無題 | 一歩塾(愛知県岡崎市)・塾長のブログ

一歩塾(愛知県岡崎市)・塾長のブログ

愛知県岡崎市の進学塾「一歩塾」の塾長がひっそりと始めたブログです。

去る8月14日、当塾の塾生である久野晴也さんがご逝去されました。ご生前のお姿を偲び、心よりご冥福をお祈りいたします。

 

今回は彼についてのお話になります。当塾の現況や指導に関する内容ではありませんので、当ブログご訪問の目的と異なる場合は、恐れ入りますが他の記事に移動願います。

 

まず今回の急逝に関しては、ブログを続けている以上、何も触れないというわけにはいかないと考えていました。実際、この文章は数日かけ、今日までにほとんど作り上げていました。

 

ただ、ここまで更新が遅くなったのは、私の思いを述べるならば、まず最初に中2の塾生に対してすべきであろうと判断したからです(今日が彼が亡くなってから初めての中2の授業日でした)。

 

もちろん、塾生達に話したことをそのままブログに載せるわけではなく、その内容については塾生とその保護者様限りということになります。ですので、ここから先は彼との思い出についてお話しします。

 

彼が入塾したのは小5の4月でした。以降、中学コースに進むまではずっと1対1で授業をしていました。

 

彼を指導し始めてまず驚いたのはその落ち着き。一度席に着くと授業中、余計な動きを見せることが全くありません。最初から最後までしっかりと話を聞く姿勢を保つことができていました。正直、初めて塾に通う小5だとなかなかこうはいきません。

 

そして、彼の最大の長所は研ぎ澄まされた集中力です。そもそも当塾の授業は、あまり問題数を出さずに、良問をじっくり考えさせるという指導ですが、一旦問題を解き始めると、彼を包む空気が変わっていく感じさえしました。

 

その深き集中力をもってじっくりと思考を巡らす。私はそんな彼を邪魔しないよう、視界に入らない場所から、その後ろ姿を見つめていました。今でもその様子が瞼に浮かんできます。

 

その後、指導を続けていくうちに、彼が野球やスポーツに長じていることを知りました。いや、長じているというレベルではないですね。ドラゴンズジュニアに選抜されて、全国大会に参加しているのですから。なるほど、優れた選手というのは、身体能力もさることながら集中力や精神力も一級品なのだと妙に納得したものでした。

 

しかしその後、私は彼という男の本質を垣間見ることになります。中学に入る少し前ぐらいだったでしょうか、いつものように塾に来て真剣に取組む彼の姿を見て、私は思わず、

 

『何で勉強もそんなに一生懸命できるの?』

 

と聞いたのです。塾の先生という立場からしてみればあり得ない質問なのですが、恐らく、先生としてではなく、二人の息子を持つ父親として聞いてしまったんでしょうね。すると、彼は真剣な表情で、

 

『野球や運動だけが得意だって思われたくないんです。』

 

と言ったのです。驚きました。あの笑顔の下には強い負けん気とプライドがあったんですね。しかもそれは言葉だけではありませんでした。実際、中学に入りさらに野球クラブの練習が加速する中、限られた時間で学習を進め、この1学期期末テストでは、自己最高の結果を出したのですから。

 

このように本当に、本当に、尊敬に値する凄い奴だったのです。なのに、その彼がどうしてこんなに早く旅立っていったんでしょうか。なぜもうあの人懐っこい笑顔を見ることができないのでしょうか。私には分かりません。

 

3年半近く指導していたのですから思い出すことなんて山ほどあります。本当はもっと書くつもりでしたが、もうしんどくなってしまいました。だからこの話はここまでとします。いつにも増してとりとめの無い文章になってしまい申し訳ありませんでした。

 

【以下は中2生の保護者様へ】

今日がどのような授業になるのか全く想像もつきませんでしたが、皆とても落ち着いていました。それぞれ自分なりに気持ちに折り合いをつけようとしている、そんな感じでした。私は一介の塾講師であり、今回の件に関し、大したこともできないのですが、塾生達の思いや感情を共有できる立場にいることは確かです。今後、塾生達について何かしら対応できることもあるかもしれませんので、お気づきの点などあれば気兼ねなくご連絡ください。