経営計画作りや来年度予算編成などに関わっていると、各事業部門の方とのやりとりを通じて、「成長とは何か」を考えさせられることが多いです。
IR担当者の立場からすると、各事業部門が意欲的なプランを練っていたり、実行に移していたりして、その成果が1年後とか3年後に、いくらくらいの売上/利益増となって実現しそうです、なんてことが言えるのでしたら、これは願ってもない嬉しい状況です。
しかし、一方で、振っても逆さにしても(笑)、なーんにも意欲的な計画が出てこない事業部門があるものです。
よりによって、そういう部門ほど、意外にアナリストや機関投資家が注目していたりするから、やっかいです。
必ずといっていいほど、アナリストや機関投資家から質問されるに決まっているので、先回りして、そういう事業部門の責任者に、どんな計画の腹づもりなのかヒアリングするわけです。
「別に。」
「特にこれといって、特別な計画とか、新規事業があるわけではありません。」
といった、素っ気ない返事が返ってきたりします。
改めて見ると、これまでの業績もシクリカルで、上がったり下がったり、それほど拡大しているわけでもなく、減少局面であってもどこまでも落ちていくわけでもなく。
む、む、む・・・
まかされた事業部門から、想定されるレンジの範囲内の利益を稼いでいるという意味では、極めて貢献度の高い部門(ないし責任者)といってもよいのでしょう。
新しいことは何もやらない。
冒険はしない(予算も、人もないので、やれない)。
でも、いいじゃない、ちゃんと利益を稼いでるんだし。
何か、問題でも
と言わんばかりの反応が返ってくると、正直、たじろぎます。
こちらはIR担当者。
いつも資本市場から、もっと成長しろ、来期は売上/利益は何%伸びるのか とせっつかれるのが仕事です。
そういう外界の状況を社内にフィードバックするのもまた仕事のうちです。
ところが、穴グマになったように、外界からの成長の要求を受付けない人がいる。
(読者の方からすれば、そんな責任者、代えればいいじゃない、と思われる方も多いでしょう。
しかし、往々にして、そういう人ほど代わらないもんです・・・。)
一方、やたら意欲的な数字を出してくる事業部門もあります。
ただし、数字だけ(笑)
いかにしてその売上/利益を達成するのか、どんな仕掛けを用意しているのか、何も語っていない計画数値。
心がこもっているとか、いないとか以前に、なんのためにそうした計画数値を要求されているのか、根本的にわかってないと思います。
あたかも、IRで発表しなければいけないから、数字がいるんでしょ と言わんばかり。
発表したら、どうやって実現するのか、どんな手を打つのか、その後、ずっとウォッチされ続けるんですよ。
つまり、自分が事業部門のトップとしてどんな経営をしていくのか、見られていくんだということが理解できていないようです。
社内的に言えば、そうした膨らまし粉でふくらましたような計画で、かりに達成できなくて計画未達で穴があいても、とくに咎められることもなく、降格・左遷があるわけでもないとすれば、みんな安心してバブルな計画を提出できるでしょう。
はぁ~~・・・・。
経営計画ひとつとっても、そこに人間模様が現れてくるので、単に数字の足し算だけではないイライラが募るわけです(笑)。
役員さんも、それなり。
耳ざわりのよさそうな売上の伸びと、利益の伸びが書いてあれば、とくに突っ込むわけでもなく、ニコニコしてる。
果たして、それが資本市場から期待されている水準なのかどうか。
もちろん、自社のファンダメンタルを無視して、市場から期待されている計画を作っても、実行は不可能なので、自社の状況はこうだから利益成長はこのくらい、と理解を訴えるのがIRということにもなります。
しかし、未公開企業であっても、ぬるま湯につかったような経営をしていたら淘汰される時代です。
ましてや、上場企業をや。
ウチはこのくらいだから、というスタンスで市場の期待に応えないとすれば、だんだん市場から見向きもされなくなることになるでしょう。
他にも成長企業はたくさんあるんだし、成長しない企業に誰もおカネを投資しようなんて考えません。
突き詰めれば、
成長とは、人の意欲である
と思わざるをえません。
経営者(社長)には経営者なりの、経営全般を俯瞰して、どの部門に資源を振り向けて売上/利益を伸ばすのか。
事業部門のトップには、自部門に与えられたリソース(ヒト・モノ・カネ・情報やブランド)を使って、どうやって売上/利益を伸ばすのか。
現状で成長が難しいなら、足りないリソースをどうやって補うのか。
単に社員を雇っても戦力になるまでに時間がかかるのですから、中途採用にするのか、新卒でいいのか、それともどこかの企業を買収してほしいのか。
事業部門のトップは、一人ひとりが経営者なんだというくらいの気迫が要求されると思います。
各部門で働く社員には、自分の与えられた仕事をいかに効率よく、ミスなく、進めるか。
空いた時間で、他の社員のフォローをするもよし、自分のレベルを高めるように自己投資するもよし。
いわゆるエクセレント・カンパニーには、トップから末端まで、自分は(当社は)成長するぞー というDNAが、すり込まれているのだろうなと思います。
IR担当者として、いろんな企業の経営や、その経営の結果としての財務数値を見たり聞いたりしている分を、せめてウチの会社の成長の糧として役立てる「触媒」として機能したいものだと思います。
ただし、人の意欲を引き出す施策、制度の整備は、会社のしくみの問題ですし、もっといえば、社長が社員と接して一人ひとりの意欲をかき立てているかどうか、なんてのはIRの業務外の領域です。
そこまでは面倒見切れないなぁ・・・。
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