管理官の決定で高木の死は伏せられ、相模明人は泳がせることにした。
もう高木からは何も聞きだせない。押収した交換日記を丹念に調べた。
「高木が相模に、相模が高木に殺意を帯びた怒りを覚えることがなかったかどうかだ」
「解りました。M、私は明日から、相模明人に張り付きます」
「何か出たらチェックメイトだ。チェック明人!」
「はいはい。M管理官。いえ、リュウザキちゃん、そうでちゅね」
小池巡査は完全に手玉に取っている。
高木は法医学の解剖に回された。
神崎はまだ高木の死を知らない。
そして怒りの子猫はニュースにならない高木の死亡記事を探したが誰も怪死をしていない。
何しろ高木の携帯電話は警察に没収され連絡が取りようがなかった。
メールをしても電話をしても電源が既に切れており、応答がないのだ。
気持ち的にも来人=オナペットの存在が信じられなくて依頼をやめようと考えていたところだ。
結局、神崎は警察の目を高木から逸らす為にやったことが自分の嫉妬心から高木を処刑してしまったことを悔やんでいた。
おそらく髙木は死んだ。
警察は一歩俺に近づくだろう。
浪人生のほうに目がいくのはせいぜい2週間か、実際に高木が浪人生と交際を始めたのが三浦の死後と判れば、時間つぶしにもならない。
俺が頼れるのは自分しかいない・・・死神は現れないのか・・死神なら何らかの能力を持っているし、ノートの違った使い方も教えてくれる・・机に伏せて考えていたところ、背中に不気味な違和感を感じて起きた。
天井の隅に化け物がいた。
「死神?・・ノートの持ち主だね?」
「ひゃひゃひゃ。鶴光でおま」
「鶴光?まだ生きてるはずだよ。最近あまりみないけど死んだとは聞いてない」
「ひゃひゃひゃ・・鶴光の魂の悪魔でんねん。悪の抜けた後の鶴光は厭らしさの抜けたただのおじさんや」
「何で今頃・・」
「遅くなってすまん。これから一緒にやろう、えーやろ、な、それでえーのんか」
「ああ、お願いしたい。警察が動き出したようで困ってるんだ」
「ほな、提案しよか?悪魔の目を上げてもエエでェ」
「あ、あの悪魔の目か?」
「大体そんなモンやけど・・ちょと違う」
「何が・・俺の命の半分と交換なんだろう?」
「お前の金玉半分を貰う。どや~」
「爆笑問題の田中かよ。どうだ林檎一箱と交換で・・」
「あほ言いな・・わてはバナナしか食えへんでェ」
「じゃ、バナナ一箱で・・」
「嫌や。お前のバナナならええでェ」
「この変態悪魔!」
「そないに褒められたらカナンがな」
「名前はなんと云う・・?」
「・・妾腹亭万光はんや。呼べいつでも出てくるがナ、ちゃんとはん付けな臍曲げるで!。ほな、さいなら」
頼りがいのない悪魔だ。しかし切羽つまったら頼んでみよう。片玉なら死にはしないか。
警察はプロファイリングにも手詰まり感を覚えていた。
「リュウザキ管理官、テレビで会見やりましょうよー」
「しかし顔と名前を出すのはヤバイんだろう」
「顔はバレますけど管理官は別名の別名ですから」
「私は警察をもっと風通しをよくするという目標がある」
小池が「ねえ、Mチャン。やっちゃえば?テレビで会見なんて格好いいじゃん。やればご褒美上げるからン・・ねえ!」
「やめろ!そのMちゃんて言い方」
「だってえ・・管理官Mなんだもの。こないだだって・・」
「やる!やります!やらせてもらいます。だからもうその話は・・勘弁してくれ」
「じゃ、テレビ局に連絡しまーす」
「とほほのほ。室井管理官はこんな時どうするだろう?青島ァ・・」
「リュウザキさん、ここは踊る大走査線は捨てて、デスノートでやりましょう」
翌日、ビデオでMの会見姿を収録してオクラテレビに持ち込んだ。
「このテープを今日の5時にニュースで生中継として流すこと。いいですね」
「判りましたよ。でも前回の番組では視聴率1.7㌫ですよ。ショッパかったなあ。今度も視聴率取れなかったら次回からは他局でお願いします。俺も首かかってるんで」
17時のニュースが始まった。
「オナ。私がMだ。前回みたいな替え玉じゃない。君は東京にいる。何故私と勝負しない。
私は姿を出した。君も姿を現せ。君への包囲網は絞られてきている。
出家するなら・・・リュウザキさん、出家じゃなくて出頭です。出頭。・・・・出頭するなら御上にもお慈悲はあるぞ!あ、今のリュウザキって入っちゃた?まずくねえ?名前ばれるじゃん。カットカット!え、大丈夫?聞こえてない?
