2020年度  16本目の劇場鑑賞


本年のアカデミー賞で視覚効果賞、撮影賞、録音賞の3部門でオスカーを取った話題の作品。


第一次世界大戦、イギリスの2人の下級兵士が将軍からの直々の命令で夜明けに突撃を予定している最前線部隊に突撃中止の伝令を運ぶ。

話し自体は本当にあった事のようだ。


この作品の<売り>は何といっても「脅威の全編ワンカット」との触れ込みだ。

「カメラを止めるな」とは違った手法による緊迫感のある素晴らしい作品だった。


たしかに一見切れ目が無く、主人公が気を失っていた時間(数分?)以外は全てリアルタイムのワンカット・ワンシーンに見える。

しかしながらよく考えると12時間以上での出来事が2時間で描かれている。

巧みな演出とデジタル映像技術によって複数のカットを上手く合成して繋げワンカットのように見せている。

カットのつなぎ部分の多くは木、柱、岩、壊れた戦車などによるシャッター(これらがカメラ前を横切り、ターゲットの被写体を一時隠してしまう)時だろう。また、塹壕内でのほんの一瞬暗闇になる時、爆破ですべてがぼやけてしまう一瞬、水中に一瞬潜ってしまう時でも<つなぎ>が行われていたと思う。マルチカメラによるブリットタイム(bullet-time)の手法も利用しているかもしれない。

シャッターはカットつなぎ部分以外でも多くあり、観客の目を欺く演出をしていたと思う。


これはドローンでの撮影かな、と思わせる映像も多くあったがエンドロールでDroneの表記がなかったので大型クレーンにTrinity防振装置を付けての撮影だったのかもしれない。

もちろんスタジオセットによるクロマキー合成映像も多くあったはずだ。


とにかく映像が素晴らしく、上記のつなぎ目が分かりづらい演出に加え、照明弾の落下と共に大きく動く濃い影、燃える街の炎の赤と夜が明け始めた空の青、川面に浮かぶ桜の花びら(この花びらはちょっと雑だった)、草原の緑と石灰だろうか白く見える塹壕等、美しい<絵>が圧倒的だ。

やっぱり映画は映像だ!(小生の感想)

ドラマ性が薄い作品でも2時間があっという間に過ぎてしまう作品はなかなか無い。


挿入されている曲も美しい。優雅で重厚な音楽は悲惨な映像を強調するかのようだ。

また、突撃前に一人の兵士が美しい声で歌う曲も素晴らしい。


死んでゆくブレイク上等兵(ディーン=チャールズ・チャップマン)の顔の赤みが段々なくなってゆくメイク(後処理?)。ちょっとしか登場しないコリン・ファース、ベネディクト・カンバーバッチ、マーク・ストロングも良かった。


評点・・・★★★★☆  4.5
『好き嫌いが分かれる作品かもしれない。細君は3と言っていた。』