証券監視委、エー・アンド・アイ(4773)に課徴金2,259万円 | IR担当者のつぶやき

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証券監視委:ソフト開発会社に課徴金2,259万円


 証券取引等監視委員会は17日、大証ヘラクレス上場のソフト開発会社「エー・アンド・アイシステム」(東京都中央区)に証券取引法違反(半期報告書等の虚偽記載)の疑いで課徴金2,259万円を科すよう金融庁に勧告した。


 調べでは、同社は05年9月期半期報告書で、計上すべき損失を先送りして5億2,400万円の赤字だった連結中間純損益を1億1,600万円の黒字に、20億5,900万円の資本合計を27億円にそれぞれ粉飾し、関東財務局に提出した疑い。


 同社は、仕入れ元が顧客の注文を受けて開発したシステムの販売を仲介していた。システム開発が中止されたため06年3月期決算で損失約27億円を計上。しかし、監視委はシステム開発の一部は遅くとも05年9月末には中止が決まっていたと判断、うち約8億円の損失を05年9月期に前倒しして計上すべきだと認定した。

毎日新聞 2007年4月17日 20時25分


■証券取引等監視委員会HP

「エー・アンド・アイシステム株式会社に係る半期報告書等の虚偽記載に係る課徴金納付命令の勧告について」

http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2007/2007/20070417.htm


これによれば、2006年4月に行ったファイナンスの際に使った有価証券届出書に、対象の半期報告書が組込情報として用いられていたため、当該届出書を用いた第三者割当(発行価額10億5,400万円)の際の情報に問題があるとされているようです。


■エー・アンド・アイシステム

「第三者割当による新株式発行および自己株式の処分ならびに主要株主である筆頭株主の異動」

http://www.aandi.co.jp/pdf/shinkabu0411.pdf


このリリースによれば、結局2006年3月期に大幅な損失計上により債務超過に陥る見込みになったとのこと。これを回避するために、(株)ラック会長(当時)の三柴元氏に対して第三者割当増資をしたことがわかります。

この第三者割当増資により、三柴氏は25.7%の筆頭株主に踊り出たことになっています。


そもそも、この過年度の決算訂正の問題は、2006年11月10日に表面化していたものです。

「過年度決算の訂正見込みについて」 http://www.aandi.co.jp/pdf/kesan061110.pdf


同時に、同じ11/10付で、ラックとの経営統合に関して発表しています。

「共同株式移転による経営統合に関するお知らせ」

http://www.aandi.co.jp/pdf/tougou061110.pdf


当時の経緯はよく知りませんが、見た目には、特損発生の際に第三者割当で助けてもらったラック社(三柴氏)に、11月になってから、どういう理由からか決算訂正事件が起きた折、水面下で調整したうえで、市場に対して過年度決算の訂正のショックをラックとの経営統合で和らげようという意図がありますね。


ラックの三柴氏にしても、おそらく見るところがあると思ったからこそ、ごっつり第三者割当に応じて筆頭株主になったんでしょう。

ですから、仮に、証券監視委がいうように、損失計上が2006年3月期でよいのか2005年9月期に計上すべきだったのかという問題はさておき、虚偽記載が含まれると目される有価証券届出書を使用したことの被害者は三柴氏しかいないんじゃないでしょうか?


ちなみに、上記の証券監視委のHPを見ると、

① 損失計上の時期の問題(05/9期か06/3期か)から導かれる課徴金の額:150万円

② 虚偽記載が含まれるとされる有価証券届出書を使用したことから導かれる課徴金の額:2,109万円

です。


被害者は三柴氏だけにも関わらず、第三者割当の発行価額が10億5,400万円×2/100という計算です。

もし本当に虚偽記載だったら、①の05/9期の半期報告書に反映せずに、投資家を欺いた結果になったことのほうが重く見られるべきだと思うんですが・・・。


(半分くらいは、結局損失計上したんだから、05/9期でも06/3期でもいいじゃないか・・・という気がしないでもないですが、、、あー、いやいや、やはり投資タイミングと反映される開示情報が異なることによって損失を免れた投資家と損失を被った投資家がいるはずなので、どうでもいいとはいえません!)


ただ、ラックないし三柴氏もやられた~、って感じでしょうね。

経営統合で2回目の助け舟を出したつもりが、課徴金が2,000万円も来るとは・・・。


何か納得いかないなー、証券監視委。

傷口に塩を塗り込むようなことをしなくてもいいのに。


しかし、コマツのインサイダー取引(http://ameblo.jp/ir-man/entry-10027656512.html )といい、

エイチエス証券の21Ladyの件(http://ameblo.jp/ir-man/entry-10029466971.html )といい、

毎月のように精力的に勧告してますねー。


やっぱり、成果が重要チョキ、ということなんでしょうか。


と、同時に、企業のIR担当者としては、損失の計上時期についてまで、後になって口を出されたらたまらん!という思いが強いです。

損失額をごまかしたとかそういうのではなくて、中間決算ではまだ確たる根拠が示せない、あるいは、事態が進展中だったので額が確定できない、あるいはそこまで行ってない状況だったかもしれず、それが本決算の時には、やはり損失を計上しましょうとなったとします。

このとき、監査法人もこれで適正、と言ってきたのに、証券監視委が後から、いやそれは中間決算時に虚偽記載だったんじゃないの?と言っているとしたら、これはこわーいですよ!!叫び

まぁ、証券監視委も相当程度に調査してからの処分でしょうから、エー・アンド・アイ社のほうに、逃げ切れないような状況が揃っていたのかもしれませんがね。


会計上の判断が、ますます保守的な方向に傾いていきそうです。


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