを傘下におさめた後のホールディング・カンパニーへの移行の目論見などを、簡単なスライドを使って説明した後、すぐに質疑応答に入りましたので、かなりたっぷり質疑応答の時間がとられたという印象です。
具体的には14名、採決を含めた終了時間は12時10分過ぎだったかと思います。
① インテリジェンスの上場維持コストの話が出ていたが、どの程度か。
また、将来のシナジー効果はどの程度か?
USEN自体、東証一部上場を目指すとしてきたが、いまだ実現していない。インテリジェンス子会社化後のHDも東証一部上場を目指すというが、具体的にはいつ頃なのか?
→インテリジェンスの上場維持コストは、約1億円との鎌田和彦インテリジェンス社長からの説明がありました。
② 総会会場の分かりづらさ(後楽園から来た場合)。
なぜ株式交換なのか、TOB等はしないのか。
招集通知でインテリジェンスの業績はよくわかるが、USENの業績がわからないではないか。
HDに移行する際にまた株式交換を使い、USEN株主は不利を被るのではないか?
→招集通知の記載は会社法にのっとったもので、USENの業績の記載までは求められていない、とのUSEN社外監査役(弁護士)からの説明がありました。
また、HDへの移行の際は、インテリジェンスを含めた各事業をぶら下げる形を想定しており、株式交換を使うつもりはないとの説明でした。
③ 単元の括り直しを検討してはどうか。株式交換で新株が増えるのか。GyaOで総会を放送しているが、レビュー等を反映してほしい。
④ 取締役は男性ばかりだが、女性取締役も導入してはどうか。
HDの名称を公募するなどしてはどうか。
GyaO Nextを見てみたが、なかなかよい。定時総会等でのプレゼンテーション等を望む。
⑤ インテリジェンス鎌田社長の日雇い派遣に関する発言が物議をかもしたようだが、社長の真意を聞きたい。
→これについては、派遣協会会長としての発言であったと説明されました。
上記の発言そのものではありませんが・・・
■人材派遣協会 会長メッセージ
http://www.jassa.jp/association/message.html
⑥ USENの株価は総会前日で308円、3年前は3,000円だった
会社の見通し、宇野社長の覚悟・決意を聞きたい
→宇野社長、USENの株価が牛丼やハンバーガーの値段と揶揄されることもあり、たいへん残念。松やも牛丼の値上げをする時代なのだから、USENの株価も上げたいとしていました。
⑦ インテリジェンスとのシナジー効果を目指すとしているが、「an」のような紙媒体は伸びないのではないか?ケータイで派遣登録者の登録を集めるような仕組みはないのか。
⑧ 純利益予想が従来は公表されておらず、非常に分かりづらく、他社よりも見せ方として(収益予想の情報が)少ないのではないか?
⑨ 有線放送が好きで株主になったが、最近、有線の質が落ちてきたのではないか?
⑩ インテリジェンスに500億円投資したが、2年で400億円もの損失を出したのか?下方修正だけではすまないのではないか
インテリジェンスの貸し株がかなりあったと思われるが、USENはそれでかなり儲けたのか。
USENとしては、インテリジェンスの株価を下げておいて統合するつもりだったのではないか。
宇野社長は、20年で辞めるとか、45才までだとか日頃公言しておられるが、社長業についてどうするつもりなのか?
→貸し株していたのは事実だったようですが、保有してもらう約束だったとしていました。また、財務バランスの改善のため、負債の削減が課題だったという趣旨のようです。
インテリジェンスの株価を下げる目的などはなく、意図的にやったとしたら、当然USENの株価も(減損で)下がることになるので、そんなことはしない。
宇野社長、8/12で45才になられたようで(笑)、経営管理者としての個人的な考えを述べているのであって、会社にしがみつく考えはない、としていました。
⑪ 時価総額の推移を見せてほしい。統合後のインテリジェンスの業界地位について。インテリジェンスを傘下におさめたUSENとして、今後どのような会社を目指すのか、宇野社長としての哲学を聞かせてもらいたい。
⑫ 人材派遣は若い人だけではない。新任取締役を含めて14名になるが、機動性を保てるのか。
多額の損失計上についての責任(辞任、報酬返上等)について。取締役・監査役の責任限定契約の記載はどうなっているのか。
⑬ 宇野社長がインテリジェンスを傘下におさめてやりたいことは何か。外国人取締役がいるが、GyaOへの貢献はいかに?
⑭ インテリジェンスとの統合はシナジー効果が薄く、失敗するのではないか?どの程度のコストで、シナジー効果はどれくらい、回収期間は?
GyaOに経営資源を集中しているというが、You Tubeやニコニコ動画に負けているではないか。経営資源の集中のしかたが足りないのではないか。
USENは有利子負債が多額にあるが、不動産業界が融資引き上げ等で苦境に陥っているが、USENのリスクヘッジの方法は?
→動画違法投稿サイトには広告がつきづらい。無料モデルから有料モデルに転換するのは容易なことではないが、GyaOは当初から有料モデルでやっている。
→そうしたキャッシュ・フローを生み出せる力があることが最大の強み。有利子負債も3年で半減を目指す。現状のCF水準ならば、十分返済可能。突然の融資引き上げはない(←コミットメントライン契約してますからね)。
まぁ、長々と書きましたが、株価が低迷している会社が、大幅株価下落の子会社を完全子会社化する、というスキームの中で、どのような株主の声が上がるのか、非常に参考になるケースではないでしょうか(私自身、大変参考になりました)。
このくらいの質問が出て当たり前だと思います。
(逆に、テンプスタッフとピープルスタッフの経営統合の株主総会で質問が1つも出なかったというのは異常です。ハッキリ言って、株主の質を疑います。)
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