M&Aとデュー・デリジェンス | IR担当者のつぶやき

IR担当者のつぶやき

上場企業に勤務する公認会計士の、IR担当者として、また、一個人投資家としての私的な「つぶやき」です。

ときどきIR担当者的株式投資の視点も。

子会社株式評価損のことを書いたので、思い出しました。


世の中、M&Aブーム。


そういえば、M&Aとはまったく無縁な当社にも、しばらく前に案件が持ち込まれたことが1~2回ありました。

一回は社長に直で。もう一回は、ある役員さん経由で。


うちも一応(^^; 上場企業なので、ただカネ出すわけにはいきません。

相手会社の経営の内情はうすうすわかっているといっても、ちゃんと意思決定資料として相手会社の財務諸表とかを網羅した投資計画なりを作らないと。


どこもそうでしょうけど、話を持ち込んでくる方は業績推移の表を持参で、ちゃんと黒字の会社です!かなんか言って、どこぞの個人会計士の株式評価書も付けて・・・。鼻息は結構荒いですよね。

で、聞きました。


「B/S(貸借対照表)見せて。」






以後、音信不通・・・(爆)


アホか。とんでもない累損や保証債務を抱えているかもしれないのに、はいはいとOKできるわけないでしょ。


もう一社は、さる会社の投資銀行部門からのご紹介。


資料を要求したら、しばらくしてドサッとダンボールで届きました。


ひえ~っ!!


これ全部見るの・・・?


(言うんじゃなかった・・・)


仲立ちしてくれた投資銀行部門の方にも申し訳ないので、仕方なく、見ましたよ。


で、ただ眺めてもしょうがないので、自分が機関投資家で、初めてワン・オン・ワンミーティングで何を聞くか(=自分が何を聞かれたか)、心を澄ませて、山のような資料から疑問に思うことを、大項目5つくらい、細目で25項目くらい書き出して、相手に送付してもらいました。

会社の沿革でヘンなところとか、保有不動産で怪しげなヤツとか・・・。


返ってきたコメントが、


「こんなに真剣にデューデリされるんですかぁ?」








で、その後、音信不通・・・(爆爆)。


おいおい、マジですか!?


当社だって、さんざん決算短信やらIR資料やら、会社案内やら、商品パンフレットやら、これでもかというくらい市場に対して公開しているのに、未上場会社のM&A案件って、そんなに情報をクローズしたまま売り買いしてるの?


IPOの初値特攻隊より、まだ始末が悪いじゃないですか!

IPOの場合は、一応、目論見書は出ているし、情報ソースによっては今期業績予想も出ていますよね。


ですが、未上場会社の売り買いで、B/Sも見ずに、経営陣のバックボーンも見ずに買っちゃうところがあるんでしょうか。

買うほうの会社が未上場ならそれでもいいですが・・・。


やっぱり公開企業だと、株主や投資家に対する説明上、そうはいきません。

当然、監査法人に対して、被買収会社の経営計画などを示して、年度、年度で監査を受けていかないと、子会社株式の減損!てなことになりますから。


日立や富士通のような超大企業の子会社株式の評価厳格化、というのは事業がうまくいっていないほうの要因が大きいと思いますが、新興企業間のM&Aの場合は、どうなんでしょう。


ファースト・コンタクトは別にして、契約する前にはちゃんとデュー・デリジェンスしてからやっているのでしょうか。

だいたい、未上場会社がM&A案件にのぼっていること自体、創業者の事業承継対策か、業績が傾いていて支援を求めたいかのどちらかですよね。むしろ後者のほうが圧倒的に多いでしょう。


弱みを突かれて音信不通、というよりは、私としては、「そうなんです、そこが当社の弱みなので、どうしたら強化/補強できるかと考えて、御社にすがろうと思うんです。実はコレコレの考えがあって・・・。」というような話をなさるのが普通だと思うのですが。


機関投資家とのミーティングでも、社長や私のようなIR担当者に対して、「御社の強みは何ですか?」という質問は当たり前で、

御社の弱みは何ですか?」

と聞かれることも珍しくありません。自分で弱みを言わせて、きちんと認識しているかどうか見てるんです。しかも、

「弱みを認識しているなら、それに対する対策を講じているでしょ?それを聞かせてほしい」、

という二段構えの質問。


自然と身につきましたが、そのあたりが公開企業と未公開企業の差でしょうか。

ありがたいことです。


それにしても、やっぱり、いざという時のために、きちんとデュー・デリジェンスのノウハウはお勉強しておかねば、と思う今日この頃です。


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