ロジステックのTOB成立、上場廃止へ | IR担当者のつぶやき

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上場企業に勤務する公認会計士の、IR担当者として、また、一個人投資家としての私的な「つぶやき」です。

ときどきIR担当者的株式投資の視点も。

日本ロジステック(9323・JQ)のTOB(株式公開買付け)が成立しました。

経営陣は発行済株式総数の95%以上を保有することとなったようですから、JASDAQは上場廃止になるもようですね。


■NTS 株式会社による当社株式の公開買付けの結果に関するお知らせ

 http://ir.eol.co.jp/EIR/9323?task=download&download_category=tanshin&id=496230&a=b.pdf


ロジステックの鈴木雄吾社長が運営するNTS株式会社は、8/29にロジステックに対してTOBをかけてMBO(マネジメント・バイアウト)することを発表していました。


ロジステックも会社として同日、賛同意見を公表しています。


■当社株式に対する公開買付けに関する賛同意見のお知らせ

 http://ir.eol.co.jp/EIR/9323?task=download&download_category=tanshin&id=488067&a=b.pdf


ロジステックは、倉庫・運輸関連業を営んでおり、今から10年前の1997年にJASDAQに上場。

当時は比較的経営環境はまだよかったようですが、最近は物流業界の競争が激化し、受注価格の低迷・ガソリン等燃料費の高騰が業績を圧迫しているとのこと。


景気の回復に応じた荷動きも良いのかと思いきや、外資系物流企業国内大手との激突のあおりもあるようです。

先日も、プロロジスが松下ロジスティックすから全国物流施設を譲り受けるとのニュースが出ていましたね。


■プロロジス、松下ロジスティクスから全国17物流施設を取得

 http://www.prologis.co.jp/new/distribution/071002.html



ロジステックは、創業以来の提案型営業を推進するとともに、ローコスト・オペレーションの努力を続けていたとのことですが、厳しい経営環境から抜け出せていなかったのが現実だったようです。

そして、ついには、リリースにあるように、「近い将来において当社を取り巻く経営環境が好転する見通しが厳しいものであることも事実です。」と認めざるをえなくなりました。


そのため、同社の経営戦略(中長期的な経営の展開、社内体制の改革、経営資源の効率的活用および経費削減等)を実現し、企業価値の向上を達成するためには、知名度の維持、資金調達手段の確保、人材確保といった上場会社のメリットを生かしつつ業績を拡大し、持続的な企業価値の成長を達成することは難しいとの考えに至りました、としていました。


結果として、長期的に企業価値を維持・向上するためには、資本市場の短期的圧力に起因して求められる短期的な成果よりも中長期的な思考に立ち返り、経営者自身が自己責任において意思決定を行うことで、柔軟かつ機動的な経営判断が遂行できる「ガバナンス体制の再構築」と、当社の全従業員の「危機意識とモチベーションの向上」が必要であると考えたことにより、MBOに踏み切ることにしたということです。


(基本的に上記の経緯は、同社のリリースを引用していますが、苦しい経営判断の過程が赤裸々に語られていて、ちょっと胸を打ちました。)


ただ、ちょっと見得張っているのかな、と思えるのは、MBOにより非上場会社へ転換させることが、当社の企業価値を向上させるために最も実効的な方法である、と言っている部分です。


確かに表面的にはそう言わざるをえないし、私が同社のIR担当者だったとしても、そう書くでしょう。

しかし、リリースをさぁ~っと読んでいくと、社長の保有会社によるMBOであって投資ファンド等が絡んでいないように書かれているようですので、投資ファンドが手をいれることによって企業価値を高め、経営陣としては再上場によって資本市場に返り咲こうという計画が描けなかったのかな、とも取れます。


つまり、社長が泥をかぶるしかなかった、と。


いじわるな目線で見てしまうと、そんなふうに解釈できます。



さて、TOBの概要ですが、


・発行済株式総数: 6,672,000株(2007/3月末、自己株式108,500株含む)から

・経営陣保有株式数: 3,234,149株 と自己株式を控除した株数の過半数を考慮して、


NTSと経営陣の所有比率75%超を成立の条件としていました(1,689,000 株以上の応募があること)。


つまり、経営陣以外の大多数の株主の賛同を得られない場合には、MBOを実施しないという形にすることで、株主の意思を確認することとしていたわけです。


・FA(フィナンシャル・アドバイザー)は、主幹事の日興コーディアル証券。


・価格算定に当たっては、3方式を利用。

 市場株価方式: 410~428円

 DCF方式: 499~589円

 修正純資産方式: 531円


 このうち市場株価方式については、流動性が低く、十分に適正な株式価値が算定されたと考えられないとの理由で退け、DCF方式および修正純資産方式による499~589円のレンジの中から、買付価格561円としていました。


