先日急な仕事が入った
仕事場に置いてあるはずの道具を取りに行く時間もなくて
着付けの道具なら母が持っているだろうと思い電話をした

あるよと言われて
貸してと頼んだら
母はあっさりともう使わないからあげるよと言った

その瞬間胸の奥がぎゅっとした
母の声はいつも通りで特別な響きなんてなかったのに
その普通さが逆に心に刺さった

ああもう昔のように着付けをしていた頃の母はいないんだ
これからその道具を使うこともないんだ
母の中のひとつの時代が静かに終わったんだ

 



道具を受け取る側になった自分にも
ふと寂しさが広がった
親が年を重ねていく現実
自分も変わっていく現実

その道具には
母が歩いてきた時間や
わたしが見てきた背中
一緒に過ごした季節
もう戻らない記憶が染み込んでいる

 



いろんなものが一気に押し寄せて
胸がぎゅっとなった