いただいたコメントに触発されて、ドトール・日レスの統合効果について、調べてみました。
Ⅰ.統合前の業績
【ドトール】(2007/3期 決算短信 http://www.doutor.co.jp/ir/jp/report/tanshin/19/200704_ann_cons.pdf )
売上高 68,596(百万円)
売上原価 34,486
売上総利益 34,110
販管費 29,772
営業利益 4,337 (営業利益率 6.3%)
【日本レストランシステム】(2007/5期 決算短信 http://www.n-rs.co.jp/ir/pdf/settlement_0707.pdf )
売上高 29,109(百万円)
売上原価 6,669
売上総利益 22,440
販管費 16,349
営業利益 6,091 (営業利益率 20.9%)
Ⅱ.統合後の業績と比較すべき前期業績
基本的には両社の業績を単純合算する必要がありますが、気をつけたいのは、統合後のドトール・日レスHDの決算期が、もとの決算期とはまったく異なり、2008/2期になっていることです。
さらに、統合後の決算短信では、両社が一緒になっていますから、セグメント情報で見てあげると、比較的わかりやすいと思います。
とくに日レスは、統合前からセグメントの区分がなく、すべて単一のセグメントで開示しています。
統合後のセグメント情報では、
■ドトール・日レスHD 2008/2期決算短信(セグメント情報はP.25)
http://www.dnh.co.jp/ir/pdf/result_080415_dnh.pdf
小売事業・レストラン部門・・・日レス
〃 ・喫茶部門・・・・・・・ドトール
卸売事業・・・・ドトール
その他・・・・・・ドトール
と推測されます。
したがって、前年同期比の比較をするためには、
ドトール・・・2007/3期-2007年3月+2006年3月 という調整が必要ですが、ドトールの月次開示を見ても、増減率でしか開示されていませんので、売上や営業利益を調整することができません。
1ヵ月分のズレでもありますので、2007年3月が重複にはなりますが、2007/3期の12ヶ月と2008/2期の12ヶ月を比較することにします。
日レス・・・2007/5期の3Q(2006年6月~2007年2月)+2006/5期の4Q(2006年3月~2006年5月)
2006/5期の4Qは、2006/5期決算短信-2006/5期の3Q累計で算出できます。
こうした考え方に基づいて、各社の統合後の業績と比較する前年同期を算出すると、こうなります。
(便宜上、消去・全社分はドトール側に賦課しています。)
【ドトール】 2007/3期
喫茶部門 卸売事業 その他 計 消去・全社 合計
売上高 27,778 41,232 1,124 70,146 △1,549 68,596
営業費用 26,040 36,073 1,082 63,196 1,062 64,258
営業利益 1,748 5,159 41 6,949 △2,612 4,337
【日レス】 2006/5期 4Q 2007/5期 3Q累計 合計
売上高 7,257 21,601 28,858
営業費用 5,645 17,037 22,683
営業利益 1,612 4,563 6,175
ゆえに、ドトール・日レスの2008/2期と比較すべき前年同期比のセグメント情報は、次のとおりです。
【ドトール・日レス 2007/2期(仮) セグメント情報】
レストラン部門 喫茶部門 卸売事業 その他 計
売上高 28,858 27,778 41,232 1,124 99,002
営業費用 22,683 26,040 36,073 1,082 85,878
営業利益 6,175 1,748 5,159 41 13,123
消去・全社 合計
売上高 △1,549 97,453
営業費用 1,062 86,940
営業利益 △2,612 10,511
Ⅲ.統合後の業績(2008/2期)
では、統合後のドトール・日レスHDとしての業績は、いかがだったのでしょうか。
レストラン部門 喫茶部門 卸売事業 その他 計
売上高 30,022 29,652 41,920 1,205 102,800
営業費用 24,070 27,611 36,692 1,207 89,583
営業利益 5,952 2,040 5,227 △2 13,217
消去・全社 合計
売上高 △1,486 101,314
営業費用 1,726 91,309
営業利益 △3,212 10,004
○全体
(消去・全社考慮前)
売上高 +3,798 103.8%
営業費用 +3,705 104.3%
営業利益 +94 100.7%
(消去・全社考慮後)
売上高 +3,861 104.0%
営業費用 +4,369 105.0%
営業利益 △507 95.2%
