はづきはふりちんが退院したらすぐに会いに行こうと思っていた
しかし大変な怪我である。
もし、もう2度と歩けなかったらあたしが一生側にいてあの人の杖になろう、それには結婚してお世話をしなければ。
そんなことまで考えた。
1ヶ月待ち2ヶ月待ち連絡はない。
・ ・・梅雨に入ってすぐの事だった。
朝から雲が重く垂れ込め、気分の晴れない一日だった。
何か悪いことが起こらなければ良いがと思っていた時、待ちわびていた携帯が鳴った。
「もしもし・・」あれ?ふりちんの声ではない。
「はい。・・・どちら様?」
「博多の慈善会病院の宅間といいます。高瀬さんの主治医でした」
でした・・と過去形で言ったことが気にかかる。
「はい、大変お世話になってます、あの、高瀬さんは元気に・・」
「申し上げにくいのですが、・・・・・」長い沈黙。
「おとといの晩お亡くなりになりました・・ご愁傷様です。結局最期まで会話もできず・・・
あのご遺体は警察の方で司法解剖に回されます。ご家族の方にもお伝え願えればと・・」
「はあ、・・いえ・あの私御家族とは面識がないもので・・・」
「あ?あ、そうでしたか。・・・では、そういう事ですので急ぎご報告をと・・・ではこれで。・・あ、あのこの電話どうしますか?」
「・・・(あ、勝手に契約したけど支払いが残る)あ、の、お手数ですが今からいう住所に着払いで送り返してもらえませんか?」
「わかりました。看護婦と替わりますのでご住所を・・・あ、もうひとつ。ご葬儀の日時が決まったらご家族からあなたにご連絡を・・・」
「・・・いえ、それは・・・ご辞退・・・申し上げます。お世話になりました」
住所を看護婦に伝えた後電話を切った。
いまさらあたしが両親の前に出て行って何になるの。
二人の関係を根掘り葉掘り聞かれるだろう、結婚を約束してたならまだしもふりちんは何も言ってくれてない。あたしが一人で結婚してお世話をって思い込んでただけだもの。
忘れることは出来ないが、忘れるしかないのよ、あたしには。
一週間ほどして宅配便で携帯が届いた。
抱き占めて泣いた。しかし見慣れぬ携帯では愛着がわいてこない。
ふと電源を入れてみた。
発信履歴にあたしの番号!!もしかしてふりちんが電話をくれたのでは?
あ、そうか病院の先生がかけてきた時のメモリーかぁ。
一瞬驚いた。ふりちんが死の前に・・バカな・・動けないのよ、彼は。
冷静に考えればわかる事じゃない。
なれない電話をあちこちいじってみてると写真のデータがあった。
見ると包帯に巻かれた痛々しい姿が写っていた。
誰が写したのだろう。
本人が写っているという事は看護婦か誰かが写したのか。
日にちは死よりもずっと早い。
するとICUから一般病棟に移された頃に後の記念にと撮ったのだろうか?
その姿は左手と右足は天井から吊るされ顔は包帯で覆われ閉じられた片目しか見えない。
ただ右手は心臓の上に乗っている。心臓を押さえるようにして。
ふりちんは「愛してるよ」と言うときに自分のハートを軽く押さえる癖があった。
いかにも心から愛してるという風に・・・
完
少し長くなりすぎました。明日からは別作品をアップしますので、引き続き宜しくお願いします。
はづきにはその最期の写真が「愛してるよ、はづき」と言いながらウインクしてるように想えてならなかった。