高木に付き添った婦人警官は笛を取ろうと必死に格闘していた。
高木は後ろ手に手錠をされているためにベッドの角や枕を股に挟みこんでもオナニーをやめない。
そしてしっかり咥えた笛を、「ひょっ、ひょっ、ひょぴー、ひょぴー」と吹き続けている。
「ネ、高木さん。笛を離して・・怪我すると危ないから。ね」
そこへ宇崎龍が入ってきた。
「どうだ、患者は?何か聞き取れたか?」
「男性は入ってこないでください!誰ですか、貴方は?」
「本庁の宇崎龍・・管理官だ」
婦人警官は驚いて起立、敬礼した。
「楽にしたまえ。この事件は今日から本庁に管轄になった。対策室は新宿に置く。蓑田刑事の推薦で君もチームに入ってもらう」
「ありがとうございます」
「名前は?」
「小池美代巡査であります」
「よろしい。患者は笛を離そうとしないのか」
「はい。いま説得してるところです」
「何を暢気にやってる!患者の死がかかってるんだぞ。犯人の手がかりが無くなるぞ」
「患者は高木小枝子といいます。ね、高木さん。笛を口から・・・」
「強引に取りたまえ」
「強く噛んでいて・・とても」
「どきなさい。私がやる」
宇崎管理官は強引に笛を抜き取った。強引過ぎたため真珠のような歯が3本抜け飛んだ。
口から血を流しながら「はあ、はあ、死ぬ~、死ぬ~」と叫んでいる。
「小池巡査、医者を呼んで・・早く!高木が死ぬぞ・・」
「ぁ、あの~これは。・・本気で死ぬんじゃなくて・・気がいく・・という、女性が・・気持ちがよくなると・・こういう・・声を・・」
「あっ!そ、そんな分かっている」顔を真っ赤にして宇崎管理官はうつむいた。
「私のせいで口から流血してるから・・医者を・・」
しばらくして頭にCDを貼り付けたような医者が現れた。
「抜けた歯はどこに・・ああ、一本は・・・」
「早く言いたまえ」
「貴方は?・・・」
「いいから早く」
「これはギバですな」
「私のあだ名はどうでもいい」
「はあ?ですからこれらの一本は偽歯です」
「あ、いや私のあだ名がぎばチャンだったものでつい・・」
「いま血止めをすればすぐに止まります」医者は簡単な治療を施し出て行った。
「管理官はご結婚は?」
「まだ、してない」
宇崎管理官は独身でまだ若い。
ズボンはテントを張りギンギンになっているのが外からも分かる。
小池巡査は宇崎管理官が若くて好みの柳葉に似ているので秘かな恋が始まっている。
小池巡査は始めての男性は誰でも恋人の対象としてみる悪い癖があるのだ。
好みの男がテントを張っているのを想像して赤い顔になる。
高木は布団の中で枕を挟んだ腰を艶めかしく動かしているので、却っていやらしさが増す。
赤い涎を垂らし、目はトロンとして喘ぎ声がいやらしい。
「兎に角、君は高木から何かを聞きだしてくれ。私は対策室に戻りプロファイリングを始める」
赤い顔した二人は敬礼をしあった。
出口に向かって歩き出した宇崎はズボンが突っ張って歩きづらいらしく、コートで前を隠して、腰を引きながらぴょこぴょこ出て行った。
対策室の構えは一応出来上がり署長と話していた。
「間もなくこちらにお出でになるだろうから・・私を紹介してくれ。上手く頼むよ」
「ああ、解ってますよ」
「花はここで、おかしくないか?」
「それよりこの部屋暗くないすか?」
「それは我慢していただくしかない。それでも部屋が足りず、他の捜査本部を移したんだ」
「あ、来ましたよ」
副所長が腰を低くして案内して来るのがガラスの向こうに見える。
所長は驚くほどの速さでドアに駆け寄りドアを引いた。
「お待ち申しておりましてございます。私は署長の・・」
「蓑田、資料を出してくれ!プロファイルを始めよう」
