「・・・これアクション映画ですよね。ひょっとして、このエレベーター、止まったりします?」
「ああ、よく分かるな、止まるよ

ビリーはこともなげに言う。

「俺たちが侵入したってことはもうバレてるからね。敵に止められる。で、天井を破って弾丸が飛んでくるんだ。・・・もうそろそろだと思うが・・・」
 その一言を言い終わらないうちに、轟音が響き天井から火の粉が降り注いだ。

流石に僕も驚いた。この状況は、ヘリから機銃掃射を食らった時以上に危険だ。何しろ銃弾は存在しなくても、火の粉は本物なのだから。狭い密室で、下手をすれば大火傷である。ビリーのほうを見ると、彼も大慌てで火の粉を避けている。銃弾が降ってくるのは分かってるくせに。まあ、実際の撮影では合成で済ましたのだろうから、本物のビリー・シーガルはこんな危ない目には遭っていないのだろう。それに映画の世界の住人である彼にとっては、弾丸も本物なのだ。
「とりあえず、そこでじっとしてるんだ」

火花のカーテンの向こう側から、ビリーが叫ぶ。

「もう少ししたら終わって、撃った奴らが天井の扉を開けて入ってくるから」
 僕は仕方なく壁にへばりついた。その言葉どおり、天井が開いて、機関銃を携えたまだ若い男が顔を出した。ビリーはすかさずそいつの首根っこを捕らえてエレベーター内に引きずり込み、肘打ち一撃で気絶させた。
「さ、今のうちに、このエレベーターから出るんだ。今の銃撃でワイヤーが傷ついて、もうすぐ落ちることになってるから」
 僕はまた腰を抜かした。いくら映画の登場人物じゃないといったって、ビルの高さは本物なのだ。落ちたらひとたまりもない。

もちろん役者は、安全な場所でこのシーンを撮って後で合成したのだろうが、画面に映っているのは合成後のビル内だ。結局僕が今いるのは、たぶん、実在する超高層ビルの内部なのだ。その証拠に、地面があんなに遠くに見える・・・ビデオの中で死んだら一体どうなるのだろう?福地さんも、簡単な仕事だなんて言っといて・・・後悔と恨みが頭の中に湧き上がったが、そんなことを考えている場合ではない。ビリーはもう天井の扉からエレベーターを脱出しようとしている。