世界選手権男子フィギュアスケート。
先に行われたショートプログラムで9位と出遅れた羽生選手。
インフルエンザに怪我。体調が万全どころか最悪で迎えた世界選手権。
世界最高得点を塗り替えたSPであっても彼らしさを出すことができず、
パトリック・チャン選手にその最高得点も抜かれることになった。
演技終了後のメディアの前で背中を向けて見せまいとがんばっていた涙。
このままでフリーを迎えたら心という名の翼が折れてしまうのではないかと思うほど
いつもの強気で無邪気な彼ではなかった。
「悔しい」と繰り返している姿さえ、今まで背負ってきたものに押しつぶされそうに
なっているのを傷ついた足で精一杯踏ん張っているようだった。
立て直せるのだろうか?何よりも心を。
そして、今日。迎えたフリープログラム。
明らかに、違っていた。静かな闘志が小さな画面から伝わってくる。
ストーリミングで途切れ途切れの映像でさえ、伝わってくる気迫を超えた何か。
見てるうちに自然に涙が流れてきた。
左ひざだけではなく、古傷の右足首も、さらに手首も。
身体の要に沢山の痛みを抱えながらも、4分半、彼は演じきった。
激しい祈りがそこにあった。
フィニッシュでエスメラルダと共に永遠の眠りについたカジモトが
風に吹かれながら空を上っていくかのように突き上げられた両手は、
今彼ができるすべてをやり遂げた証明になった。
音楽の終わりと共に雄叫びを上げる姿。そして倒れこむ姿に現れていたのは
すべての限界を超えた4分半だった。
18歳の若く美しい勇者はまた、人の心に残る演技をした。
技術や表現ということだけでなく、心を振るわせる感動を残してくれた。
羽生結弦。アスリートであると同時に、孤高のアーティスト。
彼はきっと世界の頂点に立つ。それはそんなに遠い未来じゃない。
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ゆづ、もう何も考えずにゆっくり休んで怪我をしっかり治してね。
来シーズンは、沢山の笑顔が見れますように。