「なぁ~」



「…」



「なぁ~」




「…」




「なぁ~ってば~」




「…ん~?」




ソファに寝転んで今度するミュージカルの台本を読んでいたぼくは、後ろからのし掛かってくるヤツを仰ぎ見た。




「本ばっか見てないでさ~、なぁ~」




ぼくの腰に肘をのせて 揺さぶってくる。…わかってる。誘ってるのは。
でも、そんな気にならないんだ。



付き合ってもう何年も経って、それこそ最初のトキメキなんか皆無で。




ほとんど一緒に住んでるようなもんだし、熟年夫婦もいいところ。



なのにこいつは、付き合いだした時とおんなじように 甘えてくるんだ。




「やめてよ」




ユチョンはぼくが返事したのを了解と取ったのか、後ろから喜々としてスウェットをずり下げにかかってる。

片手でそれを阻止しながら睨みつける。




「ふははっ!『やめてよ』だって!も~ジュンスは ツンデレなんだから~♪」




ツンデレとか。もういいって。

愛してくれてるのもわかってるし、ちゃんと愛してる。
それだけじゃダメなのかなぁ?


無理に振り払って起き上がる。

ぼくの様子に、不思議そうにユチョンが見つめてくる。




「あれ?なんか怒ってるの~?」




怒ってなんかないし。ただ、今はそゆこと したくない。



そう言って ソファに座り直して台本をまた広げた。


と、それを取り上げられる。




「っ何すんだよ?」




「なんで?」




「は?」




「なんで こっち見ないの?」



かがみこんできたユチョンの視線を避けるように ソッポを向く。

その顔をあの おっきい手で捕まえられて、目を合わせられる。




「…別に…」




「…オレのこと、もう嫌い?」




…なんでそうなるのかなぁ…?





「そんなことない」




「じゃあ、好き?」




息がかかるほど近づくユチョンの顔を見つめる。
あぁ、また泣いてる。

ほんとに…泣き虫。




「…好きだよ」




「ほんと?」




「ほんと」




「じゃあキスして!」




…こうなったらユチョンは引かない。
すねたら、そこらの女子より面倒なんだ。




目を閉じて待つユチョンの赤い唇にキスをする。

女の子みたいな唇のくせに、触れ合った瞬間から、ぼくの唇を食べちゃうみたいに食いついて離れない。

荒々しく動く舌を、中に突き入れてきて…絡め取られたぼくの舌は、吸い上げられて もう…頭ごと吸い込まれたみたいに 何も考えられなくなってしまう。




「んっ…はぅ…ちゅ、ちゅ…ぁ…」




下から入り込んだ手でイタズラされる。

最近自分でも気づくほどに育ってしまった乳首を つまみ上げられて、快感に仰け反る。

その喉に噛みつかれて。



ソファに倒され、のし掛かられたらもう、逃げ場はない。




「…ダメ?」



なにその捨てられた子犬みたいな目!
あぁもう…!



キュンキュンする胸に、ユチョンの頭を抱き込んで叫ぶ。




「ダメじゃない…!」




つくづくユチョンは、ぼくの操縦がうまいと思う。

ほんとは、ミュージカルの勉強したかったのに。ユチョンのことを考えると、集中できないから あえて無視してたのに。

すぐにそんな気にさせられてしまう。

ユチョンは、ずるい。

でも…愛してる。







END