不都合な真実で有名な米・ゴア前副大統領が、ノーベル平和賞を受賞することになりました。
国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)と共同の受賞ということです。
国際的には、地球温暖化が世界平和を脅かすということは、すでに共通認識になっているのだそうです。
温暖化に伴う海面上昇で侵食され失われた国土から「環境難民」が発生したり、異常気象によって食糧危機が生じたりすることで、国家間の対立や争いが起きたりするという点が懸念されているようで、ノーベル平和賞受賞も説得力がある、ということです。
つい先日も、米カルパースなどの機関投資家がSECに環境コストの開示を迫る提言をしたというトピックをご紹介したところ、多くの反応をいただいたばかりでしたので、ゴアさんのノーベル賞受賞の報を聞いて、そのタイミングにビックリしました。
■環境コスト開示の強制が近い!?
http://ameblo.jp/ir-man/entry-10050595568.html
■暑さと不都合な真実とSRI
http://ameblo.jp/ir-man/entry-10043671258.html
京都議定書に批准していない米国であっても、このスピードで環境対策に関する議論が盛り上がっているわけですから、日本でももっと対応を早めていくなり、政治の世界でも議論を深めるなり、していく必要があるのでしょうね。
日本で生活しているなかでは、地球温暖化への対応、というと、自動車会社の宣伝とかが目につきますが、CMでも自社製品を宣伝するのではなく、自社の環境対策への取組みを伝えるものが出てきたりと、少しずつ変わってきたようにも思います。
さて、ゴアさんの業績やら、大統領選に出馬するかしないかは、当ブログの方向性とはちょっと違うので他のリソースを当たっていただくとして、今回改めて思ったのは、
ノーベル賞って究極のファンドだよなぁ
ということ。
一応、むかーし昔読んだノーベルの伝記で、ダイナマイトや油田で大儲けして、ダイナマイトが戦争の武器として使われることに心を痛めて、遺言でノーベル賞を創った程度の理解はありましたが、改めてWikipediaでノーベル賞
について調べてみると、まぁいろんなエピソードやら批判やらがあるんだと知りました。
ところが、ノーベル財団とかその運用については、さっぱりといっていいほど、記述がありません。
ノーベル賞は1901年から続いていて、ゴアさんとIPCCに1,000万スウェーデンクローナ(約1億8,000万円)も払って、他にも毎年、いくつかのノーベル賞を出しているのに、いまだにその資金は枯渇していないわけで、
いったいいくら資金があるんだ
どうやって運用していて、支出が上回って残高が目減りしていないのか
さわかみファンドを上回る100年以上の、超々長期運用のファンド
とか、気になりませんか(笑)
人類の至宝といって良いノーベル賞が、
あと何年で資金が枯渇するかも、とか、
延命措置のためにノーベル賞の賞金を半額にします、
とか言われたら、興ざめでしょ。それこそ、不都合な何とやら。
(たいへんバチ当たりなことを言っていることは自覚しているのですが、単に興味が湧いた、ということですのでどうぞ笑って許してくださいね~)
というわけで、どれだけノーベル賞の資金的秘密に迫ってみました。
Wikiを伝って、ノーベル財団の公式HPにジャンプできます。
■ノーベル財団
http://nobelprize.org/nobelfoundation/index.html
2006年12月末現在の基金は、35億8,400万スウェーデンクローナ(SEK)。
先のノーベル賞の賞金にあったように1 SEK=18円で換算すると、約645億1,200万円となります。
ふぅ~ん。
約650億円、というと、そんなに巨大なファンドというわけでもなさそうです。
ポートフォリオの配分は、以下のとおり。
株式 64% (スウェーデン5%、欧州20%、米国29%、日本6%、その他4%)
債券 24% (スウェーデン23%、その他1%)
オルタナティブ投資 8%(不動産3%、ヘッジファンド&未公開株ファンド5%) 合計96%
併記されている2005年末のポートフォリオと比較すると、意外な事実が
・全体としては、株式の比率(68%→64%)や債券の比率(26%→24%)をやや下げ、オルタナティブ投資の比率を2%→8%に上げています。
・とくにヘッジファンド&未公開株は前年ゼロだったのに、2006年末には全ポートフォリオの5%を新規に資金配分しています。
(高いレバレッジのヘッジファンドには、手を出していないと思いますが・・・、老舗のノーベル財団も多少は現代風の運用をするんですねー。)
・欧州株の比率は1ポイントアップ、ところが米国株は37%→29%と、ずいぶん比率を落としてきています。ダウもさんざん高値を追っていますからねー。今は、もっと売りにまわっているんじゃないでしょうか。
その分、日本株の比率を3%→6%へ倍増
やっぱり、ノーベル財団からみても、日本株は割安なのでしょうか
もっといえば、世界のノーベル財団のメガネにかなった会社は、どこなのでしょうか。
(いや、これは愚問だな・・・。直接、株主名簿に名前が出てくるとは思えないし・・・。どこかの運用会社やカストディアンの名前しか出てこないでしょう。株主判明調査でもすれば別でしょうけど。)
そして、気になる収支は・・・。
2006年度 収入 292,346(1,000SEK。たぶん(^^;) ・・・ 5,262百万円
内訳は、
利息 26,507 ・・・ 477百万円
配当 44,048 ・・・ 792 〃
値上り益? 237,833 ・・・ 4,280 〃
管理コスト ▲16,042 ・・・ ▲288
となっており、一方の支出は、
ノーベル賞賞金 28,971 ・・・ 521百万円
中央行政へ 19,453 ・・・ 350 〃
ノーベルウィーク 11,663 ・・・ 209 〃
シンポジウム等 1,716 ・・・ 30 〃
その他 156 ・・・ 2 〃
合計 61,959 ・・・ 1,115百万円
収支尻 230,387 ・・・ 4,146百万円
というわけで、私の拙い英語力での理解が間違っていなければ、ノーベル財団の収支は、毎年ノーベル賞を支払って余りある運用益を上げている、と考えられます。
2006年の純益にあたる約2.3億SEKは、2006年末の基金残高35.84億SEKで考えると、約6.4%の運用益にあたります。
うーむ。
さわかみファンドの澤上さんがいうように、年6~7%でまわれば御の字、というイメージにだいたい近いような感じがしますねー。
このまま順調に運用を続けて行ってもらいたいものです。
人類至高のノーベル・ファンド
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