ハムスターの恋 その1
コンビニの袋を両手に下げて、近道を選んで公園を横切ろうとした。
中学生くらいの女子がシーソーにまたがったまま、ぼーと遠くを見つめている。
頬には涙の跡が光って見える。
気になって「どうした?いじめられたのか?仲間はずれにされたのか?」
少女はびっくりしたように顔を上げて、しばらく躊躇した後に両手に包んだものを
そっと手を開いて見せてくれた。
手の中には小さなハムスターが居た。
「ハムスターじゃん。かわいいね」
「ウン」
「で、なんで泣いているの?」
「友達んちでいっぱい生まれたからあげるって」
「よかったじゃん」
「でも、駄目なの。家にもって帰ったらお母さんがねずみは嫌いだから返してきなさいって」
「そうか、ねずみとは全然違うと思うけどなあ」
「ね、尻尾だってふさふさだし、あんなに汚くないし」
「お母さん、動物苦手なんだ?」
「ゆりんち、ネコ飼ってるの」
「じゃ、無理だな。友達に謝って返しちゃえば・・」
「絶対大事にするからって無理言ってもらったから、駄目だよ」
それで途方にくれて涙していたのか。
オレはコンビニの袋からおにぎりを取り出して
しゃけの文字の入ったセロハンの固まりを渡そうとした。
「ゆり、要らない」
「お腹がすいてると元気が出ないぞ」
「でも食べたくない」
「そっか」俺は仕方なく、自分でセロハンをはがしてかぶりついた。
「お兄ちゃん、どこの人?」
「この団地の一番はしっこ。Hb-3」
「動物好き?」
「まあ、苦手じゃないけど、犬は散歩が面倒だし、ネコは柱で爪研ぐし・・・
大体、団地の契約で部屋で動物飼っちゃいけないって」
「ゆりんちもそこ団地だけど、ネコ飼ってるし、隣だってインコ飼ってるよ」
「まあ、そうだけど」
規則違反だが、ペットのいない家のほうが少なくなってる。