ケーススタディ「経営統合」ドトールと日本レストランシステム | IR担当者のつぶやき

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上場企業に勤務する公認会計士の、IR担当者として、また、一個人投資家としての私的な「つぶやき」です。

ときどきIR担当者的株式投資の視点も。

4/26、ドトールコーヒー(9952)とスパゲティチェーン「洋麺屋五右衛門」などを運営する日本レストランシステム(2775)は、10/1付で経営統合すると正式発表しました。



■経営統合に関する基本合意について

 http://www.doutor.co.jp/ir/jp/news/pdf/20070426.pdf


・経営統合の概要

持株会社を設立し、両社の事業を傘下に置く。

持株会社の社名は、「ドトール・日レスホールディングス(仮称)」

6/28 ドトールの定時株主総会&日レス臨時株主総会にて決議のはこび。

9/25に両社は上場廃止、10/1に持株会社の上場予定日となります。


両社の業績は以下のとおり。

ドトール 2007/3期

売上高 68,596百万円

営業利益 4,337 〃 (6.3%

経常利益 4,694 〃 (6.8%)

当期純利益 2,185 〃 (3.2%)


日本レストランシステム 2006/5期

売上高 27,824百万円

営業利益 5,807 〃 (20.9%

経常利益 5,868 〃 (21.1%)

当期純利益 3,371 〃 (12.1%)


単純合算値

売上高 96,420百万円

営業利益 10,144 〃 (10.5%

経常利益 10,562 〃 (11.0%)

当期純利益 5,556 〃 (5.8%)


日本レストランシステムの高収益性は、以前、日経ビジネスでも取り上げられたところだと思いますが、実際に目の当たりにすると、外食で20%超の利益率(上場外食業界No.1だとか。)っていうのは、改めてすごいものがあります。


単純合算値で売上高が964億円、これでも営業利益率が10%を超えています。

新聞が言うように、まさに「強者連合」。すごいですね。


・経営体制

代表取締役会長 大林 豁史(ひろふみ)氏(現 日本レストランシステム代表取締役会長)
代表取締役社長 鳥羽 豊氏(現 ドトールコーヒー代表取締役社長)

ほか、

日レス側取締役 2名、ドトール側取締役2名という布陣。


・株式移転比率

ドトール1株:持株会社1株、

日レス1株:持株会社1.687株


となるとのこと。

算定機関(ファイナンシャル・アドバイザー)は次のとおり。

ドトール:野村証券

日レス:大和証券


野村証券は

① 市場株価平均法 1.67 ~ 1.76
② 類似会社比較法 1.59 ~ 1.79
③ DCF 法       1.61 ~ 1.89

により、4/24を基準日として、評価基準日から1週間・1ヶ月の平均株価を使用しています。


大和証券は

① 市場株価法    1.669~1.966
② DCF法       1.644~1.719
③ 類似会社比較法 1.621~1.889

により、4/20を基準日として、評価基準日から1週間・1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月の株価終値平均株価及び出来高加重平均株価を使用しています。


日経新聞の試算では、持株会社において、大林会長が約13%を保有する筆頭株主となり、鳥羽博道氏が約10%を持つ第2位株主となる見込み。


その他、上記リリースでは、ドトール側に

ハービンジャー・キャピタル・パートナーズ・マスター・ファンド・I・リミテッド 9.84%

シティグループ プリンシパル インベストメント ジャパン コーポレーション リミテッド 3.52%

などの名前が挙がっています。

素性はわかりませんが、また統合比率に不満がある、とか言い出すと面白いのかも。

ただ、言うのなら、収益性の高い日レス側かなぁ。

しかし、日レス側には大株主に怪しげな株主は皆無。

意外にすんなりいきそうな気もします。


・統合効果

ドトールの店舗数 約1,500店(コーヒーチェーンで最大)

日レスの高い利益率を維持した業態展開力


当然、日レスのスパゲティ店でドトールのコーヒーを提供など、商品の相互乗り入れ、食材調達や物流の共通化。

経常利益で20~40億円の統合効果を見込むと。

2011年2月期(持株会社の決算期)は売上高1,100~1,200億円、経常利益140~150億円を目指すとのこと。

うーん、五右衛門でドトールコーヒーが飲めるのは嬉しいけど、ドトールのお店でスパゲティはゆでられないだろうな・・・。

ゆであげ済みのスパゲティがやってきて、ドトールでナポリタンサンドとか?

焼きそばパンかい!?


それは冗談としても、双方のお店でおいしいものが融通されるのはありがたいことです。

ドトールで豆はよく買いますので、五右衛門のレトルトスパゲティソースとか売っていたら嬉しいかな。


いずれにせよ、持株会社の売上高は吉野家ディー・アンド・シー(2007年2月期は約1,355億円)に迫る規模になり、ドトールが飲料、日レスが食事に重点を置いて店舗展開しており、両社は重複が少なく事業の補完性が高いと前評判も上々。

外食産業にありがちな弱者救済的なM&Aではないのも、◎のようです。


外食業界は、今年に入ってM&Aが相次いでいるとのこと。

ゼンショー(7550):牛丼チェーン「すき家」を展開: 回転ずしのカッパ・クリエイト(7421)やファミリーレストランのサンデーサン(9899)などを買収。

すかいらーくロイヤルホールディングスも、持ち帰りずしや天丼チェーンなど自社にない業態の企業の買収が目立つといいます。


総じて利益率は低めなので、外資による三角合併のおそれは高くないのかもしれませんが、国内勢どうしの合従連衡がしばらく続きそうですね。


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