消去・全社考慮前では何とか1億円弱の増益を保っていますが、消去・全社を考慮すると、5億円ほど減益になっています。
○ドトールの業績(2007/3期 vs 2008/2期)
1ヶ月重複ではありますが、ドトールの業績を比較してみます。
日レスを除いた2008/2期のセグメント業績は、次のとおりです。
レストラン部門 喫茶部門 卸売事業 その他 計
売上高 - 29,652 41,920 1,205 72,777
営業費用 - 27,611 36,692 1,207 65,510
営業利益 - 2,040 5,227 △2 7,265
消去・全社 合計
売上高 △1,486 71,291
営業費用 1,726 67,236
営業利益 △3,212 4,053
消去・全社を加味する前の単純合算ベースでは、こうです。
売上高 +2,631 103.8%
営業費用 +2,314 103.7%
営業利益 +316 104.5%
消去・全社をドトールにすべて賦課すると、こうなります。
売上高 +2,695 103.9%
営業費用 +2,978 104.6%
営業利益 △284 93.5%
つまり、ドトール部門は、各営業部門については順調に売上を伸ばし、売上原価もそれに見合ったものであった結果、営業利益を3億円ほど増加させることができました。
一方、全社まで加味すると、約6億6,000万円ほど営業費用が増加しており、この部分が利益を押し下げたといえると思います。
全社費用をドトールに全部つけてしまってますから、ドトールの本社費なのかHDの費用なのかは不明ですが、まぁ統合に伴って発生した費用を含んでいるといってよいのでしょう。
○日レスの業績(2007/2期(仮) vs 2008/2期)
仮に算出した2007/2期の日レスの業績と、2008/2期のセグメント情報のうち日レス部門とを比較してみます。
(2007/2期) (2008/2期)
日レス レストラン部門
売上高 28,858 30,022
営業費用 22,683 24,070
営業利益 6,175 5,952
ということで、
売上高 +1,164 104.0%
営業費用 +1,387 106.1%
営業利益 △223 96.4%
となり、日レス部門は本社費用等を除いて考えても、2億2,000万円の減益となりました。
合算値での統合後の業績予想に対しては、どうだったでしょうか。
■株式会社ドトール・日レスホールディングスの平成20年2月期業績予想について
http://www.doutor.co.jp/ir/jp/news/pdf/20070920.pdf
統合後の業績予想と実績値対比は、次のとおりです。
業績予想 実績値 計画差
売上高 101,400 101,314 △68
営業費用 90,700 91,309 609
営業利益 10,700 10,004 △696
売上は、結構いい線行っていたのに・・・、惜しいですね。
総会でも統合効果が出ていないという点で、株主さんから厳しい指摘があったようですが、結果としては確かに不満の残る業績となってしまっているかもしれません。
ドトールは売上も営業費用もほぼ同率の増加ですから、しっかり利益を稼いでいますが、高い営業利益率を誇った日レスのほうで営業費用が嵩んでしまう傾向になったというのは、どのような変調をきたしているのか、経営陣は丁寧な説明を要すると思われます。
■ドトール・日レスHD 2008/2期 決算補足説明資料
http://www.dnh.co.jp/ir/pdf/supplement_080417.pdf
決算補足説明資料を見ても、直営既存店の前期比は出ていますが、ドトールと日レスに分けた前年同期比や売上原価の主な項目の前年同期比がどうだったかの開示がありません。
原料高や原油高(=燃料費?)の影響がどのように業績に響いたのか、さっぱりわかりません。
販管費も人件費とその他だけですので、賃借料がどうか、配送用のガソリン代が上がっているのかどうか等、各種の費用がどう上昇しているのか、ちょっと伝わってこないですね。
統合1年目で計画倒れというのはかっこ悪いかもしれませんが、終わった期でどこがよい点で、どこが原材料費等の外部要因で悪かった点か、明らかにしないことには、せっかく発表した中期計画も、前提が怪しくなってしまいます。
外部要因はしょうがないじゃないですか。
もう少し、業績の内容が分かるような開示をお願いします。
例えば、セグメント情報から下ろしていって、ドトール部門(小売、卸売、その他)とレストラン部門の前年同期比を明示する、ドトールの本部費用とHDの本社費を分けて、HDの本社費は追加でかかるけど、統合効果でこれだけシステム統合してコストを下げたとか、配送を共通化して下げたとか、プラス・マイナスを対比して補足説明資料にするとか、工夫の余地はあるかもしれませんよ。
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