ばん!刑事は机を叩いた。
「拾ったあ?この街のどこにこんな女物のパンティが落ちてるんだ?」
「だから公園で・・」
「君は公園でそんな物を見つけたら大事にポケットに
隠し持つのか」
うん、私もそうするかも知れないと思った。
「あ、あなたは今日は大変でしたね。もうお帰りいただいても
いいですよ。実はあの警備員の方も興奮が収まったら
問題にしたくないとおっしゃってますので。一応、お互いに
挨拶して分かれたらどうですか」
「あ、ええ、さっきはすみませんでした」
「いえ、こっちこそ。もうちょっと歩行者に気を遣った
安全運転でお願いします」
なに!まだ言うか?
かっとしたがそこは自分を上手く押さえ込んで
うなづきひとつでごまかした。
これ以上かかわっていても仕様が無い。
「えっと免許はお返ししましたっけ?」
「あ、そうだ。まだコピー機の下に
「ああ、ではこれはお返しします。今日は色々あって
われわれも普段と違って不手際でお時間取らせてすいません」
「お巡りさんもご苦労さんです」
「ではあなたの荷物はこれだけですね」
「ええ」
洗濯物の入った紙袋を受け取った。
「あ、ちょっと待ってください。一応中身を確認してもらったほうが
いいかな」
「確認って汚れもんですから」
警官が袋の中を覗き込んだ。
「ちょっと待ってください。これは女性ものの下着ですね」
「あ、ええ、女房の」
「奥さん?あなたが奥さんの洗濯物を洗うんですか?」
「いけませんか」
「部長、どうしましょう?一応鑑定しますか?」
「鑑定?」
「いま女性ものの下着が奪われて重要な事件になってるんですよ。
あなたもさっきの女子高生の泣いているのを見てたでしょ。
かわいそうに・・」
刑事部長はのっそりと近寄ってきて
「こういう状況の中で女性ものの下着を持ち歩いている人間は容疑者として
扱わざるをえませんね」
「鑑定って・・」
「奥様のものかどうかDNA鑑定に・・女子高生のDNAと一致するかも・・」
「え!まさか」
「まさかという考え方は事件の見落としになりかねない」
「だって女子高生が襲われたときに私は交番に居たんですよ」
「ほう、女子高生は何時に襲われたんですか?」
「え?いや・・それは・・・」
「あんたが女子高生を脅迫してこの下着を奪ったんでは?」
「ち、違いますよ。これは確かに家の洗濯物です」
「その証明できるものは」
「証明って・・言われても・・・そうだ。女房なら証明できます。自分の下着は
彼女ならわかるはずです」
「残念ながら身内の方の証言は採用されません」
「じゃあ・・どうやって?」
「だから鑑定します。科学的な鑑定だからじきに所有者は判明します」
「DNAっていうと」
「汚れ物ですから身体的付着物を採集して検査するんです」
汚れ物から採取する検体って・・まさか・・あの部分の汚れじゃあ
ないだろうな。
そんな恥ずかしい思いは女房にさせられない。
「ここに公園に落ちていた女子高生のものと思われるパンティと
この男が持ち歩いていた女物のパンティを科学捜査班に依頼してくれ」
「はい」警官が機敏に白手袋をはめてビニール袋にそれらを入れた。
「ちょっと勘弁してくださいよ」
「事件の犯行を認めるのかね」
「いや、そういう意味じゃなくて・・」
「奥さんの連絡先は?」
「連絡するんですか」
「当たり前だ。奥さんのDNAを採取しなければならないから
髪の毛、唾液その他DNAの解るものを・・協力願うしかない」
「今日は本署のほうで一晩過ごしてもらうことになるよ」
「手錠は・・」
「必要ないだろう。おとなしくパトカーに乗ってください」
パトカーに乗り込むときアルバイトの警備員がそらみろといった
表情を浮かべたのが悔しかった。
もうひとりの犯人・・・絶対奴が本星に違いない
は別のパトカーに乗せられていく。
パトカーの赤いパトライトがまるで映画の撮影のように赤く顔を照らし出した。
マスコミのフラッシュが焚かれる。
なんでこうなっちまうんだ。
このあと女房が警察にくることになるのだが
地獄はこのあとも口を広げて舌なめずりをしていたのだ。
つづく