少し間があいてしまいましたが、(その1) http://ameblo.jp/ir-man/entry-10029183199.html からの続きです。
1.企業行動に関する制度の整備
(4) 種類株式の上場制度
ん~~っと、ここの議論は、これまでのよりグッと難しいです・・・
商法改正・会社法での整備により、種類株式が使いやすくなった、というぐらいしかこれまで理解していないものですから・・・(^^;
だいたい、日本で種類株式での上場なんて、実例を見たことないので、ピンときませんしね。
せいぜい、報告にあるように、「東証では、拒否権付種類株式の発行について、一定の条件で上場廃止となる旨定めている」というのが、いわゆる「黄金株」といわれるやつで、グーグルで利用されている、といったことは知ってますけど。
「会社法であそぼ。」http://blog.livedoor.jp/masami_hadama/ などでしっかり勉強しないとダメだなぁと実感・・・。
ということで、ここは軽~く、流させていただきます。
・原則として議決権に関する種類株式の上場は、新規公開時にのみ認める方向で検討することが適当である。
(反対論)議決権種類株式(議決権の重みに差異を設けた株式)は、支配権の移動を妨げ、リスク負担と支配が比例しない点で上場会社のコーポレート・ガバナンスに歪みをもたらすので、望ましくない。
(賛成論)会社法制定によって種類株式の発行が柔軟化されたこと、買収防衛策への関心が高まっており、議決権種類株式の上場に関する社会的欲求が高まっている。
としており、米国では新規公開時に限り種類株式の上場を認めているんだそうです。
ということで、懇談会の意見としては、議決権種類株式であっても、既に投資している一般株主の利益を守るという観点から、議決権種類株式の上場は新規公開の場合に限って認めることに賛成意見が多数を占めたとしています。
・上場会社による上場株式より議決権の少ない株式の発行及び上場については、「株主の権利の不当な制限」とならない限りで認めるのが適当である。
この場合は、基本的に既存の一般株主の権利を毀損するものではないので認めてもよい、としているようです。
・新規公開時に議決権に関する種類株式の上場が認められるとした場合、そのスキームについては、議決権に関する種類株式に伴うデメリットを緩和する観点を中心として、株主の権利を尊重したスキームの種類株式の上場のみを認めていくことが適当である。
ここでいうデメリットには、
① 支配権の移動が制限されることによる株式売却の機会減少とコーポレート・ガバナンスの弱化
② リスク負担と支配が比例しないことによるコーポレート・ガバナンスの歪み
が挙げられており、そのほか、買収防衛策としての性質から、株主の権利の尊重だけではなく、開示の十分性、透明性、流通市場への影響についても留意すべき、としています。
・スキームの法的安定性については別途確認が必要である。
2.市場制度の整備
(1) 市場区分のあり方
・流動性に市場評価の観点を加味した明確かつ定量的な基準を中心に市場区分の再設計を行う方向で検討を進めることが望ましい。
全文では、「市場区分は流動性の相違によるものと位置づけられているが、これは企業としての品質の相違であるという一般的な認識とは大きく乖離している」と言っています。
ありゃ?そうでしたっけ。一部指定審査とか受けた経験からすると、単なる”流動性の相違”なんてもんじゃなかったぞ・・・。
東証のHPで確認・・・(そういや、3/31はリニューアルかかってて、HP見れませんでしたね。だいぶきれいに、見やすくなりましたよ。東証のHP。適時開示も1ヶ月間見られるようになったし。便利になったかも。)
一部・二部の指定基準はこちら http://www.tse.or.jp/rules/listing/stlisting.html
うーん、確かに、一部指定基準は二部の基準とは、上場株式数(10万単位以上vs4,000単位以上)、株式の分布状況(少数特定者持株数や株主数)、上場時価総額(500億円以上vs20億円以上)で大きな違いがありますね。
へぇ~、そうだったんだ・・・。認識をあらたにしました(^^;
で、市場区分を単純に統合すると、投資者の混乱やTOPIX(一部銘柄=TOPIXの構成銘柄)の継続性の点で弊害があるとしています。
定量的な基準としては、浮動株時価総額などを想定しているようです。
・一部指定時に実施している実質審査については行わないこと、既上場会社の経営管理体制の継続的な確認については、規模の大きい非上場会社との経営統合時や故意・重過失による適時開示規則違反の場合等に適宜行うことについて、検討を進めることが望ましい。
上記のように、市場区分を定量的な基準で決めていくことにして、企業の質は最終的に市場が判断するものであって、東証が細かい基準や審査を行って定めるのは必ずしも適切ではない、と言ってまして、その流れから、一部指定時の実質審査については行わない方向で、としているようです。
うーむ。東証さん、それでいいのでしょうか。先日の日興問題の時もそうでしたが、市場の番人としての機能も、世間から期待されているように思われますが、企業の質は市場が決めるもんだ、と放ってしまうの?
