5/10付 日経金融新聞に「投信、議決権行使に温度差――キャスチングボート握る」という記事が掲載されています。
そろそろ、株主総会シーズン。野村アセットマネジメントや日興アセットマネジメント、フィディリティ投信など、運用各社への議決権行使に関する問合せが多くなってきている、と伝えています。
折りしも、経営統合やら外資系ファンドからの増配要求やら、株主総会での会社の行く末を決める重大事を決議しなければならない会社が多くなっています。
運用会社も手ごたえは感じているようで、2年ほど前は議決権行使に関する企業からの問合せはほとんどなかったと言いますが、最近では野村アセットあたりでは月に10件程度の質問がくるそうです。
フィディリティは、親会社の米フィディリティと連結ベースで大量保有報告書を提出するようですが、フィディリティが5%以上保有する銘柄は100社近いのだそう。
問合せ内容も変化しており、かつては「なぜ当社株を買ったのか」から『議案にどう対応するか』に変わってきた」といいます。
企業側も、いちごアセットマネジメントの時のように、少数株主だと思ってタカをくくっていると、個人株主を味方につけられて、大勢をひっくり返されてしまうことに懸念を持ち始めたようで、運用会社に理解を求める傾向が強まっているようです。
運用会社が、総会の重要議案の成立に関して、キャスティングボードを握る存在になりつつあると考えられます。
日経金融が紹介している、運用各社の共通の議決権行使に関する共通点は・・・。
1.一般的に投資先企業の経営陣を支持する(フィデリティ)
2.業績不振が著しい企業には会社提案の議案を慎重に検討する
3.アクティビスト(活動家株主)ではないので日本で株主提案した実績はない――など。
議案のトピックごとに個別に見ていくと・・・。
A.買収防衛策
日興AM: (総合的に判断するが)会社の支配権獲得を防ぐためになされる議案には反対
野村AM: 株主価値を低下させる場合は反対、株主価値を守ることが主眼の場合は賛成
フィディリティ: 総合的に判断する
大和投資信託: 明示せず
B.投資先のM&A
大和投資信託: 株主への不利益が明確でない限り将来予測は困難なので、「原則として肯定的に判断」する
野村AM: 慎重に検討
フィディリティ: (買収する企業が)当社が大株主の場合は、当社と直接協議するように促す
なお、フィディリティは、株式売却よりも経営介入で利益向上が予想される場合には「経営方針の変更を強く勧める経営介入を選択する」としています。
・・・HOYAとペンタックスの攻防については、フィディリティは会社側と議論したのかな?
さらにさらに、国内系大手運用会社は、社内の委員会で会社として統一した議決権行使の最終的な意思決定を決めるようですが、フィディリティあたりですと、一応の議決権行使指針に即してはいるものの、最終決定は各ファンドマネジャーさんが決めるようです。
へぇ~、そうなんだ・・・!
やっぱり国内系は、集団的意思決定で責任があいまいだけど、外資系は一人ひとりのファンドマネジャーが責任もって議決権を行使する。やはり一匹狼の集まりですねー。
IRする立場に立って考えれば、フィディリティのようなパターンのほうがやりやすいですね。
ピンポイントで、アタックすればいい人が分かっているんですから。
(お買い上げの前のボトムアップ・アプローチの時に、取材を受けているはずなので)
集団で議決権行使を決めるんだといわれた日にゃあ、誰にアタックしていいかさっぱりわからん。
当社でも、決算や総会スケジュールの関係から、そろそろ議案の中身を確定しないと間に合わなくなってきます。
期末配当金をいくらにするのか、役員の改選、会計監査人の選任やら、いろいろ決めないといけない議案が結構あります。
内容的には、今までと違い、直接説明したいなぁ・・・と思うものもあり、非常に時宜を得た記事で役立ちました。
例年ですと、先日「大株主へのIR」(http://ameblo.jp/ir-man/entry-10030209210.html )で触れた大株主さんあたりは、いつも招集通知が届いた頃に、議案の趣旨を問い合わせるお電話を頂いていますが、今年はどうなんだろ・・・?
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