手術台に上って説明を受ける。
前日に説明されてたので、今さら文句も言えないし・・・
まず、気持ちを落ち着かせる注射を打ちます。
えーえ、是非打ってください。
点滴を採ります、そこから麻酔を入れていきます。
そうね、たっぷり麻酔してね。
おでこに麻酔が効いてるかどうか脳波を見るテープをはります。
あ、そう、コレは昨日は聞いてなかったけど、安心だね。
指先が熱く感じると思いますけど麻酔が効いてる証拠なので・・・
ふんふん、だんだん熱くなってきたぞ。
触っているの解りますか?
え、どこを触ってるの?だんだん声が遠くなる・・・
・・・・・
あれ、痛い。今胸の肋骨触ったでしょ?
あ、今度は足首を持たれて・・・
え、今、手術中?
ドクターたちの声が聞こえる。
も、もしかして麻酔が覚めた?
夢の中で体を触られてる・・・
あのう、麻酔さめっちゃったんですけど・・・
どうしよう・・・指で文字を書いてみよう。
気がついてくれ~。
あ、指はカバーの下にもぐってるのか・・・
声は出せない。太いチューブを喉に差し込まれ、
コレは南極3号状態なのか?
そうだ、目を開けばいいんだ、がんばって目を見開いた。
遠くでドクターらしき人の声がする。
「この患者さんは時々目を半開きにするんだよね」
いや、確かに目がでかいので半開きになって気持ち悪がられるが
今は意識して目を開けてるんだ。
麻酔が切れようとしてるんだよ~。
あとどれくらいかかるのだろう。
手術は順調に行けば5時間、途中で何か問題が出ると6時間7時間
かかることもありますって言ってたなあ・・・
もし麻酔が切れて耐えられない痛みを感じたらどうしよう。
今だって、死ぬほど痛くはないけれど(麻酔がまだ効いているのか)
あ、痛い、それ以上触ると痛いよ~
恐怖の中で手術は終わった。
ICUに移されて家族の顔がのぞきこんでる。
俺は目を開けて頷いた。
先生は「順調に終わりました。大成功ですよ。
3本のバイパスを作りましたからもう詰まることはないでしょう。」
「よかったね、成功したって。・・・解る?」
「ああ、ああ、」目で必死で合図する。
「もう麻酔が覚めてるのかしら・・」と女房。
「いや、麻酔が覚めるのはあと5時間かかりますから、
明日10時以降に面会できますよ」
嘘だ~、俺はもう麻酔が覚めてるぞ~
喉にチューブを差し込まれ、酸素を送りこまれる。
喉がイガイガ、ガラガラ・・・水が飲みたい。
でも声を出せない、意識は覚めてるのに
この状態で5時間。
頼む、俺は麻酔が覚めてるんだ。助けて・・・
それから5時間後に、やっとのどのチューブを抜いてくれた。
手術が入室9時
前処理に1時間
実質手術5時間
ICU}に移動したのが午後3時
チューブが外れたのが午後8時。
そこから朝まで寝かされて・・・
夜中に何度も看護婦に水を飲ませてくれと頼んだ。
「まだ時間がたってませんから」とかわいい看護婦。
「医者はチューブが取れたら水が飲めるって言っていたぞ」
「でも取れたばかりですから。普通は明日のあさ・・」
この看護婦はどエスだ、きっと。
「喉が張り付いてつばも飲めない・・」
「じゃあ、ガーゼに水をしましてそれで口の周りを拭きましょう」
「た、頼む」
「じゃあ、これで」
俺はそのガーゼをしっかり歯で噛んで離さなかった。
「駄目、喉に詰まらせると大変・・・」
「ふぁいじょうふ。ちゅーちゅー」
数滴の水がのどを潤す。
もうこんな恐怖を味わいたくない。
先生の満足げな声と看護婦の悪魔の笑顔が
忘れられない。