「あの、わたくし署長の・・」
「あ、コーヒーを頼みたい」
「ハイ解りました。副署長コーヒーをポットで・・あのわたくし署長の・・」
「君も事件ごとに資料を並べてくれ」
「あ、あハイ。副所長もここに並んで・・えー、私署長の・・」
「コーヒーはまだかね」
「今取りに行ってきます・・・おーいコーヒーはまだか。早くしろよ。・・」
「今までの怪死事件を時系列で並べて行こう」
宇崎管理官はそばからかちゃかちゃキーボードを叩きだす。
30分もした頃「わかったぞ。犯人は東京近辺にいる。確立的には83.4㌫だ」
「それは最初から想像できることで・・」
「君のは想像だ。私はプロファイルで出した確実な数字なんだよ」
「管理官、今日は新宿署主催の宴会を予定させていただいてますが、ご都合は?」
「五月蝿そうだな。一時間は付き合う。それ以降はチームの懇親会をやろう」
その一言で蓑田は機嫌を直した。
なかなか気を遣うキャリアじゃないか。上手くやっていけそうだ。
蓑田が所長に「宇崎管理官が喜んでお受けする」と伝えたもので小躍りして喜んだ。
「蓑田君、君の裸踊りと・・犬塚巡査のモノマネで盛り上げてくれたまえ」
「それより半端な店は本庁のキャリアには向かないんじゃ・・うちの管轄の新宿らしい接待の方が喜ばれるんじゃないでしょうか。つまり女の子いる店のほうがいいかと」
「ふ~む、じゃ一軒目は挨拶程度にして、二軒目はお前に任せる」
「あの、管理官は一軒めはお受けするがそれ以降は対策会議を希望されてます」
「じゃ一軒めは途中退席でお願いする」
「残り時間は?」
「それは署長、副所長と本部長で飲む」
小池美代が1次会の終わり頃にに合流して店を変えて対策室の慰労会になった。
結局、蓑田の案も取りやめになり居酒屋で飲み会になる。
宇崎管理官は自分の奢りで慰労会をやりたかったのだ。
その気持ちは嬉しい。
乾杯し、ひと時盛り上がったが、最後にはやはり事件の話になる。
「俺にひとつの案があります。・・・管理官にLいやエムになって貰って犯人に呼びかける。
犯人は絶対デスノートの八神月を気取っています。管理官Lのリュウザキを演じてもらえば必ず乗ってきます。リュウザキ・・宇崎龍・・龍・宇崎・・リュウ・ウザキ・・リュウザキ・・万歳~。まさに管理官じゃないですか!」
管理官は片方のほっぺたを膨らまし考えている。
この変な癖で、ぎばチャンのあだ名を付けられたのだった。
小池巡査はこの振りが可愛く見える。
「俺がリュウザキなら蓑田は何になるんだ」
「八神局長・・ですか」
「お前がそんな格好のいい役か」
その一声で慰労会は打ち切りになり、解散した。
「小池、送ってくれないか。君は酒は飲んでないだろう」
「はい、管理官」
「俺は小池巡査の車は断るよ、まだ死にたくない」
「ふん!誰が乗せるもんですか」
「じゃ明日は8時には顔を出してくれ」
「了解です」
「おい、小池巡査。もう一度高木の様子を見ておきたい。病院に回ってくれ」
「解りました」
病院について夜間窓口に回る。
1103に入るとあの艶めかしい姿と声。
「あー、エホン。高木、気分はどうだ?」
「ああ、ああ、死ぬ、死ぬ、あ~・・・」
またテントが張られる。
「管理官。高木は今夜死ぬかも・・・三浦もその晩に亡くなってます。今晩は付いていたほうがいいのでは?」
「そうだな。解った。私が一晩見ていよう。小池は帰っていい」
女の六感。ここに管理官を残しておくのは危ない。
高木のあの姿、声にこの男は我慢しきれず、いたずらもしくは犯してしまうかも・・
「解りました。なら私が一晩一緒に」
「よし。二人で監視だ。簡易ベッドを病院に頼んでくれ」
つづく