4/16付 日経金融新聞1面に、日本公認会計士協会・藤沼亜起(つぐおき)会長のワイドインタビューが掲載されています。
曰く、『「ゆるふん監査」一掃』 業界関係者必見です。
全文掲載ははばかられますので、ダイジェストでお届けします(笑)
・会計不祥事が絶えない点について
カネボウ、ライブドア、日興コーディアルなど大型の会計不祥事が相次いでおり、2006年夏には旧中央青山(現みすず)に対する業務停止処分も行われた。さらに、みすずが解体を決め、業務移管を発表するなど、監査が世間の耳目を集めることが多い点に触れて。
「基本スタンスとして会計不祥事はまず、我々会計士自身が解決しなければならない」
・監査の信頼性確保について
公認会計士協会の臨時総会で決めた「上場会社監査事務所登録制度」では、問題のある事務所(監査法人)はWebサイトで公表されることになっていることで、各事務所の監査業務の改善を促している。
中小の監査法人が行政処分を受けるなど、内部の審査体制が機能していないとの批判については、
「すべてが完ぺきな事務所ばかりでないことは事実だ。協会は事務所に対して『品質管理レビュー』という調査を実施しており、問題把握は進んでいる。手ぬるい『ゆるふん監査』をする事務所は減っていくだろう」
と答え、また、公認会計士協会自身も、会計士の保護団体との視線に対して、組織やガバナンス改革にも取り組んでいることを強調(意思決定機関や会員処罰の審査会に外部の有識者を導入など)した。
会員を処罰するための審査会の構成要員には、金融庁の手が入っていますけどね。「ライブドア事件 会計士にも実刑判決」 (http://ameblo.jp/ir-man/entry-10028835903.html ) で書いていますので、ご覧ください。
・審議中の公認会計法改正案について
今国会で公認会計士法改正案が審議されており、この中では、課徴金制度の導入など処分の形態が増えたり、理事長などに対する解職命令などが導入されており、監査人に対する規制が一層強化されている。
藤沼会長は、不祥事が相次いだことを別にしても、資本市場に参加する個人の増加を背景に、財務情報の透明性・正確性を高めるため、規制が強化されるのはやむを得ないという見方を示した。また、米国エンロン事件などを契機とした企業改革法(SOX法)が施行されるなど、会計監査に対する規制強化は国際的な流れだと理解していると。
また、監査法人の有限責任制度の導入については、
「改正案には業界の悲願だった有限責任制導入が盛り込まれた。供託金が必要など条件付きだが大きな前進だ。無限連帯責任を改めたといっても、監査報告書にサインした会計士と審査に直接かかわった会計士は無限責任のまま。責任の重さは従来と変わらない」
と語った。
・監査法人や監査の担い手について
監査法人が新規の引き受けに慎重な態度をとっており、監査の引き受け手のいない「監査難民企業」が生じかねない懸念については、
「監査人の数が十分に足りていないのは事実だ。みすず解体を目の当たりにして監査法人もリスク管理を厳しくしている。リスクが高い企業に対しては厳格に監査せざるを得ないが、協会としては監査難民企業の発生はできるだけ防ぎたい。中小の事務所にも声をかけて監査の担い手を積極的に募集している」
と語った。
また、大手監査法人と中小の事務所との業務の棲み分けについても、大手法人は海外の大手会計事務所と提携関係があるため、国際的な企業に監査先を絞る一方で、中小の事務所については非上場企業や学校法人などの監査にシフトさせることも必要だとの独自の見方を示した。
・上場企業のガバナンス体制について
監査法人に対して、監査の引き受けは厳格にするよう協会としても指導しているもよう。
「ガバナンスが機能していない上場企業があることも事実だろう。こうした企業に対しリスクをとってまで監査人が引き受けるべきなのか」
(監査人の不在を原因とする上場廃止企業が生じる可能性について触れて、)
