3/27に東証から「コーポレート・ガバナンス白書2007」が公表されています。
http://www.tse.or.jp/rules/cg/white-paper/index.html
これは、2006年6月からすべての東証上場会社に提出が要求されたことに伴い、今までアンケートなどを実施しても6~7割程度の回収率だったものが、100%提出されるようになったのでそれを集計した形になっています。
(ちょうど、このブログを昨年の春に書き始めてすぐに、東証からコーポレート・ガバナンス報告書の記載要領が配布されて、ひえぇ~・・・と思ったのを思い出します。詳しくはこちら http://ameblo.jp/ir-man/entry-10009675545.html )
対象会社数は
東証一部 1,687社(71.6%)
東証二部 495社(21.0%)
マザーズ 174社( 7.4%)
合計 2,356社(100.0%)
となっています。
実は、白書が公表されてから、新聞等にダイジェストが載るかなぁと思ってしばらく温めていたのですが、ちっとも載る気配がない=新聞記者も読み込む力のある人 or 気が付いた人がいないんだ・・・と思って、ご紹介することにしました。
Ⅰ コーポレート・ガバナンス関する基本的な考え方
従来から、決算短信で記載が要求されていた項目です。しかし、以前は
・経営監視の必要性についての認識に関する記述が少ない
・ガバナンスの中核をなす株主を含むステークホルダーの位置づけに触れられていない
・株主・投資者が会社における自身の位置づけを確認しづらい
といった状況だったため、コーポレート・ガバナンス報告書においては、上記の点についてどのように認識しているか、自社にとってのコーポレート・ガバナンスの目的をどのように捉えているか、といった点を明確にすることが意図されていました。
(1) コーポレート・ガバナンスについての会社の取組みに関する基本的な方針、コーポレート・ガバナンスの目的
「企業価値」に言及した会社:48.2%
売上高や外国人株式所有比率が高くなるにつれて、その割合が増加する傾向。
買収防衛策の導入が相次いでいる今年度は、さらに上場会社の意識として「企業価値」に目が向いていることと思われます。
(2) 経営監視機能
「監視」や「監督」に言及した会社:42.9%・・・委員会設置会社では78.0%
「執行」に言及した会社:44.5%・・・委員会設置会社では81.4%
(3) ステークホルダー
「ステークホルダー」に言及した会社:56.0%
「社会的責任」に言及した会社:26.4%
ここからは、株主だけでなく、従業員や顧客、債権者を含む取引先、消費者や地域社会などの利害関係者と良好な関係を築くためには、それぞれに対する責任を果たすことを意識しているといえます。それが、企業のCSR活動という形になって表れてきているのでしょう。
(4) コンプライアンス
「法令遵守」に言及した会社:41.3%
「内部統制」に言及した会社:18.8%
コーポレート・ガバナンスと企業の不祥事防止は切っても切れない関係にあるといえ、法令遵守意識の高まりが見てとれると思います。また、コンプライアンスのより具体的な形としての「内部統制」には、すでに約2割の会社が言及しており、かなり意識している状況であるといえます。
また、結果として、それらが「透明性」の高い体制構築に役立つというところから、「透明性」に言及した会社:68.8%と極めて高い割合になっています。
Ⅱ 資本構成、企業属性その他の基本情報
コーポレート・ガバナンス報告書を提出している東証上場会社のプロフィールをまとめたものになっています。
1.資本構成
(1) 外国人株式所有比率
外国人株式所有比率が30%以上の会社においては、委員会設置会社の割合が10.2%と、10%をオーバーしています。集計結果を見ると、外国人株主比率が高いほど、委員会設置会社の比率が高まる傾向があるといえます。
■監査役設置会社(2,297社/2,356社、97.5%)
外国人株式所有比率
10%未満 1,308社
10%~20%未満 538社
20%~30%未満 275社
30%~ 176社
■委員会設置会社(59社/2,356社、2.5%)
外国人株式所有比率
10%未満 14社
10%~20%未満 13社
20%~30%未満 12社
30%~ 20社
また、東証一部では、外国人株式所有比率が30%以上の会社が10.6%と比較的多くなっています(二部は2.0%、マザーズでは4.0%)。売上高別では、売上高が1兆円以上の会社では、外国人株式所有比率が30%以上の会社が31.0%と突出しています。1,000億円~1兆円未満の売上高の会社では、同比率が30%以上の会社は15.6%、1,000億円未満の会社では同3.4%にとどまっています。
