2020年度  7本目の劇場鑑賞


1996年のアトランタ・オリンピック開催中に起きた爆破テロ事件とFBIの捜査、また報道のありかたをクリント・イーストウッド監督が切る。


事件が起きた会場(音楽フェス)を警備していたリチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)は不審なバックパックをいち早く発見し、多くの人の命を救ったとして当初ヒーロー扱いされていたが・・・・・。


この映画は無差別テロや誤認捜査を非難するだけの単純なものではない。人間は本質的に常にスケープゴートを求めリンチを見たがる動物なのだろうか。


この作品は登場人物のキャラクターとその背景をしっかり描いているところが素晴らしい。


以前保安官補佐をしていたことがある主人公のリチャード・ジュエルは警官オタク。自分が容疑者として捜査されているのにまるで無防備。捜査陣に対して敵意も不信感も持たないで協力しようとする。

愛国者、法律順守、進んで正しい事をしようとする男だが、行き過ぎると独断的な正義感、または間違った正義感を持った奴と見られてしまう。簡単に言うと変わり者だった。間違った正義感は最近よく聞く言葉だ。


一方FBIの担当捜査官トム・ショウ(ジョン・ハム)も決して悪人ではなく、上からのプレッシャーから何が何でも早く犯人を検挙しなければならない立場に悩む木っ端役人だ。仕事後に一人バーで飲む気持ちもよくわかる。


また、地元紙の記者キャシー(オリビア・ワイルド)は特ダネが必要で情報を得るためなら手段を選ばず、真相などどうでもよい。CNNのお膝元で仕事への焦りという意味ではFBI捜査官と同様だ。


弁護士のワトソン(サム・ロックウェル)は本性が分からなかったが<いい奴>として描かれている。

とぼけた役が多いサム・ロックウェルのいつもと違った演技は良かった。喜劇役者が悲劇やシリアスな演技をすると深みがでる。つまり上手いということか。


もちろん母親役のキャシー・ベイツは完璧。彼女を見るといつも「ミザリー」の恐ろしさを思い出してしまうのは小生だけではないと思う。


マイナス点は爆発のシーン。回想も含めて何度かあったがCGと合成が最近のハリウッド映画としては雑だった。

予算が少なかったのだろうか。もったいないと思った。


評点・・・★★★☆ 3.5
『やっぱり肥満はいけません。リチャード・ジュエルはやはり若くして心臓疾患で死んだそうです。』