この561円という買付価格は、それぞれ以下のようなプレミアムが乗った価格と考えられます。


過去1 ヶ月の終値平均株価:422 円(プレミアム約33.0%
過去3 ヶ月の終値平均株価:407 円(プレミアム約37.7%
過去6 ヶ月の終値平均株価:390 円(プレミアム約43.9%


現株主さんにしてみれば、33%~43%ものプレミアムが上乗せされているのであれば、よほどのことがない限り、TOBに応じてしまうでしょうね。

月足チャートで2001年から見てみても、TOB価格を上回っていたのは、2005年7~8月の570~580円付近だけです。


そして、居残ってしまった株主に対しては、いわゆるスクイーズアウトを予定していることを、先のリリースでは明らかにしています。具体的には、


「本公開買付けが成立した後に、公開買付者(NTSのこと)は、


① 定款の一部変更をして対象者を会社法の規定する種類株式発行会社とすること、

② 定款の一部変更をして対象者の発行する全ての普通株式に全部取得条項(会社法第108条第1項第7号に規定する事項についての定めをいいます。)を付すこと、

③ 対象者の当該株式の全部取得と引換えに別個の対象者株式を交付することを付議議案に含む臨時株主総会の開催を対象者に要請する意向


を有しています。」としており、

具体的には、同リリースの続きで、


「対象者の株主には当該取得の対価として別個の対象者株式が交付されることとなりますが、対象者の株主で交付されるべき当該対象者株式の数が1株に満たない端数となる株主に対しては、法令の手続に従い、当該端数の合計数(合計した数に端数がある場合には当該端数は切り捨てられます。)を売却すること等によって得られる金銭が交付されることになります。なお、当該端数の合計数の売却価格(及びこの結果株主に交付されることになる金銭の額)については、特段の事情がない限り、本公開買付けの買付価格と同一の価格を基準とする予定です。」


といっています。結局、居残っていると金銭交付で追い出されるで~、と知らせているわけですねー。


・買付代金については、成立予定の株式数だと9億4,700万円余りだったそうですが、応募のあった300万4,000株すべてを買い付けるとしたそうで、買付総額は16億円強となるそうです。



それにしても、社長さん(正確には社長の持株会社というか資産管理会社のNTSですが)、そんなにおカネもってるのはてなマークと素朴に疑問が湧きます。


表面上は、投資ファンドの姿が見えないので、NTSのみだとすると、財務基盤はどうなんでしょう。


NTSは2007年7月23日に設立されたばかりで、あたかもこのMBOのために用意されたという会社っぽいです。

きっとこの会社に資金を提供しているファンドがいるのでしょうか。

資金提供者がいるとすれば、このあと、どんなプランで企業価値を高めるか、など、おおよその見当はついていておかしくないですよね。


あるいは、親会社等に該当する黒川興産合資会社(ロジステックの38.9%筆頭株主)は、不動産は持っているようですから、これを担保に銀行がカネ貸しているとか?


■親会社等の決算に関するお知らせ

 http://ir.eol.co.jp/EIR/9323?task=download&download_category=tanshin&id=495421&a=b.pdf


だんだん、推測モードが濃くなってきて、あやしくなってきました。


うーむ。

いざというときのために、MBOのスキームや資金調達手法など、勉強しておいたほうがよいかも(^^;


結局、MBOにしてもLBOにしても、自力で借金できないかぎり、自分らの事業プランに対して出資を仰ぐという形にならざるをえないはずで、そういう意味では、新規に興したベンチャー経営者と一緒ですね・・・。


既存の事業基盤があるから、格段に大変さは違うかもしれませんけども。


やっぱり、個人保証とかするのかな。

MBOなんて、したことないから、細かいところまでは、実体験としてはわかりません。


今度、証券会社の人にねだって資料をもらってみよう~。



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