ハムスターの恋 その3
「やったあ。じゃ、決まり!じゃ、ちょっと待ってて。うちからこの子のおうちを持ってくる。替えの藁とか、ご飯とかも買ってあるし」
「イテ!急に降りるなよ。10分しか待たないぞ!」したたかに尻を痛打した。
「ちゃんと10分で戻るから。・・・・手」
「??手?」
「手を出して」
両手を広げて差し出す。
そこにTシャツから取り出したハムスターを乗せると彼女はオレの手を両手で包み込んだ。
「こうやって優しく包んでおくと逃げないから」
「・・・ああ、判った・・」
彼女は後ろを一度振り返り手を振ると走ってどこかに消えた。
「コレじゃ、おにぎりも食えねえじゃんか。なんだよ」
少し手を開いて覗いてみる。
そこから小さな鼻を出したと思ったら、するりと体を滑りださせた。
オレはお手玉をするように手をあわてて握りなおした。
「おい、逃げちゃうよ。これじゃ」
「おにいちゃーん。待ったあ?」
両手に大きな手提げと籠をもって走ってきた。
わざと不機嫌な顔で「待たせすぎだぞ」
「ごめん、おかあちゃんに捕まって・・」
「で、どうした?」
「ハムスターを友達に上げてくるって言ったら出してくれたよ、夕ご飯までに帰って来いって」
「そっか」「ウン」「じゃあうちに行こう」「ウン」
オレは手の中のハムスターを籠に入れるとその籠を持った。
その子はバッグを抱えて後ろから付いてくる。
もしかして、頭の悪い子か?
見知らぬ高校生に付いてくる無邪気な中学生。
女子ってこんな簡単についてくるのか?
コレもナンパなのかな?
逆ナンパか?
一人でぶつぶつ言っていると
「何を独り言、言ってるの?変な人と勘違いされるよ」
変な人についてくるお前のほうが変だろう。
「まだ遠いの?」
「団地のはずれだからな。アソコだよ」
「へえ、こっちの団地もあったんだ」
「ここらこっちは学区が違うからな。オレは西小学校だけど、君は中央小だろ」
「西小なんだあ」
「ウン、中学は日の出中じゃねえのか?」
「私立だから」
「そっか。どこ中?」
「セントクリスティ。」
「げ、お譲様学校か。女子校って面白い?」
「面白い訳無いじゃん。男の子いないんだよ。恋愛したいのに・・」
「まだチュウボウのくせして」
「何?ちゅうぼう・・って」
「中学生って意味」
「じゃ、あなたは中学生は恋しちゃいけないって言うの?」
「あなたはって・・・中学生は好きとか嫌いって言うんだろ」
「遅れてる・・恋愛は自由よ、年齢じゃないわ」
「お前、まだ中学生だろ」
「さっきから、お前お前って。わたし、お前じゃないわ。ユリよ、百合。」
「はいはいゆり様。ココの4階」
「階段4階までって大変ね」
「文句言うな、オレの所為じゃない」