(2) 新興市場のあり方
・マザーズは、成長の初期段階にあり、かつ将来的に本則市場に上場することを志向する企業に早期に資本市場へアクセスする機会を提供する市場と位置付け、東証が本則市場と一体として運営するものであることを明確にするよう制度の整備(マザーズから本則市場へ移行する場合の規程の見直し、本則市場からマザーズへの市場変更に係る規定の廃止、成長性の見込まれる企業の上場促進に向けた対応等)を行うことが適当である。
全文では、「マザーズと本則市場の関係は、上場制度上は並立関係と位置付けられており、会社はどちらの市場にも上場申請でき、マザーズから本則市場への市場変更だけではなく本則市場からマザーズへの市場変更も可能となっている」としています。
へぇ~、知ってました?東証一部・二部から東証マザーズへの市場変更ができるんだ??
でも、そのような例は1件もない、とも言ってます
まず、問題視しているのは、「現状の本則市場との並立的な位置付けは、本則市場に上場できない新興企業に成長の機会を提供するというマザーズの基本的性格と整合していない点である」ということです。
あれれ・・・。確か、マザーズ開設当初って、ここでいうように実績はないが高い成長性を有する新興企業に資金調達の場を提供するということを言っていましたよね。それが、いつからか、JASDAQやヘラクレスなどの他の新興企業向け市場との獲得競争から、新規性をはずすようになって、ふつうの業種も上場できるようになったと認識していましたが・・・。
そうした経過をたどったマザーズなのに、その本則市場との並立がおかしい、と言い出すなんて、なんか主張が迷走してません?私の認識が間違っていたかしらん。
次に、「次に、マザーズの上場会社は、新規上場時においては本則市場と同等の経営管理体制の整備までは求められないものの、上場後多くの投資者の投資対象となり、規模も拡大していく中では、新規上場時に求められる経営管理体制ではなく、より高い水準の経営管理体制の整備が求められるべきではないかと考えられる」ということを問題視しています。
いや、しかし、それはマザーズ上場企業だけではなく、東証一部・二部の会社でも同じなんじゃ・・・?
別に、マザーズ企業ばかりが、経営管理体制が進歩していないわけではないでしょ。
むしろ、一部・二部のオールド・ガバナンスの会社のほうがよっぽど、投資家をナメた行動をとっていると思いますが。
三点目に、「更に、マザーズ上場会社は、上場時点では成長期待のある会社として上場するが、これらの会社のすべてが期待どおりの成長を実現できるとは限らないことへの対応という課題がある」としています。
そりゃ、ま、そのとおりですが・・・。
そうは言っても、上場審査や上場規則上、マザーズに上場するためには、一部・二部とは異なり、何%以上の売上/利益成長性が求められる、とか定量的な基準を示していないわけですから、マザーズ企業が期待された成長を実現できないのがいかん!とばかりも責められないのでは?
まるで、一部・二部企業は成長しなくて良いみたいに聞こえるし。
・マザーズの信頼性向上に向け、企業の経営管理体制の整備に関する対応を強化する措置(例えば、上場後一定期間経過したマザーズ上場会社に対して、本則市場に新規に上場する場合の実質審査に相当する審査を実施する等)を導入する方向で制度の整備を行うことが適当である。
・マザーズ上場後一定期間経過後において所定の成長を達成できていない企業については、上場を廃止する措置を導入する方向で制度の整備を行うことが適当である。
この一定期間経過後、については、例えば5年経過しても、一定規模の売上高または当期利益を計上できない場合等を挙げています。
何だか、全体として、議論がおかしくない?
東証一部・二部については、流動性による差異だけだから実質審査は行わない、企業の質は市場が決めるべきだ、としておいて、その一方で、マザーズ市場については、本則と一体運営し、本則市場への登竜門との位置づけに戻す。その際、一部指定でやらなくなった実質審査をこっちではしっかりやる、と。しかも、5年の間に一定規模にまで成長できなければ退場!とは。
(ちょっと長くなったので、その3に続く・・・)