よし、・・・あー必ずお前を捕まえてやる。以上。ふー、終わった。恐ェェ。まだ廻してる?切れよ、もう。」まるでホームビデオの失敗作品である。
番組放送後も何の反響もなく、警察の対策室で恋人からの電話を待つ気分で待った。
「やっぱり何の反響もないじゃないか。なんかギャグが滑ったみたいで格好わりいよ。小池チャン今日付き合ってくれるんでしょう。ねえ、ご褒美約束したよね」
「はいはい。ママのおっぱいちゅいたいの?お預けよ。あぁ・とぉ・でェ」
蓑田刑事は浪人生の相模明人を張り込んでいた。
相模明人は予備校にいっても高木は休んでいるのでどうしようもなかった。
公園に行っても現れない。
先日女性がオナニーを路上でやって警察に連れて行かれた噂は聞いた。
まさか、あの真面目な高木が・・そんなことは無いさ。
デートキャンセルして、連絡が無いのはおかしい。
何度も携帯を確認する。
ソコへ背中から声がかかった。
「相模明人君だね。少し話をさせてもらっていいかな?」
「え、ええ。貴方は?」
「こういうもんだが」警察手帳を見せる。
警官の一番のいい見せ場だ。犯人はびびる。その一瞬で犯罪にどこまで関っているか見抜く。
「はあ、何か」
全くうろたえない。知らないのか?
「高木小枝子。知ってるね。」
「はい。僕の彼女です、最近連絡が取れなくて心配してました」
「なにか死因に心当たりは?」
「死因って死んだんですか?悪い冗談はやめて下さい」掴みかからん勢いだ。
「知らなかったのか!ああ、病院で死んだ」
「死んだって事件に巻き込まれたんですか、交通事故?」
「一応被害者かな」
「携帯も最近通話できなくて・・ああ小枝子。僕は何も知らなかった。うわ~!」
「落ちつき給え。気持ちは判る」
「どうして・・どうしてっ、死んだんだ~あう、おう」公園の大木を叩きながら泣いた。
「君は・・・君は駅で少女がオナニーをして警察に連れて行かれたという噂を聞いてないのか?」
「ああ・・あの噂は聞いてます。え、まさか小枝子が!ウソだ。ウソだそんな事」
「真実なんだ」
「小枝子はそんな女じゃない。俺の知ってるさえ子は・・もの凄く真面目な・・」
「いつも予備校の帰りに公園でキスしてたことは警察は知ってるんだ」
「キスは許してくれたが・・それ以上は好きな人と約束したから駄目だって許してくれなかった」
「君らの交換日記は警察で押収した。内容は受験勉強や真面目な交際が読み取れる」
「ああ、小枝子。君はそんな女だったのか・・・」
「彼女は処女?かな」
「そう思ってました」
「思っていた・・・ふーン、ホントに知らないんだな」
「ぃま彼女はどこに?・・・」
「警察の遺体解剖室だ。これから一緒に行くか?」
「是非あわせてください」
タクシーで新宿警察に戻る。
遺体安置室で対面させた。
相模明人は安置室で泣き続けた。
蓑田刑事は対策室に内線を入れ、リュウザキに報告する。
「相模明人はシロです。今、下の安置室にいます。管理官もあってみてください。シロだと判ります」
リュウザキ管理官はサングラスで顔を隠して降りてきた。
「ご愁傷様。彼女の死は我々も心を痛めている。犯人逮捕のために我々に協力してくれないか?」
相模明人は対策室で警察の追っている怪奇死事件を聞かされた。
「あんな醜い事件に小枝子が巻き込まれるなんて、・・・なんでも協力します」
「調書を取らせてもらいたいんだが」
「はい、何でも聞いてください。それが小枝子の為になるなら」
「高木小枝子の交際関係を知りたいんだが・・・」
「僕が小枝子と付き合ったのは・・・・・・」全てを語った。
「すると小枝子の調書と食い違いが出るな!」
「ほんとです。初めてのデートの翌日から交換日記もはじめたもので間違いありません」
「小枝子は何かを隠してたと」
「管理官、鬼塚、高木は同級生です。クラスメイトの線でしょうか?」
「そうだな。チェックメイト!クラスメイトをチェックメイトだ」
つづく