「それは監査人の問題でなく、リスクが高いガバナンスを放置している企業側の問題だ。我々は常に監査リスクを評価しており、これまでも監査を引き受けられない企業が出たことはある」
と、ガバナンス不在の上場企業について、監査の引き受け先がないとしてもやむを得ない場合もある、との見方を示した。また、
「証券取引所が定める上場廃止規定も業績だけではなく、さまざま角度からみた規定を整備することが必要ではないか。上場審査をきっちりと行うことも必要で、包括的な対策をとるべきだ」
とも語り、上場後の監査をする立場の監査人ばかりでなく、上場審査の厳格化を通じて証券取引所にも企業のガバナンスに関する実質的な審査をするよう暗に求めたかっこうだ。
・会計士に対する期待ギャップと限界について
「責任を追及されるのは、会計士に対する高い期待の裏返しだと受けとめている。だが、不二家の品質管理問題で会計士はなぜチェックしなかったのかと問われることがあるように、会計士の本来の業務と社会の期待との間には差がある。」
と、会計士に対する社会的な期待と本来の会計監査という業務の間にはギャップが存在することを示した。
(もう少し、ハッキリと、不二家の品質管理の問題は「会計」に関する問題ではなく、企業側の内部監査、監査役の業務監査や取締役の管理監督の問題であって、スジ違いです!と言えばいいのに・・・)
また、外部監査たる会計士監査の限界についても触れ、
「企業が出してくる情報をある程度信用して監査をしており、最近の新興企業の事例のように、経営者が主導して巧みに不正会計をすれば、監査人が不正を食い止めるのは限界がある」
とも述べた。(監査がよって立っている「内部統制」は、経営者による不正にはほとんど無力ですもんね・・・)
「企業には監査役が存在し、経営者に対するお目付け役として内部の視点で経営をチェックする役割がある。だが、問題が起きても非難を受けた例はほとんどない。駅伝に例えれば、最終アンカーである監査人が遅れてテープを切ったら、監査人だけが非難されるようなものでおかしい。我々自身が改善すべき点はもちろん改善するが、企業側のガバナンス向上も不可欠だ。企業の不正を防止するために、先送りされている法整備を早急に進めることが必要だ」
とし、監査役の重要性についても強調した。
駅伝の例えは分かりやすくていいですね。私もかねて会計不信・監査不信は、ひとり会計士の問題だけではなく、「経営者不信」、「ガバナンス不信」であると考えております(http://ameblo.jp/ir-man/entry-10027092231.html )が、藤沼会長が企業側のガバナンスを強調してくれて、溜飲を下げました(^^)
・監査法人の寡占化、国際会計基準への対応について
みすずの解体で監査業務が大手に集中するなど、寡占化が進むのではないかとの問いかけに対し、
「監査事務所の寡占化は世界的な問題。日本では特に大手と中小の差が激しい。大手は売上高が500億円程度だが、中規模事務所は数十億円にとどまる。業務拡大や合併などで100億円規模の事務所が増えてほしい。公認会計士法の改正で導入される有限責任制度は、有限責任制への移行の条件として一定の規模が必要。中規模同士の合併は今後増えるだろう」
と述べ、中規模の監査法人の合併により体力を強化し、監査法人の有限責任制度に見合う規模を早くつけるべきとの認識を示した。また、韓国も国際会計基準の導入を決め、日本独自の会計基準に関して孤立感が高まっていることについて、
「資本市場がグローバル化する中で、収益を計る物差しは同一であったほうがいい。同じ取引なら同じ会計処理にすべきだ。日本も戦略的に会計基準をどうするのかを議論していかなければならない。国内基準の作成を担う企業会計基準委員会は基準の共通化に向けて努力している。経済界のトップも会計基準の共通化について、積極的に議論してもらいたい」
と語り、企業側に対しても、ひしひしと迫る国際会計基準への対応について真剣に検討するよう求めた。
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