(sheen 新作)

2019年度 51本目の劇場鑑賞

 
1956年、東西を分断する壁が建設される前の東ドイツの高校生たちが起こした実話に基づく青春、行動ドラマ。
 
ハンガリーの暴動(自国政権を打ち立てようとソ連軍に立ち向かった)で多くの市民が犠牲になったことを知り、教室でクラスメイト全員が2分間の黙祷を行う。これが社会主義国家への反逆とみなされ人民教育相から圧力をかけられる。

 
与えられた情報に不信感を抱き真実を探ろうとする若者たち、今の体制に満足してはいないが従うことを受け入れている大人たち。クラスメイトは自分の将来を考えるか、信念を貫くかで苦悶する。
 
作品にあるような出来事が頻繁に起こったことで壁が建設されたのだろうか。作中では情報の操作と遮断、個人情報を利用し仲間割れに誘導する尋問、社会主義なのに存在する労働者階級とエリート階級、民主主義はファシストが牛耳っていると信じ込ますプロパガンダ、と恐怖政治・警察国家の色を濃くしつつある時代を描いている。

 
脚本、キャスティングと人物設定、演出、演技が素晴らしく久しぶりにどっぷり作品に浸ることができた。すべての出演者のキャラクターと思想背景、種々のしがらみ等が良く描かれていて作品全体を肉付けしている。政治色が強いストーリーだが、家庭内での葛藤、親子愛、仲間意識、若者の恋愛もちりばめられドラマとして大いに満足できる作品になっている。
 
「社会主義だろうが資本主義だろうが人は何らかの体制に従属している」とのセリフがあった。
こちら側にもあちら側にも色々な意見を持った人がいる。あちら側を全否定する考えはこちら側の体制に誘導されているだけだ。「バイス」、「記者たち 衝撃と畏怖の真実」を観た後でこれを観るとどちら側も似たり寄ったりのように思える。日本でも多分・・・。
 
映像は寒々しい東ドイツを落ち着いたトーンで撮影され、カットバックとパンを混在させたカメラ割りは斬新。
 
この作品の唯一の弱点は強烈に記憶に残る映像(カット)が無いこと。
映画(活動写真)は絵の連続だ。


評点・・・★★★★☆ 4.5
 
邦題が長すぎで何かと似ていない?原題はドイツ語で「サイレント教室」


↓予告編