(2) 大株主の状況
筆頭株主の所有比率が50%以上の会社で、委員会設置会社を選択する会社が19社、8.2%と、やや多い傾向が出ています。この背景には、企業グループ全体で委員会設置会社に移行した例などがあるようです。
また、東証一部上場会社ほど筆頭株主の所有比率が低い傾向があるとともに、売上高が高いほど筆頭株主の諸優位率が低い傾向があります。
(要するに、一般的なイメージの大企業であって、株式の分散化が進んでいるということですね。)
2.企業属性
(1) 上場取引所および市場区分
東証上場会社のうち他の市場に重複上場している会社は、865社(36.7%)もあります。結構、多いんですね。
単独上場は、マザーズ100%、東証二部80.6%、東証一部は54.4%となっています。
重複上場先としては、大証一部が618社(全体の26.2%)、名証一部が237社(10.1%)だそうです。
(2) 決算期
3月期決算会社は全体の76.4%となっていますが、市場別にみると、マザーズの会社は3月決算会社は41.4%にすぎず、12月決算(14.9%)や9月決算(10.9%)など、分散している傾向があります。
やはり、マザーズは新興・IT企業が多いせいか、3月決算にはこだわらないのかもしれませんね。
(3) 業種
委員会設置会社への移行が比較的高い業種は、医薬品(5社)、電気機器(14社)、証券・商品先物取引業(5社)などです。その他、機械(4社)、情報通信(4社)、小売(4社)と続きます。
(4) 従業員数
売上高等と同様の傾向ですが、大規模な会社ほど委員会設置会社が多いため、当然、従業員数が多いと同様の傾向がみられます。具体的には、従業員数1,000人以上の会社で47社が委員会設置会社です。500人以上1,000人未満の会社での委員会設置会社は6社に過ぎません。
(5) 売上高
100億円以上1,000億円未満で22社、1,000億円以上1兆円未満で28社、1兆円以上で8社が委員会設置会社となっています。
ちなみに、東証上場企業の売上高による分布は、次のとおりとなっています。
100億円未満 275社
100億円以上1,000億円 1,271社
1,000億円以上1兆円未満 681社
1兆円以上 129社
(6) 親会社の有無
東証上場会社のうち親会社を有する会社は13.5%あり、そのうち88.1%(全体の11.9%)が親会社が上場しています。これは、上場審査基準において、親会社等が発行する株券が他の市場に上場されていることが要件の一つになっているから、と説明されています。
ふぅ~ん・・・。以前、問題になった非上場の親会社を有する会社っていうのは、異端扱い、ということなのかしらん?
西武-コクド事件以来、東証において非上場の親会社等も、上場親会社ほどではないにしても、親会社の決算情報ということで、財務諸表(B/S・P/L)や株主分布(有価証券報告書にあるような分布表)を開示しないといけないことになっています。
あ。直近の非上場の親会社の決算情報って、株主資本等変動計算書は入っているのかな・・・?要チェックかも、です。
また、筆頭株主の所有比率が50%以上の会社では、親会社を有する会社は86.1%、親会社を有しない会社は13.9%の割合になっており、個人が支配株主になっているケースは少数派だといえます。しかし、マザーズ企業では、創業者などの個人が支配株主であるケースが多いとなっています。
(7) 連結子会社数
全体としては、300社以上連結している会社は18社、100社以上300社未満の会社は69社あります。
委員会設置会社では、300社以上連結している会社は3社にとどまり、10社未満の会社が25社と一番多くなっています。
3.その他コーポレート・ガバナンスに重要な影響を与えうる特別な事情
これ、なんだ?と思いますでしょ。
コーポレート・ガバナンス報告書記載要領によると、次のとおりです。
① 親会社を有している場合の当該親会社からの独立性確保に関する考え方・施策
② 上場子会社を有している場合の当該子会社の独立性に関する考え方・施策
結果として、親会社を有する多くの会社は、上記の内容について記載していたようです。「親会社」について記載していた会社は76.5%、「独立性」について記載している会社も50.6%だそうです。(まぁ、そのように書きなさい、と指導していた訳ですから・・・)
企業グループに関して記載している会社も22.6%にのぼったとのことです。
(その2 http://ameblo.jp/ir-man/entry-10030113089.html に続く・・・)