明治-ポッカ、サントリー-まい泉、食品業界再編続く | IR担当者のつぶやき

IR担当者のつぶやき

上場企業に勤務する公認会計士の、IR担当者として、また、一個人投資家としての私的な「つぶやき」です。

ときどきIR担当者的株式投資の視点も。

1/17、サントリーがとんかつの「まい泉」を買収すると発表しました。

また、1/15には、明治製菓がポッカに20%出資すると報道されています。


先日のロッテとコージーコーナー のように、年明け早々、食品業界での再編・M&Aが続いています。



■サントリー 井筒まい泉株式会社の全株取得について

 http://www.suntory.co.jp/news/2008/9995.html


サントリーの上記リリースでは全株取得とだけ開示していますが、日経新聞の報道によると、2月に創業一族から95%買取り、3年以内程度で残りも取得し、完全子会社とするという計画だそうです。

まい泉は1965年設立で、デパートの食品売り場など、総菜店が38店、レストランが7店あるといいます。

2007年10月期の売上高は72億円、経常利益は2億5,000万円、買収額は数10億円とのこと。

まい泉の小出社長(77)は代表権のある会長に退き、サントリーから社長を派遣するそうです。


まい泉、ちょっと検索してみましたが、青山本店でとんかつ食べた!系のグルメブログが多く、本社というか会社自体のHPにたどり着くことができませんでした(雰囲気からすると、HPなさそう・・・汗)。


実は、まい泉のカツサンドは、カミさんが大好物でして、デパ地下で見つけると、トンカツよりもカツサンドのほうを買うという、私には到底理解不能な行動をとります。

私は、トンカツお持ち帰りで、ご飯モリモリ派なので音譜



昨日は、EVとかEBITDAに触れましたが、まい泉の買収に関して、両社とも非公開企業なので、価格の妥当性についてのリリースがないため、この買収が割高なのか安い買い物なのか、ちょっと検討がつきません。


サントリーは、傘下にファーストキッチンやプロント、サンドイッチのサブウェイなどのほか、「響」や「燦」などを運営するダイナック(東証2部・2675)といった外食事業を展開しています。


以前、ビール各社の戦略を検討したときにサントリーの決算資料を見ましたが、サントリーは非公開なのに決算短信を作成して公表しています。


■キリン、協和発酵を買収で、ビール各社の戦略は

 http://ameblo.jp/ir-man/entry-10052274867.html


再度、サントリーの決算短信を見ると、2006年12月期のセグメント情報では、「その他」事業のなかに外食事業が入っているとされます。

同期の総売上高1兆4,139億円のうち、その他事業の売上高は1,709億円です。

新聞報道では、2007年12月期の外食事業売上高は730億円であり、全体の5%を占めるのだそうです。

中期的には、これを1,000億円にまで増やしていく方針とのこと。

もちろん、既存の外食事業と連携して、食材の共同調達や商品の共同開発に取り組むとともに、持ち帰り弁当や惣菜に強みをもつまい泉のブランドを活かして、中食事業に参入していく意向のようです。


一方のまい泉ですが、決して事業が立ち行かないわけではなく、きちんと利益を出していますので、サントリーの傘下に入った理由が気になるところです。


記事では、小出社長に後継者がいなかったため、とされているようです。

先日のコージーコーナーも、社長が82歳とお年を召しており、やはり後継者難ということでロッテ傘下入りを選んだとのこと。


どこも事情は似たようなものなんですね。

外食産業は素人目にも競争は厳しそうですし、このところの原料・燃料高というのも経営を圧迫しつつあると想像されます。

もともと後継者難という事情がずっと経営者の心に重しになっていたとすれば、事業が堅調なうちに売却して、自分の老後資金を作りつつ、自分が築き上げたブランドを良い形で残せるとすれば、まずまず、良い人生だったと思えるものなのかもしれません。


ただ、社長が(言い方は悪いですが)大手に身売りを決めてしまった会社の他の経営陣にとっては、面目なしあせるという気もします。社長を助けて何十年とか、という番頭格の方もいるのかもしれませんが・・・。

社長のおメガネにかなわなかったと。ちょっとかわいそうな・・・。




さて、一方、明治製菓とポッカ。


■明治製菓株式会社と株式会社ポッカコーポレーションの資本業務提携に関するお知らせ

 http://www.meiji.co.jp/corp/news/2008/0115.html


明治製菓は上場しています(2202)ので、上記のリリースはかなりしっかりと、資本提携に至った経緯・位置づけが書き込まれています。


ポッカは、2005年秋に投資ファンドのアドバンテッジパートナーズの支援により、MEBO(Management Employee Buyout: 経営陣と従業員による買収)を実施し、上場廃止の道を選んでいます。


■ポッカ 公開買付に関するお知らせ(2005.9.21)

 http://www.pokka.co.jp/company/ir/2005/pdf/050921_03_01.pdf


アドバンテッジパートナーズの当時のリリースはこちら。

■AP 株式会社ポッカコーポレーション株式の公開買付けについて

 http://www.advantagegroup.co.jp/news/newsrls/05082201.html


当時の状況は、こちらが分かりやすかったです。


■M&A進行形 第5回 ファンド活用したMBO

 http://www.nikkei.co.jp/china/special2/20050825cc88p000_25.html



報道によれば、ポッカの直近2007年3月期の業績は、連結営業利益が37億円(前年同期比3.3倍ビックリマークとされ、アドバンテッジによる事業再生・企業価値向上は、順調に行っていると考えてよいのでしょう。


それにしても、2005年9月にMBOが成立したわけですから、締まった期で2006年3月期ですよね。

で、2007年3月期にたった1年で営業利益を3倍以上に増やすなんて、すごくありませんか!?


APのサイトをみると、ポッカへの投資時の売上高は980億円とのことですので、当時の営業利益が約10億円だとすれば、営業利益率は1%。

この水準から3倍にするのは投資ファンドにとってはたやすいのかもしれませんが、1年で結果を出してるところがすごいなぁと思います。


ポッカは2009年3月期をメドに再上場したい意向とのことですので、


・成長を加速するためのパートナーがほしかった

・同業の大手飲料メーカーではない安定株主がほしかった

・再上場するまでアドバンテッジがごっつり保有していると、儲け過ぎ!? との批判が高まるので、早めに保有比率を落としつつ、早期のExitを探る


などの思惑があったのではないかと、勝手に推測しています。


日経金融新聞の試算では、MBO当時のポッカの時価総額が200億円、MEBOした時価総額は250億円、アドバンテッジが内部収益率(IRR)30%で回したと仮定した場合の単純計算値として、明治製菓への売却額は100億円近くになるとのことです。


250億の20%、50億円をMBOから1年半の期間で倍の100億円で売った、と考えてよいのかな。

けっこうな利回りですよね。


すごいなぁ。どんな魔法を使ったんでしょうね。


街中では、以前よりもむしろポッカの自動販売機は見かけなくなったような気がするんですが・・・。

売上は上がっているんでしょうか。


新製品や新販路など、売上が増えていないのに、コスト抑制で利益を向上させて、企業価値が上がったでしょ、ということでなければよいのですが。

アドバンテッジがとった手法までは、未調査です。

何を調べたら分かるかな。すこし時間かけて調べていってみようと思います。



これら食品業界は、まだまだ再編が続くと思われます。

まだスティール・パートナーズが投資している会社もありますし、話題にこと欠かない2008年になりそうですね。


この先も楽しみです。



--

このブログがお役に立ったら、ポチッとクリックしてください。


人気blogランキングへ


ファイブスタイル ブログランキング