2020年度 29本目の劇場鑑賞
リュック・ダルデンヌ とジャン=ピエール・ダルデンヌ兄弟が演出した「イゴールの約束」、「ロゼッタ」、「息子のまなざし」、「ある子供」、「少年と自転車」、等、子供を主人公にした社会派ドラマの最新作品。
コロナのために座席は市松だったが満員。人気の高さが窺われる。
これまでの<子供シリーズ>はどれも貧困、親からの虐待や無視、無教育など社会問題をテーマにした作品で主演の子供は本来良い子なのに劣悪な環境によって間違った方向に行ってしまう、とのプロットが多かった。
今回も環境によって、は同じだがテーマは宗教。
狂信的な宗教心が麻薬のように作用し、洗脳された者は後戻りできない、との作品になっているが小生はやはり教育の問題だと思う。
ごく普通の中学生だったアメッドはあるイスラム指導者によって感化され、どんどん厳格になり過激な思想に染まってゆく。しまいには学校の先生をイスラムの敵と見て殺害しようとしてしまう。
舞台はベルギーだがイスラム系コミュニティーの中のドラマになっている。アメッドも兄(名前を忘れてしまった)もイスラム系の名前だ。
ヨーロッパにはユダヤ系のコミュニティーも多くあるようだが中東とは地続きでアフリカとも近いからだろうかムスリムが多い。劇中の学校や少年院でも1日5回の礼拝を許すなど宗教には寛容だ。我々日本人からすると寛容過ぎると感じてしまう。日本ではどうなのか、聞いたことが無いな。
作品では主人公アメッドの母親も姉も西側の生活に馴染み宗教心は薄れている。コミュニティーの中の他の人々も概ねヨーロッパ人になろうとしているが違った考え方を持つ者も少数いて・・・・、・・・だったらお国へ帰ったら、と思うのは小生だけだろうか。勿論帰れない事情もあることは承知しているが。
ダルデンヌ兄弟の作品は無駄が無く、切れ味が良いのが特徴だ。
不必要な説明的なシーンやカットが無く、限界まで削り落とされている。
この作品を観ると他の作品(テレビドラマはもちろん)の多くがいかに丁寧過ぎるシーンやカットが多くあることに気が付くと思う。
ストーリーは意外性と必然だけで構成されて、弛みが無くリアリティが高い、ということだろうか。
最終的なストーリーの結末は・・・・。
性善説をとるか性悪説をとるか、観る人が判断しなければならないエンディングになっている。リアリティが高い作品なので事象としての行く末はある程度想像できてしまうが、アメッドの心の変化があったのか無かったのか。
評点・・・★★★★ 4
『青春の甘酸っぱいシーンもあり、場内で笑いも聞こえたが小生は<それは違う>と思った。母親の子供に対する無償の愛情には心が痛くなる。』
