神崎は6校の大学を受験すると親には話していた。しかし実際に受験するのは滑り止めの一校だけと決めていた。受験費を自分のポケットに入れることにした。その金で学校へ行かず映画を観たりゲームセンターで遊んだり、WINZで馬券を買って熱くなる時間を過ごした。
警察は学校のクラスメイトの聞き込みから再度始めることにした。
高木の友人関係から聴取を始める。
高木の異性の交際関係を丹念に洗う。
「小枝子どうしちゃったんですか?学校来なくなっちゃったけど」
「捜索依頼が出ていてね、探してるんだよ、おじさんも」
「で、何をしりたいの?」
「高木の友人関係、とくに異性の問題を抱えてなかったか」
「小枝子は真面目な子であたしらが男の子の話しても輪に入ってこない子だったから」
「ふーん、真面目ね」
「大学はいるまでそっちはお預けだって」
「そうか、友達でもいいんだけど」
「そうね、急に言い出して吃驚したことがあるわ。神崎君て女子にはあんまり人気ないんだけど・・頼りがいのある男って褒めだしたの。あたし達はぜんぜん頼りがいのない、むしろ虐められてた感じなんだけど・・」
「神崎・・・」
「鬼頭君が変な死に方したの知ってるでしょ。先生には鬼頭の話はするなって言われてるの。ナイショよ、あの鬼頭のぱしりやらされてたぐらいだから」
「で、高木は神崎と付き合ってたのか?」
「なんか痴漢に合ってたのを助けてくれたんだって」
「ぁ、ありがとう。参考になった」
「小枝子、卒業前にもう一度会いたいな、お巡りさん、必ず探してね」
蓑田は廊下を走り、階段を転げるように飛び降りた。
職員室がガラリと開いて「こら!廊下を走るな!」と怒鳴られたが無視した。
タクシーに飛び乗り対策室に電話を入れる。
「管理官!出ました。金星です。同級生の神埼、コイツに間違いありません。高木は痴漢に合って神前に助けられたそうです。その痴漢は三浦だと思います。そして鬼頭の使い走りをさせられていじめを受けていたようです。はい、私はこれから神崎の自宅に張り込みます」
「あせるなよ」管理官の返事を聞く前に神崎の自宅に着いた。
神崎はうちにいなかった。通りで張り込んでいるところへ携帯がなった。
「あ、管理官。え、神崎の父親は警官ですか!今日は動きがないので一旦署に戻ります」
神崎は受験をしていない大学により写メールで合格掲示板を移して自宅へ戻った。
「かあさん、だめだったよ。俺は涙でボードが霞んで見えないんだ。万一と思って写真を撮ってきたけど見てくれないか」
「そうかい。残念だったね、でもお前の第一志望は東大の法学部じゃないか。どれどれ一応確認しようかね。お前の番号は?」
「番号?あ、えーと1206だったかな」
「だったかなって情けないね。受験票を見せてごらん」
「駄目だと判ったら悔しくて破り捨てちゃった」
「おまえ、馬券じゃないんだから」
「はは、はは、そうだね」
「とりあえずお父さんに電話しときな、心配してたから」
「勤務中だろ、今晩でいいよ」
神崎巡査は新宿署に呼ばれた。
署長から耳打ちされて「呼んだのはわしぢゃない。本庁の管理官が来ておられる、君の身柄はうちが預かる」
「身柄って・・」
ドアの前で靴をカチンと鳴らし「神崎巡査、入ります」
「ああ、入りたまえ」
「失礼します」
「君は子供がいるね」
「はっ!息子が一人、娘が一人でありますっ」
「心を落ち着けて聞きたまえ」
「はっ!何でありましょうかっ?」
「突然だが君の昇進が決まった」
「ええええ!本当でありますか」
「うそ」
「え?」
「ウソだよ。ただしこの事件がうまく片付いたら昇進を推薦しよう」
へなへなと座り込んだ神崎巡査は、机にすがって立ち上がった。
「君は本日本時刻から私の下に入り捜査に協力してもらう」
「わ、判りました」
「ではまずこの漫画を読みたまえ」
「はあ?漫画でありますか?」
「そう、この漫画に事件の秘密が隠されている」
「父ちゃん、遅いね」
「しょうがないよ。平巡査だもんね」
「おい!帰ったぞ」
「お疲れ様だったね」
「とうとう俺も昇進が決まった!」
「ええええ!本当でありますか」
「うそ。でもうそぢゃない」
「どうしたんだい。おまえさん?」
「今度、管理官のもと直接の指令を受けて事件を担当させて貰うことになった」
「か、管理官!管理官て偉いんだよね?」
「おお、雲の上の人さ」
「頑張って遅れよ。よかったね」
「へえ、よかったね。ところで受験の・・・」
「ばか!そんな話今日はやめときナ。父ちゃんのお祝いが先さ」
「おおさ、今日は発泡酒じゃなくて、ビールを頼む」
神崎家のささやかな幸せのひと時だった。
神崎は警察が一歩近づいた事を感じ取っていた。
「ここは冷静に振舞うしかない」
二日後の滑り止め受験に備えて勉強した。
テストの手ごたえはそこそこあった。
合格すればマスノートは捨ててしまおうと思った。
新しい事件が起こらなけりゃ、お蔵入りになって警察は忘れるだろうサ(甘いんだなあその考え!、筆者・注)
つづく