ナガセが早稲田アカデミー株取得、教育セクターに再編機運? | IR担当者のつぶやき

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上場企業に勤務する公認会計士の、IR担当者として、また、一個人投資家としての私的な「つぶやき」です。

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9/27付 日本経済新聞では、大手予備校「東進ハイスクール」を展開するナガセが、学習塾大手の早稲田アカデミー株を5.16%(396,000株)取得したことを伝えています。


2007年3月末時点でのナガセの保有割合はほぼゼロだったようですが、今春、ナガセが早稲田アカデミーに株式取得を打診、早稲アカも了解したため、取得に乗り出したようです。


EDINET(941301)の大量保有報告書によれば、取得総額は414,896千円。平均取得単価は@1,047円程度と推測されます。


記事によれば、8月末に早稲アカが発表した業績下方修正により株価が急落し、その前後でナガセが株式の取得を進めたとしており、その後も若干買い増しをしている模様とのこと。


■早稲田アカデミー 平成20年3月期中間業績予想の修正に関するお知らせ

 http://www.waseda-ac.co.jp/ir/pdf/newsrelease20070829.pdf


■早稲田アカデミー 平成20年3月期通期業績予想の修正に関するお知らせ

 http://www.waseda-ac.co.jp/ir/pdf/newsrelease20070920.pdf


中間と通期の下方修正に約1ヵ月ほどの開きがあります。

8/29に公表した中間決算の下方修正では、


営業利益: 697百万円→498百万円 (▲28.6%)

中間純利益: 380百万円→248百万円 (▲34.6%)


と下げ幅が大きかったので、市場に与えるショックも大きかったようです。

サブプライム・ショックで市場が動揺したお盆の頃には少ししか下げていなかったのに、1,300円近辺から700円まで大きく水準訂正が入りました。


しかし、9/20に公表された通期予想では、


営業利益: 1,768百万円→1,600百万円 (▲9.5%)

当期純利益: 992百万円→846百万円 (▲14.7%)


と中間予想ほどの下げではなかったので、株価も一時950円あたりまで戻しました。

現在はおそらく急落時に買った投資家の利益確定売りに押されており、ナガセによる5%超取得のニュースも押上げ要因にはなっていないようです。



でも、上記のように整理してみると、通期予想が10%前後の修正で済んでいたんだから、落差の大きい中間だけ先に発表する意味があったのかな・・・はてなマーク


昨年は非連結で11/13に中間決算を発表しています。

もちろん、適時開示ですから、中間の業績が悪そうだと判明した時点で開示するのが原則ですので、早く出したこと自体は責められません。


ですが、これだったら、(結果論ですが)中間決算と同時か、それよりも若干早い段階で、中間と通期修正を同時に出すパターンでもよかったのでは、と思われます。

繰り返しになりますが、あくまでも結果論ですけど、8月末の中間下方修正時にショックで投売りした投資家をミスリードしたことにならないでしょうか。


9/20のリリースにあるように、「当社収益の基礎である塾生数につきましては、9月新学期立ち上がりの塾生数動向を勘案した結果・・・」と言うのでしたら、9月分が中間業績に与える影響はほとんどないにしても、通期の動向が9月に入れば見えるとするなら、それを確認してから「上期はダメダメだったけど、通期ではこのくらいで押さえられますから・・・」という趣旨の下方修正リリースにすべきだったと思います。


これでは、まるでナガセに買いのチャンスを与えたんではないかはてなマーク と勘繰られても、しかたないですよ!?


早稲アカ株主だったら、多分、怒り心頭ではないかと想像します。



さて、早稲アカとナガセの関係ですが、ナガセがすでに買収している四谷大塚の教材や公開テストを、早稲アカが使用する重要顧客だという関係にあり、ナガセとしては早稲アカとの関係強化が狙いだとしています。

ナガセの永瀬社長は、「安定株主として早稲アカの経営陣を側面支援したい」という意向のようです。


一方、記事中、早稲アカは現在ナガセ株を保有しておらず今後取得するかは未定としており、これが株式持合いに発展するかどうかは明らかにしていません。



以前にもちょっと触れましたが、少子化が進む塾・予備校などの教育セクターでは、最大手ベネッセをはじめとして、業界再編機運が高いように思われます。


■早稲田アカデミー(4718)、野田クルゼを買収

 http://ameblo.jp/ir-man/entry-10030400378.html


また、ベネッセ(9783・大1)は2007年5月に、東京個別指導学院(4745・東1)をTOBにより買収すると発表し、6月下旬に51.89%を取得して子会社化しています。

(これについては、マスコミなどでも東京個別はうまいやり方をした、との評もあるようです。文化やライバル意識が強い同業他社に買われるよりも、超大手のベネッセの後ろ盾を得た方が得策とか、東京個別の社長さんのExitがうまかったとか・・・)


さらに、東京個別は明光ネットワークジャパン(4668・東1)の14%を握る第2位株主です。

東京個別が明光ネットを買いに出たのが2006年5月頃でした。


巨人ベネッセがどう思うかで、このへんの資本関係が一気に変化する可能性は、ないとはいえないと思います。


同じく5月に 「第一ゼミナール」を展開するウィザス(JASDAQ・9696)が、大阪地盤の進学教育研究所を完全子会社化すると発表しましたが、会計士から進学教育研究所の会計基準や管理体制の水準が不十分との指摘を受け、子会社化を撤回。

矛先を翻訳センター(2483・HC)に向け、資本・業務提携の結果、現在は14.7%を握る筆頭株主になっているようです。


そのほか、学研も買われる側ですが、ビミョーですし。


■学研(9470)を買い上がる旧・村上ファンド

 http://ameblo.jp/ir-man/entry-10045273627.html


手あかのついてなさそうなのは、リソー教育(4714・東1)ですかね。


四季報によると、2008年2月期売上高(予)は166億円、営業利益は28億円(営業利益率16.9%)、QUICKの同期の予想ROEは32.7%年間配当170~185円(四半期配当有り)配当利回り3.16%と、外国人が好みそうな高収益かつ株主還元に積極的な企業です。

ハローe先生など、独自のeラーニング方式も特徴ある経営ですし。


個人的には、もし次に何か話題になるとしたら、このあたりではないかと勝手に予想しているんですが・・・。


しばらくお休み気味だった教育セクターの再編機運に、ナガセが再び火をつけてしまったかもしれませんね。


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