2020年度  12本目の劇場鑑賞


イギリスの戦争博物館に保存されていた第一次世界大戦の記録映像や写真をデジタル化して編集・修復・修正・色付けし、音とナレーションを加えたドキュメンタリー。


「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソン監督による実験的とも言える作品。


フィルム映像、写真、ポスターなどにBBCが保有していた退役軍人たち(100人以上?)のインタビュー音源をコメント(実体験談)として流すだけの作品。

当時は同時録音などがなかったはずなので爆破音や銃声などは効果音として後から加えられている。

ドラマ性が全く無い作品だが観ているうちに段々悲しさ、虚しさ、諦め、等の感情が沸いてくる。


全体の流れとしては戦前、戦中、戦後になっているが、もちろん戦中(フランス内でのドイツ軍に対する最前線の映像)が一番長い。


不況で仕事が無い多くの若者が年齢を偽ってでも兵士に志願した(当時は19から35歳までの男子を募集していたが、その年齢に満たない者も多く志願し、軍もそれを知っていても受け入れていた)。


映像は泥んこの塹壕、着弾の爆発、死体、死体、怪我、死体、怪我、死体の山、板に並んで座って用をたす兵士のおしり、ネズミ、ダニ(ダニのアップは後付けの映像)、凍傷にかかった脚、等々衝撃的だ(R15+)。


映像はもちろんショッキングだが心に残るコメントも多い。

「ドイツのラグビー選手たちと食事会をしている時開戦の一報が入るが俺たちは明日からにしよう、と食事を続けた。」「捕虜に対しては脅威や敵意を抱かなかった。」「前線ではどっちが勝っているかなどどうでも良かった。」「我々もドイツ兵も皆これは無駄な戦争だと思った。」


疲労、飢え、恐怖の真っただ中の兵士たち。しかしながら彼らの表情は悲愴ではなく、ちょっとした合間には笑顔がある。


当時の戦争は武器が異なるが日本の戦国時代とさして違わない。広い戦場で数百メートルしか離れていない敵と向き合って撃ち合い、最後は突撃。敵も味方も生きて帰れる者は少ない。


不幸にも戦争映画を作り続けることができてしまう人類は懲りることを知らない。

観るべき映画の一本だ。


評点・・・★★★★ 4
『映像技術についていくらでも書くことができるが、そんなことはどうでも良いと思える作品だった。』